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珈琲と白飯

橋桁から川の中に鉄柵が降ろされていて、

今は真ん中の部分だけが引き上げられていた。

先導のモーターボートはすでにそこを

通り過ぎていて、次は「つぎはぎ丸」の番だ


すぐ目の前に迫ってきた橋の上には、

数人の白装束たちが居た。


その中の一人が、片腕を上げて拳を握っている


ヨッシーの隣では、ちんかわむけぞうが、

同じく片腕を上げて拳を握っていた



「もしかしてアレって、AKか?」



目敏く、橋の上の白装束が背負っている銃に

気付くヨッシー


1人がこちらに背を向けていて、

AK特有の形状がバッチリと見えるのだ


単なる鉄の筒が伸びているだけの

ステンもどきと違って、

特徴的なフラッシュハイダーに、

上に突き出たフロントサイトやらで複雑な銃口。

銃身の上の部分にあるガスシリンダーや、

ハンドガードの形状、バナナマガジンは

間違いなくAK、つまり、”カラシニコフ銃”だ


むけぞうが、手を上げて拳を握ったままの

姿勢で説明してきた



「橋の上の見張りは、人型だけでなく、

 侵入を試みる”人間”に対しても

 警戒しないといけないからね。

 

 そう、あれは『AK-74』のコピーだ」



ヨッシーは思った



(結局、アサルトライフルの量産にも

、成功しているのか....

 多分、サブマシンガンほど造りは

 簡単じゃないだろうから

 大量生産はできていないのだろうけど。


 リバーサイド同盟の底力は計り知れないな)



橋の下を通り過ぎると、そこは安全地帯だった


川の上流から下流に向けて吹く微風によって

人型の悪臭がだいぶ薄れていく


川の両岸はコンクリート製の低い土手で、

さらに奥にはいくつかの建物が川沿いに並び、

それらを繋ぐ壁が出来ている。

数百メートルほど前方に、二つ目の橋が見える


ちんかわむけぞうが言った



「さて、あの先に見える橋まで、ここは

 ”二重防壁”構造になっている。


 あの橋も、さっきのと同じように

 橋桁から鉄柵を吊り下げていて、

 さらに、両側の土手沿いに

 壁が出来ているのが分かるだろ?


 もしも、万が一、

 人型が川から侵入してきても

 対応できるようにしているんだね


 君達は、この二重防壁の中に船を

 止めてもらう。

 ほら、あそこの岸辺の窪んでいる部分に

 船着き場があるだろ?」

 


そして、「つぎはぎ丸」とモーターボートは

船着き場に接岸した


ズラリと周囲を囲む白装束たち


目の前は、川に沿って続く無機質な壁で、

未だにリバーサイド同盟の全貌は見えてこない


ここでヨッシー一行は、

橋の上の生存者グループと別れることになった。

もう二度と顔を見たくない連中と、

二人の子供たちは別々にされるようでヨッシーは

安心した


優しそうな中年女性が、

キララとトシ坊に話しかけている


その他の連中は、ロープで縛られたまま

白装束たちに連行されていった


ちんかわむけぞうが言った



「安心してくれ、あの子たちはここで

 手厚く保護されることになるだろう。

 今から病院に行って、健康状態を調べてから

 精神的なケアもされるだろう


 ...君たちについてだが、

 先ほども言った通り、我々は君らとの

 接触をずっと待ち望んでいたんだ。

 詳しい事情も聞きたいしね」



そして、むけぞうは、近くの建物のほうを

指さしたのだった。



//////////////////////////////////////////



そこは、かつてJAが入っていた4階建ての

建物だった。

川に面した場所は壁の一部となっているが、

中は白装束たちの詰め所として

使われているそうだ


ヨッシーと、ジジイと、リナと、リサと、スミレ


5人は、広い応接室のような場所に通され、

そして、甚く感動していた


ヨッシーは恐る恐る問うた



「あの...目の前に、珈琲と握り飯らしきものが

 見えるのですが...

 もしかして、それを僕達が食べても

 構わないのでしょうか?」



大きなテーブルの上に銀色の盆が載っていて、

そこにはカップに入った5人分の珈琲と

ズラリと並んだ握り飯があった


ちんかわむけぞうは、

少し離れた場所で佇んでいたが言った



「ん?ああ、もちろんだよ、まだ昼前だけど

 お腹が空いただろ?


 ちなみに、白飯は当然ながら、

 なんと珈琲もここで生産されたものなんだよ!


 というのも、なぜかこの市は

 全国有数のコーヒー好きの市だったらしくて、

 ゾンビパンデミックの数年前から

 有志がビニールハウスでコーヒーの木を

 育てていてさ。

 その栽培地は大洪水を生き延びて、

 我々も人型からの奪還に成功した


 だから、こうして君達に淹れたての珈琲を

 振舞えるってわけ」

 


そして、一息ついてからむけぞうは続けた 

 

 

「まあ、正直、こんなところで待たせて

 申し訳ないと思っている。

 でも、リバーサイド同盟の指導者が

 けっこう近くまで来ててね、

 ここで、君たちに会いたいって言ってるから

 しばらく待機してもらいたいんだ」



そして、むけぞうは棚の上に置いてある

ラジオの電源を入れた


流れてくるのは、リバーサイドラジオだ



「俺は、今から指導者を迎えに行ってくるから。

 君達は、しばらく仲間内で

 水入らずで過ごしたまえ」



むけぞうは、応接室から出て行った。

残されたのは、呆然と立ち尽くす5人と、

ラジオから流れてくる音楽


曲はもちろん、3年前より過去に

作られたもので、

著作権ガン無視で流されている


・・・・・・・・


・・・・・


5人は、一斉にテーブルを囲むソファーに座った



「信じられねえ、珈琲と白飯だぜ」



ヨッシーは興奮気味に言うと、

それぞれの香りを鼻いっぱいに吸い込んだ


スミレも興奮していた



「おにぎりは全部で20個あるから、

 1人4個だね!

 あ、ちゃんとミルクと砂糖もある!

 何なの、ここは天国なの?」



リナとリサも、ヨッシーと同じく

うっとりとした表情で香ばしい香りを

楽しんでいた


長身に禿頭、白い髭のジジイはソファーに

深々と身を沈め、目を閉じていた。

その左手は三本指のロボット義手だ



「ここの連中、サブマシンガンに、AKさえも

 生産しているな。

 あのサブマシンガンは、ちんかわ氏が

 東京からもたらしたものらしいが、

 AKなんてどこから手に入れたんだか...


 ま、俺達が思っていた以上に

 強力な連中だったな

 

 でも、その力を借りることが出来れば、

 あの海賊どもを倒せる。

 早速、この事実を島にも伝えたいが」



ジジイは、右手で懐をゴソゴソと探って

中に隠したタブレットPCに触れた


おにぎりを頬張りながら、ヨッシーが言った



「ジジイ、ここで通信はやばいんじゃねえの?

 この部屋、どこからか監視されてるかも

 しれねえし」



ジジイは思いとどまった


すると、リバーサイドラジオから、

恒例の”連続ドラマ”が流れてきた



「ま、ちんかわ氏の言葉に甘えて、

 今はリラックスするとしよう」



そして、ジジイは子供たちと違って珈琲に

ミルクと砂糖を入れずに

カップを口元に持っていき、

一通り香りを楽しんでから一口飲んだのだった




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