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危険人物

それは、人類という種の”自爆”だという

意見すらあった。

もしくは、自然界からの”追放”


生態系の中では、ほぼ全ての種がニッチを

獲得しているように見える


目に見えない微生物は分解者として、

または、南極海のオキアミは

海洋の食物連鎖の土台として、

ライオンは中型以上の動物の捕食者として、

生態系の中で役割を得ることで存在している


人類だけが、唯一、

それら”有機物循環サイクル”から

抜け出せる可能性を与えられていた。

つまり『神から選ばれた特別な存在』だと、

かつての我々はそう思い込んでいたのだ



「まるで、神から見捨てられたような気分だ」



ヨッシーは率直な意見を述べた


目の前の光景は凄まじかった。

川を挟んで延々と続く壁に、無限とも

思える人型が群がっているように見える。


この辺りは郊外なので建物もポツポツとしか

ないのだが、

それらを繋ぐように壁が出来ていた


「つぎはぎ丸」の

船首の先端部分に立つヨッシーが言った



「ここで生き残った人たちが、

 どんなに頑張ってきたかのが一目で分かるな。

 3年前の大洪水で人型が流されて、

 また集結してくるまでの短い間に、

 必死でこの壁を作ったのだろうな」



隣で言葉を失っていたスミレが答えた



「そうだね...これを見ると、

 ここの人たちがダムを壊して

 大洪水を引き起こしたのも

 正直、仕方が無いことのように思えるよ。

 あの時は、他に生き延びる方法が

 無かったんだと思う」



すると、ふいに背後から

”ちんかわむけぞう”が来た


彼の気配に気が付いたスミレが

そそくさと下がり、むけぞうと入れ替わる


ヨッシーの隣に来たむけぞうが言った



「今は船のエンジン音で分からないけども、

 人型の群れの近くに来るとね、

 無数のガサゴソって音が重なり合って

 まるで波のような音が聞こえるんだ


 それはそうと、この悪臭、平気かい?」



ヨッシーは隣のむけぞうを見上げて言った



「私たちの島は、常に大量のイワシを干して

 肥料を作っているので悪臭には慣れてます。

 

 ....それにしても、ふと思ったんですが、

 あなた方は銃の量産に成功していますよね?

 

 例えば、銃を持った100人の方が

 頑張って毎日、100体の人型を倒せば

 100×100で、1日に1万体は

 始末できますよね。

 1年も経てば、300万体以上の人型を

 駆除できるでしょう


 そうやって、少しずつでも減らしていけば

 その内に、この周辺から人型は

 一掃されるのでは?」



しかし、むけぞうは言った



「理論的にはそうだろうね....でも、

 俺達が持っているこのサブマシンガンは

 さっきも言った通り、射程が短いんだ。

 

 弱い拳銃弾を使用するからね。

 だからこそ、強力なライフル弾を使用する

 銃に比べて大量生産がしやすい。

 各部を強固に作る必要がないからだ


 だから、この銃で壁の上から撃つにしても

 近くの人型しか処理できないし、

 やがて残った大量の死骸が腐敗して、

 何らかの衛生的な問題を引き起こすかも

 しれない


 それに、動き続ける人型の頭部だけを

 狙撃するのってかなり難しいんだよ。

 大量の弾薬が必要になるんだ」



船が橋のほうへと近づくにつれ、川の対岸に

人型が集結してきた。

未だ、水の中に入ろうとはしないが、

ヨッシーは恐怖で身をすくませた


すると、なぜか、ちんかわむけぞうは

ヨッシーの肩に手を回した



「ま、俺達もそこまで余裕はないってことさ。

 だからこそ、人型を駆除するのなら

 ”意味のある駆除”をしたいんだ


 変な言葉だと思うだろ?

 

 でも、人型を駆除することで、俺達にも

 確実にリターンが入る方法を取りたいんだよ

 

 それが、いわゆる”セル作戦”ってやつさ」



むけぞうに肩を抱かれていることで、

二人の距離が縮まっている。

ヨッシーが見上げたむけぞうの顔は

さっきよりも近かった



「あ、むけぞうさんが、

 東京に居た頃にやっていた作戦ですよね!

 まずは壁を作り、それを伸ばしていって

 土地を囲い込む。

 その後、そこに残った人型を

 せん滅するっていう....


 そうすることで、人型を駆除した後に

 確実に使える土地が手に入る」



「ああ、俺達はセル作戦を行うことで、

 少しづつ、リバーサイド同盟の土地を

 拡張していっている。

 ただ、東京では下級国民たちを

 使い捨てのように酷使することで

 それを行って、結局、反乱が起きてしまった


 ここでは、セル作戦は慎重に準備をして

 最大限に安全を重視して行われるんだ」



背後から二人を眺める少女たちにとって

その光景は奇妙なものだった


対岸のおぞましい人型の群れをバックに、

奇妙な雰囲気の男二人がボソボソと何やら

語り合っているように見えるのだ



「仲が大変よろしおすな...」



キララが呟いている


すると、リナが相槌を打った



「うん、確かにちんかわ氏は、フランクで

 優しそうで、話しやすそうな人なんだけど


 ほら、背中に銃を背負ってるし、腰にも

 ピストルとナイフを挿してて...


 キララちゃんの話によれば、沢山の

 人型を倒した強者だってことだけど...


 ええっと、なんというか、女の勘ってやつ?

 それとは別の危険な感じというか...

 うまくは言えないんだけど」



リサが言った



「お姉ちゃんの言ってることは、なんとなく

 分かるよ。

 でも、ヨッシーだって昨夜、お姉ちゃんに

 オイタしそうになった危険な奴だし

 

 二人とも危険人物っぽいから

 別にいいんじゃない」



キララが言った



「え?あの少年、リナねぇにオイタしそうに

 なったん?

 ちょっと、詳しく聞かせてくれませんやろか」



出会って間もないのに

早速、ガールズトークに華を咲かせる

キララと双子姉妹を見て、

スミレは小さく微笑んでいたのだった




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