反逆の決意 Ⅱ (シャルル視点)
「くそ、くそが……! 私が雑用だと?」
信じられない言葉に、私の口からこらえきれないうめき声が漏れる。
「この私が雑用? あの神童にして、紅蓮の魔術師になる私が?」
こんなにも私は低姿勢で来てやっと言うのに、その末路がこの雑用の立場?
その事実が認められず、私は自分の頭を乱雑にかく。
痛みと、ふけが落ちる感覚はさらに私のいらだちを煽り。
そのいらだちはある人間へと向かった。
「そうだろう? なあ、私を裏切ってまんまと立場を得たアイラ」
「うっ!」
私に蹴られたアイラが、倒れたまま悲鳴を漏らす。
いつもなら、ここまでやれば怒りが収まる。
けれど今の私が抱く怒りは一切収まることはなかった。
「聞かせろ。どうして貴様なんだ?」
そう言いながら、うつろな目でこちらをみるアイラを私はにらむ。
どうして。
どうして、この無能が私よりも評価されている?
先天的な魅了という魔術さえ使いこなせないこの程度の女が、この私よりも評価されている現状が私には我慢ならなかった。
「さあ、早くいえ。今日の私は寛大ではないぞ。どういう手段を使ってマルシアに取り入った」
「あり、ません」
私の言葉に、ゆっくりとけれど確かにアイラは首を振る。
「私はただ、シャルル様がこの街にいれるようにお願いしただけです。私が魔術師になったのはその対価で……」
「嘘を、付くな!」
「嘘ではありません。私はただ、シャルル様に……」
「黙れ!」
私の魔術がアイラの腕を焼く。
人の肌が焼ける嫌な臭いと、アイラの甲高い悲鳴が私の脳髄を揺らす。
知っている。
アイラはここで嘘を付くような人間ではないと。
そんなことを考えないように徹底的に教育してきたのだから。
その上で、私はアイラの言葉を信じられなかった。
……アイラの言葉を信じれば、本当に私がいらないとマルシアが判断したことになるのだから。
「ふざけるな。そんなこと、絶対に!」
そうだ。
この神童たる私がアイラ程度の価値な訳がない。
だとしたら理由は何か。
私はどうして、こんな目に遭っている?
「そうか、マルシアのせいか」
全てを私が理解したのはそのときだった。
その瞬間、今まで謎だった全てがつながっていく。
「シャルル、様?」
足下で声がする。
しかし、それさえ私にはどうだってよかった。
よく考えれば、あの両親が私を見捨てる訳がない。
ずっと自慢の息子として生きてきたはずの私が必要ない訳ないのだ。
だとすれば、一体誰がこの事態の糸を引いている?
……それはマルシア以外考えられなかった。
「そうか、そんなことをする程に追いつめられていたのか」
そうだ。
マルシアは私のことを本気で愛していたのだろう。
それ故に、私がさったことを裏切りと思いこんでしまったのかもしれない。
その怒りから、マルシアは私のことを排除しようとしているのだろう。
その責任が私にないとは言わない。
けれど、それは決して許す訳にはいかなかった。
「悪いな、マルシア。だが、お前を許すわけにはいかない」
──なぜなら、私はこの街に必要な人間なのだから。
「だから、お前を殺そう」
倒れたアイラを放置し、私はゆっくりと歩き始める。
「シャルル様? シャルル様!」
背後、私の名前を呼ぶアイラの声さえ、私の意識には残っていなかった。




