車内にて
推定60代半ばの女性が、私の斜め前の座席に座っておられる。昨夜21時半頃、地下鉄南武線車内、溜池山王辺りの風景である。
赤坂でライブして、ベース担いで乗車し、ちょうど良さげな座席の空きスペースがあったので、よっこらせと座って、ほっと一息ついた私。ふと前を見たらその光景が目に飛び込んできた。
推定60代半ばの女性は、がっくりと頭をうなだれ、睡魔と闘っているようだった。いや、もう睡魔にノックアウトされてるやもしれん。時折薄目をあけるも直ぐに目を閉じてしまう。シャネル系のフレームの大きなメガネをかけ、ウェーブのかかった長い髪により顔は大分隠れているが、睡魔に襲われているその表情は手に取るようにわかる。どこぞのパーティーか何かに参加してきたのかな?小洒落たセーターに、しっかり折り目の入った白いボトムス、ちょっと踵のある黒ブーツを召されている。だが、右に身体をぐんにゃりと曲げ、組まれてる予定の足は妙に前に投げ出され、これは間違いなく酔っ払いだと誰しもがわかる絵である。バッグは微妙なバランスを保って膝の上に乗っているし。。
「ゴトンッ!」
彼女の手に握られていたと思われるスマホが床に落ちた。
すると、隣に座っていた見ず知らずの女性がそれを拾い上げ、その女性に「落ちましたよ」と今一度手に握らせた。今一度握らせる、というのもどうかと思うが、それにしても親切な方だ。
意識を失いかけていた60代半ばは薄目を開けて、口パクで「ありがとう」のようなことを言っていた、が、直ぐに夢の中へ没入してしまう。。
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時間とともに身体のひん曲がり具合はいよいよ佳境に入ってきた。
「ドサッ!ゴロゴロ。。」
とうとうバッグが落ちて転がった。
スマホを拾い上げた女性は降車してしまってる。私の出番か。。と思ってたら、対面に座っていたこれまた見ず知らずの女性が、そのバッグを拾ったかと思ったら、爆睡60代の横にひょいっと放り投げた。
横の席が空いてるからって、放り投げるのも中々の荒っぽい親切だ。もはや60代はそういう親切があった事にも気がついていない。
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私は目的の駅に到着したので降りましたが、こりゃこの人、終点まで行くこと決定だな、と思いつつ、この時点で窃盗がおきてないどころか、(どういう形であれ)親切が働いているこの国の民度が良いなと思いましたとさ。




