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第59話 万死一生!! 悪魔の光に身を委ねて

 

「前とはちょっと違うみたいだな……」

 《メルトリーパー》の様相を見た《ガーデル》は一気に走り出した。

「なら余計急がないとなぁ!」

 右腕の斧を振り下ろす。対する《メルトリーパー》は大きく右足を引き、

「せぃやぁ!!」

 一気に蹴り抜く。炎ではなく、蒼白い残光を走らせながら《ガーデル》の斧を迎え撃つ。その刃を跳ね返し、《ガーデル》の身体を宙へ打ち上げる。

「おいおいおいやべぇってこれは!?」

 身体を一回転させて着地。見れば斧の刃は大きく欠け、早くも崩れ始めている。

(力押しじゃ無理だ……攻撃は避けなきゃ……ったく、俺が一番出来ないことじゃんかよ!)

 斧を地面に這わせ、再び突進。地面を削りながら迫る《ガーデル》へ、今度は左足を大きく引く《メルトリーパー》。

(熱を1箇所に集めて、一気に……!)

 肉と骨が焼け落ちる様な激痛に耐え、斧の中心を狙って蹴りつけた。

 斧は粉々に砕け散る。しかしそのおかげで《ガーデル》は吹き飛ばされることはなく、

「身軽になったぁ!! サンキュー!!」

 大きく振りかぶった頭突きを放つ。《メルトリーパー》は避けず、否、避けられず、同じく頭突きで対抗。ぶつかり合った衝撃波が埃を巻き上げる。

「ぐぅ……!」

「こっちは俺の勝ちぃ!」

 揺らめいた《メルトリーパー》へ更に頭突きで追い打ちをかけようとする。

「まだ……!」

 が、《メルトリーパー》は《ガーデル》の角を両手で掴んで防御。燐光を放つ両手は、それだけで《ガーデル》へ深刻なダメージを刻みつけていく。

「うぉ、やべっ!」

「まだ、使いこなせる筈だ!!」

「げふっ!?」

 膝蹴りが《ガーデル》の顔面を突き刺す。灰色の霧が鮮血の様に舞い、両角がへし折れる。

「おま、調子に」

「グァァァ!!」

「のわぁぁぁ!?」

 反撃の暇すら与えず、《メルトリーパー》は口から蒼白い熱線を発射。《ガーデル》を焼きながら吹き飛ばした。


 正しく破壊の限りを尽くす、悪魔の力。一方的に《ガーデル》を蹂躙し、《メルトリーパー》の身体には傷一つ付いていない。


「はぁ、はぁ、はぁ……っ、ぅ!?」

 だが《メルトリーパー》は地に膝をつき、幾度となく身体を震わせる。その身に積まれたダメージは《ガーデル》とそう変わらない。

(この力にはきっと、まだ……!!)


「きっと、先が……!」

「ユナカくん!!」

 その時、灰簾が駆けつける。店からいなくなった2人を追ってきたのだ。

「またあの姿……早く戻さないと!」

「邪魔をするな!!」

 変身しようとする灰簾へザクロはヴィトロガンを向ける。

「本気なの……!?」

「頭の固い君の考えることだ。デーモンハートを破壊しようとしているんだろうが、させるわけにはいかない」

「このままじゃユナカくんが」

「何度も言わせるな!! 君も風の錬生術師も、薄っぺらい偽善でユナカの覚悟を無駄にしようとして!! 私とユナカの邪魔をするなら ──」

「ユナカくんのことを信じてるなら!!」


「どうしてそんな顔してるの……!?」

「え……?」


 灰簾に言われ、ようやくヴィトロガンに装填されたフラグメント・Vに映った自分の顔が目に入る。


 瞼は震え、酷く青ざめていた。



《クリティカルリアクション・オーバーリミット!!)



 空間へ走る音に、ザクロと灰簾の視線が導かれる。

「今なら、きっと……!!」

「待って!! 駄目!!」

 《メルトリーパー》は灰簾の言葉に耳を貸さない。それどころか今の《メルトリーパー》は誰の声も届かない。身体を支配するエネルギーの制御に全ての感覚を持って行かれ、目の前の敵以外を認識出来ないのだ。


「マジかよ……!!」

 《ガーデル》はフラつきながらも立ち上がり、防御の構えを取る。それは抵抗ではなく、諦念から取った行動。

(ま、あとはフローラがモルオンとセレスタに伝えてくれるでしょ……俺はここまでだな)


 《メルトリーパー》の右拳から、以前と同様に蒼白い炎が溢れ出す。しかしそれはやがて収束していき、空間を歪ませるエネルギーの塊へ変容していく。


《メルトリーパー!! アルケミックイレイザー!!!》


「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 歪みを握りつぶす様に拳を固め、《メルトリーパー》は《ガーデル》へ突貫した。




「そっか。刑事さんはそっち側に付くんだね」

「……」

 《ファントム》と《スピリット》が相対する。

「ほたるちゃんが第一だもんね。先輩がどうなったっていいってなるのは当然か」

「……僕はユナカさんを犠牲にする気なんかない」

 2つの銃口を向ける《スピリット》に対し、《ファントム》は戦闘態勢に入っていない。

「きっとあれを……デーモンハートを使いこなして、完成させる。僕は信じている」

「信じてる……ねぇ!!」

 《スピリット》はヴィトロガンとフラグメントマグナムの銃撃を浴びせる。

「都合よく先輩を利用する為の言い訳しちゃってさぁ!!」

 エネルギー弾の雨は《ファントム》の装甲に焼け跡を刻むが、それでも彼は微動だにしない。

 《ファントム》の間合いに入らないように距離を詰めるべく、《スピリット》は駆け出した。


 刹那、《ファントム》は読んでいたかの様に飛び出す。


(どういうつもり!?)

 変わらずエネルギー弾に身を晒しながら突進してくる《ファントム》に対し、一度踏み出してしまった《スピリット》は反応が遅れる。

 両手を掴み上げ、無理やり銃口を地へ向けさせる。

「君の言う通りだ。でも今、ソウリストゲートに一番近いのはユナカさんなんだ。そしてユナカさんも覚悟を決めた。だったら僕は」

「もう喋んなくていい! あんたもほたるちゃんを助ける為に先輩を犠牲にする方法を取ったんだ!!」


《クリティカル リアクション!!》


 《スピリット》はマフラーから風を起こし、フラグメントゲートを開閉。両足に竜巻を纏い、


「だったら私の敵だ!!」

《シルフィーネ!! アルケミックブレイク!!》


 《ファントム》の腹へ叩きつけた。弓形に身体が曲がる。


《クリティカル リアクション!!》


「っ!」

「僕はまだ翡翠ちゃんのこと、仲間だと思ってる」


 だが《ファントム》は手を離す事なく耐え、フラグメントゲートを開閉してみせる。


《ノーム!! アルケミックブレイク!!》


 掴んでいた《スピリット》の両手を払い、拳を鳩尾へ深く打ち込んだ。


「がっ、は……!?」

 身体の中の空気を全て追い出され、大きく揺らめく。倒れた直後に変身が解けた翡翠を見て、《ファントム》は背を向ける。


「でもユナカさんの邪魔をするなら……次は僕の敵だ」


「待……て……!!」

 追い縋る様に手を伸ばしたその時、少し離れた場所から蒼白い爆発が空を照らした。翡翠の頬を冷たい汗が流れる。

「先輩……まさか……!」

「……」

 同じく爆発を目にした《ファントム》は走り出す。その背に、迷いは無いように見えた。



続く

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