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邂逅  作者: 群青 ひら
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第5章 経費請求④

かりんは生クリームとアイスの境の場所をスプーンですくった。


「はい。あーん」


そのスプーンを門亜の口元に持っていくと、まるで食べて、と言うような仕草をした。


ぱくり。門亜はうっかり反射的に口に入れてしまった。確かにとても美味しいけど……今の、何?


「ね、おいしいでしょう」


そう言うと、かりんは同じスプーンでクリームをすくって今度は自分の口に運んだ。そして、再びアイスをすくうとあーん、と言って門亜の口に運んだ。


……これ、間接キス、とか言うものでは!門亜は一瞬顔が赤くなり、そのあと青くなった。


門亜の脳裏に始末書がちらついた。そして、新聞記事が思い浮かんだ。きっと三面記事に小さく、捜査関係者の女性にセクハラ、とか書かれるんだ……。


3回目に口に運ばれた時、門亜は慌てて


「私のも少し食べる?」


と言ってお皿を持ち上げた。すると、かりんはキャー、ありがとう、と言って門亜のフォークを使ってサクッと切るとそのまま口に運んだ。


間接キス阻止作戦、失敗。むしろ悪化。


門亜は心の中でがっくりした。


お茶の後、2人はゲームセンターに行きプリクラを撮った。思いっきり顔を寄せてくるかりんに門亜はドキドキした。


近いって!門亜は自分の手がかりんに触れていないか気になって仕方なかった。うん。向こうから触れてくるのは不可抗力だ!!


「はい。今日の記念」


それでも、嬉しそうに渡してくるかりんに、門亜は何も言えなかった。


小一時間ほど、ウィンドウショッピングをしていると、かりんは「あ、仕事の時間だ」と言い出した。


外に出ると、通り雨が降った後だったのか日差しが強く差しこんでいた。門亜がそっと日傘をかりんに傾けると嬉しそうにかりんは抱きついた。


全て、裏目。門亜は再び泣きそうになった。どうしていいのか分からないまま歩いていると、店の前に着いた。


また、一緒にお茶しましょ。かりんはそう言うと、店の前で別れた。門亜はそのまま出勤することにした。


「モーアちゃん、ロリィタにしたの?とってもかわいい!」


でも、大変だったでしょ。と言う目線で和服ビジュの女性キャストが言った。門亜はこくん、とうなずいた。


「体型とか隠すのにフリルはいいんだけど、つける服のパーツが多くて……。私、和装にしたのはそう言う理由なの」


女性キャストの、あまりにも最もな理由に門亜は激しく首を振って同意した。


「それで、どうだった?彼女とのデート」


デート?お茶してプリクラをちょっと撮っただけですよ?


「うなずいていれば、会話が続いたでしょ」


そう言われて、門亜はさっきまでの会話を反芻した。……確かに。メニューを選ぶのとすべっタローをお兄ちゃん、と言ったあたりまでは声を出したけど、後はうなずいていたぞ!


「彼女ね、多分女の子が好きなのよね。この前まで別の女の子と腕を組んで歩いていたから」


そう言うと、はっとした顔をして女性キャストは黙った。


「行方不明になってその後出てきた子だろ。ほら、おしゃべりばかりしてないで掃除して」


男性キャストがフローリングワイパーを持ってやってきた。そして、門亜の姿を見ると一言


「お疲れさま」


と言った。




――アイマスクをしていれば、何でもSAKIOTTEのモアなんじゃないか?


門亜は自室のベッドの上でゴロゴロと転がりながら思い出していた。


カウンター越しにお客へカクテルを渡したけど、ロリィタもいいねって上機嫌に言われたぞ!


ぼふ。門亜はクッションに一撃を食らわせた。


そもそも、モアのビジュアルって何!あれはベースを弾くからモアでしょ!


ばたばた。うつぶせになるとまるでバタ足をするように足をばたつかせた。


あ、そうだ……報告……。


門亜はのろのろと起き上がるとスマホでかりんとお茶をしたことを伝えた。


こっちで通知音量操作できるといいのにな。そうしたら真夜中に送るメッセージ、すべて大爆音で伯父さんに届くのにな。


ふん。もう寝よう。


門亜は布団にもぐりこむとあっという間に眠ってしまった。


そして、翌朝。門亜はドアをノックする音で目を覚ました。


だれだ?そう思っていると、がちゃがちゃ、と鍵を開ける音がした。


門亜はベッドから飛び起きると、さっと身構えた。扉が開いた。


「おはよー。あ、門亜起きてた?」


ドアを開けて入ってきたのはすべっタローだった。門亜はほっとしたが、すべっタローが部屋の鍵を持っていることを不審に思った。


「何で鍵を持ってるの?」


低い声で門亜は言った。するとすべっタローは淡々と


「門亜の伯父さんがね、門亜はストレス溜めると3日意識を失ったように寝るから、返事が無かったら入っていいって言って鍵を渡してくれたんだ」


余計なことを!もし、ボクが拉致されていたら、すべっタローの身も危険になるんだぞ!


はぁ。門亜はベッドに崩れ落ちた。


「昨日、デートしたって言ったでしょ。だから、レシート貰って伯父さんに経費請求しようと思ってさ」


確かになぁ。ケーキ、おいしかったけど請求していいの?なんならかりんさんの分も請求してやれば良かったよ。


すべっタローは門亜から受け取ったレシートの金額をメモに書き写すと、封筒に入れた。


「何か留めるものない?」


そう言うすべっタローに門亜はバッグからプリクラを出して渡した。そして、ピン、ときた門亜はすべっタローに貸して、と言うと封筒を受け取った。


門亜はプリクラで封をすると、その下に「よろしくお願いします」と書いた。そして、少し考えた後、最後にハートマークを書いてピンクで塗りつぶした。


読んでくださりありがとうございます。

この章はこのエピソードで終了です。

次は閑話休題ですが、伯父さんの経費精算の章になります。

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