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邂逅  作者: 群青 ひら
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第15章 シルエット④

伯父は門亜の耳に口を近づけると、


「悪いようにはしない。信じろ。あと……お前は帰り、会議室に寄れ」


ぽん、と肩をたたくと伯父はかりんに向かって言った。


「さあ、行こうか」


これが本当の別れだ……。これでいいんだ。これで。


その時、かりんが門亜に向かって深々と頭を下げた。慌てて、門亜も頭を下げた。


伯父に。そして、別人として新しい人生を歩む、かりんに。


門亜が頭を上げたとき、廊下の先に消えていくところだった。


どうか元気で……!


今まで感じていたぬくもり。重み。


門亜の中にまだ残っているかのようだった。




会議室か……。門亜はノロノロと歩き出した。1回だけ振り返ったが、廊下には誰もいなかった。


ごしごし、と袖で涙をふくと門亜は歩みを早めた。


会議室の前に立った、その時だった。中から、どすの聞いた声が聞こえた。門亜のノックの音も聞こえないようだった。


門亜はドアを開けた。


すると、門亜の目の前にはさすまたを杖に立っている音環たち3人がいた。そして、その前には暴対の刑事3人が怒声を浴びせていた。


1人が門亜に気が付いた。


「お前か!市民を巻き込んだ挙句、県警本部の廊下にさすまたを持って立たせたのは!」


じろり、とにらみながら怒鳴り声を飛ばした。


「巻き込むならさすまたの使い方をきちんと指導しろ!見ろ!このへっぴり腰!」


刑事が指さした先をよく見ると、空河のさすまたを持ったすべっタローがようやくの思いで立っていた。


え?すべっタロー、写真撮影したって言っていなかった?門亜は何故すべっタローがさすまたを持っているのか、理解できなかった。


「制圧するならきちんと腰を入れろ!もう一回!」


やあ、とすべっタローは刑事に向かって行った。ところが、刑事はすべっタローのさすまたを押し返すと、すべっタローは簡単にひっくり返った。


尻もちをついたすべっタローはいてて、と腰をさすった。


「これで制圧できると思ってるのか!下手するとお前や仲間が死ぬんだぞ。制圧できないなら持つんじゃない!もう一度!」


すべっタローは立ち上がろうと少し腰を浮かしたが、すぐにぺたん、と座り込んでしまった。チッ、と刑事の舌打ちが聞こえた。


「ちっ!仕方ないな。じゃ、そこのオレンジ色のテープの!」


大河が駆け寄りさすまたを押し込んだ。


「少しはやり方を知っているようだが……本物はこんなんじゃねえよ!」


そう言うと、刑事は両手でさすまたの中央を握ると左に回した。大河の腕がねじれ、うっ、と言う声が漏れた。


「ほら、ねじれるだろう!これで相手が勢いをつけるとどうなる!」


そう言うと、刑事は持ったさすまたを大河に押し込んだ後引っ張った。さすまたは大河の手から簡単に外れた。


「相手に凶器を渡すことになる」


カラン。刑事は大河に向けてさすまたを放った。


次!と言う刑事に音環は


「俺は守りたいんですよ!!」


そう言うと持っていたさすまたを一気に押し込んだ。


その時だった。刑事はさすまたの輪から逃れると音環の足を引っかけ、けり上げた。


勢いがついていた音環は派手に転んだ。刑事は素早く音環に近寄ると、腕を後ろに回して床に押さえこんだ。


「あん?守るだ?甘っちょろいこと言ってるんじゃねえぞ。見ろ、お前が一番派手にひっくり返っているだろ。これで背中をナイフで刺されてみろ。あっという間にお陀仏だ」


刑事の低い声が響いた。


くっ。刑事の腕の下で音環のくぐもった声が聞こえた。


門亜は慌てて刑事に駆け寄った。


「すみません……全部ボクの責任です。罰するなら全部ボクに……!」


ほかの刑事の目線が門亜に集中した。呆れたような、軽蔑するような目線だった。


一番年上の刑事が冷ややかに言った。


「お前……こいつら、生きていたからいいようなものの。やつらが車で突っ込んできたらどうするつもりだったんだ?


なぜ、まず自分の命を守らせることから教えなかったんだ? 中途半端な正義感や友情で命が3つ、失われたらどうするんだ?」


そして大きく息を吸い込むと


「責任って言うけど、無事に終わってから言うもんじゃねえんだ!」


と怒声を放った。容赦ない言葉に門亜はうなだれた。


「……弘前での話は聞いた。あれは、相手が大事にしたくなくて動いたから良かったんだ。もし、複数人でいきなり乗り込んでみろ。こいつらはどうなってる?」


刑事は静かに、低い声で言った。


門亜の心はひどく冷えた。アパートを囲んでいた相手が一斉に襲ってきたら?音環もすべっタローもこの世の人ではなかっただろう。


血まみれになった2人の姿を想像して、門亜は震えた。そして、床に転がっている3人を見た。暴対の刑事1人相手にこの結果だ。


本当に運がよかったんだ。


「いいか。判断を誤るな。策に溺れるな。今回無事だったのは奇跡だ。奇跡なんて、現場では通用するもんじゃねえ」


「申し訳ありませんでした……」


門亜は再びうなだれた。


「お前もしごいてやるから、そのへっぴり腰からさすまたを受け取ってこい」


音環を解放すると刑事は門亜に言った。そして音環3人に振り向くと


「お前たちが乗ってきた車は証拠品として押収しておく。新しいナンバーが来るまで乗れないと思え!」


と言った。


門亜は刑事に深々と頭を下げると、すべっタローからさすまたを受け取った。


「お願いします」


そう言って門亜は構えた。


後ろに立っていた刑事が、代わりますよ、と言って門亜たちの前に立った。そして


「もう一度!そこの青いテープの奴から!」


と音環に向けて怒声を響かせた。


第15章 シルエットはこのエピソードで終わりです。

門亜とかりんが「哀」なら暴対の方々は「厳愛」だなと書きながら思いました。

次の章は、それぞれが旅立つ章です。

読んでくださりありがとうございます。


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