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ハッピー・カニバリズム・スローライフ~因習村育ちの社畜、人肉料理を振る舞ったら女子大生に世界を壊すほど愛された~  作者: アカアオ
1章 はぐれ者、二人

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9/28

不安と共に歩む旅

 「健二さん。次の駅で降りましょう」


 百玉村を探す旅が始まって2日がたった。

 コンビニなんかで飯を食い、ミミミさんの勘に従って色んな乗り物を使ってここまで来た。


 今は夕暮れ。

 俺は落ち着かない気持ちで電車に揺られている。


 そう言えば、見知らぬおっさんに声を掛けられたような気がする。

 今日だけで乗り換えも何度かした気がする。

 ミミミさんが漫画を見開いて何かを熱く語っていたような気がする。


 この数時間で起きた全てがぼんやりと頭の中に入っていった。

 気が気じゃない。


 「切符そんな所に置いてると忘れちゃいますよ?降りるまで私が預かっておきますね」


 ミミミさんの勘の事を疑っている訳じゃない。

 むしろ、信じているからこそ一緒に旅をしている。


 それでも不安なんだ。

 もし、百玉村が見つからなかったらって。


 仮に見つかったとしてー


 ######。

 ######。

 ######。


 また俺にとって嫌な記憶を思い出すかもって。

 

 もし、この旅で得られるものが何も無かったら。

 旅が終わってあの町に帰った時に何も変わらなかったら。


 きっと俺は今度こそ俺でなくなってしまう。


 「健二さん。この駅ですよ」

 「え?」


 つんつんと肩を叩かれた。

 振り返って見れば、そこには電車から降りる準備をしているミミミさんの姿があった。


 「悪いな」

 「いえいえいえ。健二さんが気にすることないですよ」


 人の気配なんて全く感じない無人駅に降りる。 

 名前も知らないさびれた駅。

 

 「今日はここで一晩過ごしましょう。何となく、その方が良い気がします」

 「ここからは少し歩くか?」

 「はい。辺りが暗くなるまでフラッと歩く感じです」


 ガラガラとキャリーケースの音が鳴る。

 会話は無かった。


 ふとミミミさんを見れば、ナイフのような小物を手のひらの上でくるくると回して暇を潰しているようだ。


 きっと俺に気を使ってくれているのだろう。


 「あ、ももももしかして目障りでした?」

 「いや、そんなことは無い。珍しいナイフだと思って」

 「あぁなるほど……健二さんってバタフライナイフ見るの初めてなんですね」


 ミミミさん曰く、折り畳み式のナイフなんだそうな。

 カシャカシャと開閉を繰り返す動きは見ていて気持ちいいものがあった。


 「結構練習したんだな、それ」

 「い、いや……中二病重症患者だった名残で……学校でも練習してたら噂を立てられたりとか」

 「ミミミさん?」

 「え、えぇっと。黒歴史なのでそこらへんのエピソードは堀り返さないでもらえるとぉ」


 赤面してうつむいてしまった。

 外の世界ではそんなに恥ずかしいものなのか。

 俺にはよくわからんが……ミミミさんがそう言うならこれ以上聞く必要もないな。


 「あのぉ……それに踏まえて一つ、健二さんにお願いしたい事があって」

 「なんだ?」

 「健二さんが今、メンタル的に不調なのは分かってるんです……でも……ど~しても健二さんの料理が食べたくて!!」


 ここで言う料理は人肉料理の事だろう。

 確かに、旅に出てからは普通の料理しか食べていないな。


 「俺は別に構わない」

 「ほ、本当ですか??でも、体調とかは」

 「どんな時でも料理のパフォーマンスは落とさない。捌キノ家の家訓としてきつく言い聞かされていたからな」


 もっとも、あの時聞いた言葉は現代日本の言葉遣いとは違う百玉村の言葉だったはずだがな。

 

 オヤジ、母さん。

 ごめんな。

 

 二人から聞いた言葉もちゃんと思い出せないみたいだ。

 外の世界の言葉で汚してしまって……本当にごめん。


 「でも、場所はどうする?他人に見られない厨房が使えるホテルなんてそうあるものじゃないと思うが」

 「それについては大丈夫です!!」


 ミミミさんは能天気にそう答えた。

 クルクルクルと、バタフライナイフを回す速度が上がっていく。

 

 気づけば辺りは暗くなっていた。

 俺達は車が通れそうな道から外れ、裏路地に入る。


 明かりでもつけるか。

 確か懐中電灯が……あったあった。


 「わっ。なんだよ眩しいなぁ!!」


 道を照らすと、怒鳴り声が聞こえた。

 暗くて気づかなかったが、人がいたのか。


 「チッ、リア充かよ。どいつもこいつも馬鹿にしやがって」


 怒ってはいるんだろうが覇気のない声だ。

 目もうつろだし……大丈夫だろうか?

 

 「クソ……俺の人生、どうしてこんな事に」


 まぁ、一人でぶつぶつ言っているみたいだし、ほっておくか。

 変に絡んでトラブルを起こすのもー


 「今日はあの人の家に泊らせてもらいましょう」


 「え?」



 俺がミミミさんの言葉を飲み込む前に、シュっと音が鳴った。

 少しして、その音がミミミさんがナイフを投げた音だと気づいた。


 「は?」


 余りにも自然な動きすぎて、俺は何の違和感も感じられなかった。


 「なんとなくですけど、あの人は一人暮らしをしている気がします。だったらいっそ、あの人の家に泊めさせてもらえば良いと思いませんか?」


 ミミミさんの言葉に目の前の男は返答を返さなかった。

 代わりに聞こえたのは、バタンと男が倒れる音。



 目の前を歩いていた男性は死体になっていた。


 

 死体の表情は怒りに満ちていた。

 きっと、彼はナイフの痛みを感じる前に……死んだと自覚すら出来ずに死んだのだろう。

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