謎の女性 Ⅹ
私の言葉に、カルタナは答えに窮したように黙る。
しかし、それを無視して私は告げる。
「貴方達のやったことは私の全て私の責任、これは以前言ったことがあるかしら? 私のやっていることはただそれだけよ。それに」
そこまで、告げて私は一度言葉に詰まる。
この先を告げていいのものかと。
しかし、相手がカルタナであるなら無用の心配かと私は続ける。
「……私はあくまで仮の責任者。いつかはここから去る人間だわ。私に対して恩を感じるんではなく、この屋敷に対して思いを抱いていてほしいの」
いずれ私はこの伯爵家を去る。
それは確定事項と言ってもいいことだった。
それ故に覚悟を決めて告げた私に対し、カルタナの顔が苦笑して告げる。
「まだ、この家を出て行かれるおつもり何ですか?」
「当たり前でしょう? こんな年増な婚約者をルクスに押しつける気なんて私にはないわよ」
そう良いながら、私は自嘲の笑みを浮かべながら、備え付けられた窓へと目をやる。
そこから街の光景は見えはしないが、私にはありありと自室から見える街の光景を想像することができた。
四年前、この家をルクスを守ると誓った気持ちを私は片時でさえ忘れたことはない。
しかし、その思いを達成できたと思える程私は慢心してはいなかった。
……情けないことに、この魔法の街という発展に私が尽力できたのはほんの僅かでしかないのだ。
「特にルクスには多大なる負担をかけてしまったわ。その上で自由を縛る程私は鬼畜ではないわ。時が来たら、婚約を解消するつもりよ」
この多忙な中、私が退くことは混乱を招くだろう。
けれど、落ち着きさえすれば私はこの場所からさるつもりだった。
「その上で、この街にいられたら理想だけど、混乱の元になるなら我がままを言うつもりもないわ。そんな時、私に恩を感じるんではなく、この家に恩を感じていてほしいの」
そういいながら私はカルタナの方に振り返り、そして眉をひそめることになった。
……その、何か言いたげな表情に。
「なにかしら?」
「いえ、私ごときが口を挟める問題ではないので。無事に伯爵家から逃げられるといいですね」
「だからなにがいいたいの?」
私はカルタナを一睨みするが、カルタナは素知らぬ顔でそっぽを向く。
しかし、すぐに少し真剣な表情で口を開いた。
「まあただ、それならマルシア様の狙いはもう途絶えたと思いますよ」
「……え?」
「マルシア様の思うより、優しさに飢えている人間は敏感なんですよ」
そう告げたカルタナの視線、それは先ほどアイラが去っていた方向を見つめていた。




