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邂逅  作者: 群青 ひら
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第15章 シルエット②

「左折で県警本部、入れる?」


近くで回り道をするけど、入れなくはない。門亜はスマホに向かって言った。


「入れるけど……どうして?」


「大河が、なんかおかしいって言ってる」


大河?大河がいるの?門亜は慌てた。


「大河が何で?」


「いや……すべっタローがケーキとピザを買っていたら、たまたま会ったんだって。今日みたいな日に有休取っていたんだ。勘が鋭いよねー」


さすが、SAKIOTTEのタイガー。と音環は続けた。


「一応、すべっタローは言わないでいたらしいんだけど、じゃあ、後をつけるかって言われて……それで話しちゃったらしい」


撒けばいいのに。あ、すべっタローの腕じゃだめか。


はぁ。門亜はため息をついた。オレオレ詐欺の時と言い、どうして事件を見ると飛び込むかな!あ。


「空河……空河はいないよね?」


門亜の声が上ずった。


「大丈夫。いない。空河は大河がいないとクーガーになれないから。あいつは根っからの平和主義だし、わざわざ大河も連れてこないよ」


門亜はほっとした。でもさ……大河も音環もすべっタローも一般市民なんだよ。分かってる?そこ!


「なんか、新しいさすまた買ったから、試したいって言ってた。俺、まだ古いまんまなんだよね。あまりにも自慢するから、今隣ですべっタローが密林で物色してる」


さすまた、の言葉に門亜はイラっとした。ホントに危ないんだから、本職に任してよ!


「多分、この前言ってた子の仇取りじゃないかな。意識戻ったし、後遺症もないらしいけど、あとひと月は経過観察だってね。止めたら暴走するから、放ってあるよ」


ああ……無事だったんだ。門亜はほっと胸をなでおろした。すると、かりんは言った。


「ホントに悪いことしちゃった……。キャストの子だったんだけど、仲良くしていたから……。私が別のお客の相手をしているときに、新しいフレーバーが出たよってあの男が勧めたのよ」


仲良くしなければ、あんなことにならなかったのに……ぽつり、とかりんはつぶやいた。


「それは違うよ」


門亜は言った。


「もちろん彼女は被害者だけど……薬物タバコを流通させるグループがこれだけ動いているんだ。狙われたら、防ぎようないよ」


門亜の前の車が停まった。見ると、10台くらい先で赤信号になっていた。門亜はかりんの方を向くと、


「かりん、あなたは誰も利用しなかった。暴力で従わされていた、とボクは思ってる。


何度ボクがあなたがたたかれるところを見たと思う?普通なら、離れるでしょ。あんなDV野郎」


かりんは涙を流しながらうなずいた。その時だった。


いつの間に来ていたのか、助手席のドアを青い車の男がたたいた。そして、ドアを開けようと、何度も引っ張った。その音を聞いたかりんの顔が引きつった。


門亜がクラクションを鳴らそうとした時、後ろから音環がクラクションを鳴らした。そして、助手席からすべっタローが顔を出すと


「やばいやつがいる!誰か110番して!」


と大声を出した。すると、途端に通行人がスマホを出して、男を撮影しだした。


シャッター音に気が付いた男は慌てて車に戻って行った。


「あれ……同居人の男……」


かりんは震えながら言った。門亜はジャージの上を脱ぐと震えるかりんにかけた。


「もう大丈夫だ。車に戻って行ったよ。あの時はよく顔が見えなかったけど、本当にすべっタローが言った通り、間抜け面だね」


本当に間抜け面だった、と門亜が言うと、かりんはぷっと噴き出した。そして、涙を流したまま笑い出した。


……少し落ち着いたかな。大丈夫そうだ。かりんの様子を見て、門亜はうなずいた。




「戻ってくる。すべっタロー、伏せて」


音環はスイッチを引くと窓を閉めた。男はすれ違いざま、音環の方を向いた。


「……すべっタローの言う通り、間抜け面だね。彼女1人で運転しているならいざ知らず、門亜が運転しているんだよ。誰が開けるかって」


音環はぶつぶつと悪口を言い続けた。


門亜の前の車が動き出した。ここからはしばらくノロノロ運転かな。もう、あんなことはないだろうけど。


「オレ、恥ずかしかったんだけどさ……まさか、みんなスマホ取り出すなんてね」


もう大丈夫だよ、と音環が声をかけると、すべっタローは眉をしかめて言った。


普通、110番って言ったら110番するんじゃないの?とぼやくすべっタローに


「ん-。最近は写真を撮るんだよ。証拠にね。でもさ、その証拠って俺たちが被害にあってからじゃないと役に立たないんだよね。


まあ、今回は写真を期待してすべっタローに騒いでもらったんだけどさ」


涼しい顔をして音環は言った。


青い車も捕まえてほしいな。うーん。どうしようかな。


「すべっタロー、後ろの車のナンバー、控えてある?伯父さんに連絡して欲しいんだけど。


多分、県警本部に入らないで近くをうろうろするだろうから、職質とかしてもらえると思うんだ」


相方の刑事さんとかさ、と音環は続けた。


「そう言えば、すべっタローはさすまた使ったことある?俺は、銀行の防犯訓練で使い方は知っているし、この前の竜飛でも一応使ったけど……。


丸腰で向かうのは危ないから、もし使ったことなければ車の中にいて。逃げていくやつの写真を撮ってほしい」


音環の言葉に、すべっタローはメッセージを送りながら「えー」と言った。


「オレもさすまた使ってみたいな。オレだけ安全地帯なんて、カッコ悪いじゃん」


……かっこ悪い、か。なに、俺が昔ぼやいたことを言っているんだよ!


読んでくださりありがとうございます。

第15章②です。

この章はいろいろな人の気持ちが交錯する章になっています。

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