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邂逅  作者: 群青 ひら
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第14章 残り香④

「伯父さんが警察署に着いた、っていうから、中に入ったんだけど、ワンボックスも一緒についてきたんだ。


ラッキーとばかしに、伯父さんにあおられて怖い!て騒いで職質をしてもらって……伯父さんが隠し持っていたリキッドをあたかも相手の車から見つけた風にして事情聴取」


……それ、いいの?門亜は素で思った。


「伯父さんにいいの?って聞いたら、相手が誤認だ、って騒いだら、押収したリキッドが多すぎて、服の隙間に入ってしまったのがたまたま落ちたようだ、と言い訳するって」


足止めできればいいだけだからさ、と音環のメッセージは続いた。


何だか、よく分からない呪物がボクを守っているかのようだ。門亜はため息をついた。


そして、そっとかりんの顔を見ると、かりんもキツネにつままれたような顔をしていた。


「音環さんて……何者?」


かりんはぼそっと言った。


「アパートの1階に隠れていた男、あれ私を監視していた男よ。同居の男が凄腕の殺し屋だ、って言ってたんだけど……」


かりんはそう言うと、思い出したのか身震いをした。




音環はメッセージを送ると、青い顔をしながらエンジンをかけた。隣に座ったすべっタローも心なしか青ざめていた。


リキッドが見つかった、と伯父さんが言った瞬間、毒を飲むなんてね。


俺も、一緒に何かを飲んだようだ。いや、今は集中しよう。かりんちゃんを無事に送り届けることに集中しないと。


音環は冷えたお茶を一気に飲み干すと、ハンドルを回した。


その時だった。命を絶った男を別の刑事に任せた伯父から連絡が入った。


「交番のパトカーの周りを怪しいのが2人囲んでいたから事情聴取しているが……あれもおまえたちか?何を仕掛けたんだ?」


だって、と読み上げるすべっタローに、ああ……と、音環は乾いた声を出した。


そして、


「多分、マグネットのGPSタグがパトカーに付いていると思います。僕の車から外してくれたので、それを『彼』が気を利かせてつけてくれたのでしょう」


そう言うと、すべっタローにメッセージとして送って、と頼んだ。


何人いたのか分からないけど、これで大分減ったな……。窓から見たときに見えたのはワンボックスが2台とコンパクトカーが1台。後はこの前の青いスポーツカーだ。


車だけで言ったら……ワンボックスと青のスポーツカー。パトカーを囲んだのがコンパクトカーじゃなければ残り3台だ。まだまだ、多すぎる。


「このあと、どうすればいい?だって」


すべっタローは言った。


そうだな……逮捕をしてもらわないといけないから、一緒に行動してはぐれると困る。


「ゴールで待ってて、って伝えてもらえる?ゴールのお掃除をお願いします、って」


あ、言い換えて言ってしまった。まあ、伯父さんならわかるだろ。


音環は、門亜から来た地図に合せるように、車を走らせた。


――その時、門亜は街中を抜け、国道につながる県道を走っていた。丁度、音環が地図で指さした、両側に田畑が広がる場所のほんの少し手前だった。


人気が少なくなってきたせいか、ワンボックスは徐々に車間を詰めてきだした。


……ぶつけて、足止めさせる気だろう。かりんをさらうだけならここでも十分だ。


門亜は、右側の道をちらり、と見た。そして、急ハンドルを切った。


軽トラはがたがたと言いながら、国道に抜ける農道へと入っていった。遅れて、ワンボックスもついてきた。


門亜は少し先にぎりぎり軽トラが通れるくらいの道が交差しているのを見た。


直前まで悟られたくないな……。


「しっかりつかまってて」


門亜はそう言うと、加速をした。そして、十字路に差し掛かるとき、一気にギアを落とした。


ぐいっとリアが滑った。


滑りだした途端、反対の方向にハンドルを向けた。そして、交差する道路に車体が向いた瞬間、ハンドルをまっすぐにした。


間髪入れずにアクセルを開けると、大きく唸り声をあげて、軽トラは十字路を駆け抜けていった。


畔、傷つけちゃったよな……。


ちらり、とルームミラーで後ろを見ると、ブレーキが間に合わなかったワンボックスが、そのまままっすぐに進んで行くのを見た。


恐らく戻ってくるはずだ。


門亜は次に現れた細いあぜ道を右に曲がり、再び右に折れた。そして、最初に走ってきた道にぶつかった時、右手のワンボックスの様子を見た。


ワンボックスは、戻ろうと切り返したときにあぜ道を踏み外したようだった。深いところで脱輪をしたらしく、もがいていた。


県道に戻ろう。


門亜は左に折れると、そのまま農道を進んだ。そして、県道にぶつかったところで、左右をゆっくり見た。


幸い、待ち伏せをしている車はなかった。門亜はほっとすると、そのまま県道にでて、国道方面へと向かった。


1台は撒いたが……しばらく先の山間部では気を引き締めなくてはいけない。この車じゃまるで無防備だ。


ハンドルを握る手に力が入った。


あと7キロ……。何事も起きませんように……。


読んでくださりありがとうございます。

第14章はこのエピソードで終わりです。

次の章も引き続き、逃走します。

よろしくお願いします。

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