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ハッピー・カニバリズム・スローライフ~因習村育ちの社畜、人肉料理を振る舞ったら女子大生に世界を壊すほど愛された~  作者: アカアオ
1章 はぐれ者、二人

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8/28

旅行前 準備

 「健二くん、体調大丈夫?」

 「はい。今は少し落ち着いています」

 

 翌日、俺は出社した。

 もちろん、仕事をやりに来た訳じゃない。

 百玉村を探すための準備に来たんだ。


 「にしても、有休を全部使いたいって言われた時はびっくりしたよ」

 「急に無茶言ってすみません」

 「良いの良いの。別に忙しい時期じゃないからさ」


 今の精神状態では普通に喋るのも苦痛だ。

 なにせ自分の声を聞くだけで記憶を消されている事実がちらついてくる。


 『健二さん。一つだけ無茶なお願いをします。明日、会社に行って長期間のお休みを貰ってください』


 警察が俺の記憶消去に関わっている以上は下手な動きをするべきじゃない……と、昨日ミミミさんが熱弁していた。

 行方不明や誘拐とかと勘違いでもされたら、あの酒呑角(しゅてんかく)トバリを筆頭に厄介な邪魔が入る可能性が高いと言う事らしい。


 「いや~でもあらためて凄い日数だね。何かやる事でもあるの?」


 『い、一応なんですけど、会社で聞かれそうな質問をリストにしておくのでしんどくなったらカンペとして使ってください』


 「実は今、東洋剣ドライブにハマっていて」

 「ん?とうよう……なに??」

 「アニメの1期、2期、3期を見た後、スマホゲーのストーリーを見るのに使う予定です」


 ミミミさん……これ大丈夫なのか?

 上司、滅茶苦茶困惑してるんだけど。


 『健二さん、トウドラは沼ですよ……という冗談は置いておくとして、オタク的な理由なら会社の人はきっと突っかかってきませんよ』


 そう言ってはいたが……果たして。


 「最近流行りの推し活っていうやつか。いや~僕が20ぐらいの時は外に遊びに行ったものだけど……時代は変わったね」


 なるほど、世代的な問題だったのか。

 何はともあれ、問題なく話が進みそうで良かっー


 「嘘?!東洋剣ドライブ……東洋ドライブってトウドラの事だよね……けー君が?!」


 ガシャン!!と物音が響く。

 視線を動かすと、そこには椅子をひっくり返して倒れている波内の姿があった。


 「波内?何やってんだ」

 「波内君、大丈夫かい?」


 俺と上司はそう声を掛けているのだが。


 「いつの間に……だってけー君はどっちかって言うと百玉村に囚われてて……もしかして、ちゃんと現代社会に順応してくれたの?」


 全然気づいていないな、コレ。

 ぶつぶつと何かつぶやいているが……何言ってるか聞き取れないし。


 「ん、んん!!捌キノさんが腐男子だったのが意外で少し驚いただけです」

 「ふだんし?」


 何その言葉。

 知らないし、ミミミさんのカンペにも書かれてないんだけど。


 「というか本当に?にわかには信じられません」

 「別に突っかかってくる事ないだろ」

 「私に!!とっては!!大事な事なの!!」


 やけにでかい声で反論してくるなぁ。

 

 そう言えば……波内も俺と同じように百玉村の記憶が消されている可能性って十分にあるよな。

 百玉様への信仰が『東洋剣ドライブ』ってものにとって代わっているのか?。


 この様子を見るに全然ありえる話ではあるな。

 由々しき事態だが……今は自分の事で精一杯だ。

 いったん考えないようにしよう。


 「本当にトウドラにハマっているなら推しカプぐらい言えるんでしょうね」


 カンペに書いてない質問じゃねーか。

 どうする……推しカプ……そう言えばミミミさんがなんか語ってたな。

 確かあれはー


 「クリス・パモール×ウルミが至高」


 そんな事を言ってたような気がする。


 「なるほど……捌キノさんがトウドラにハマっている事はよく理解出来たわ。でも、一つだけ言わせて」

 「なんだよ」

 「そこは!!ウルミ×クリス・パモールでしょうが!!!!!」


 えぇ……怒られた。

 なんでだよ。




 「ただいま」

 「健二さん、お帰りなさい」


 今日はミミミさんの家に泊る事になっていた。

 エプロン姿の彼女がいそいそと夕飯を用意している姿が目に映る。


 「一応今日はおかゆを食べましょう。明日からは長旅ですし、健康は第一です」

 「何から何まで、悪いな」

 「気にしないでください」


 スーツを脱ぎ捨て、テーブルに座る。

 

 「それではいただきます」

 「は、はい。いただきます」


 おかゆは少し塩辛かったが、食べられない事はない。

 ミミミさんの気遣いだけで満たされた気分だった。


 「後ろのキャリーケースは今日買って来たのか?」

 「はい。健二さんは旅行用の荷物とか持ってないと思ったので中身も一緒に買ってますよ」

 「それなりにしたろ。お金はどうしたんだ」


 そう聞くと、ミミミさんは鼻を鳴らした。

 自信ありげに見せつけて来たのはスマホの画面。


 「フフフ……これですよ、これ」


 スワイプして色んな写真を見せてくれてはいる……いるんだが。

 これ、何の写真だ??

 『777』の数字とミミミさんが好きなアニメ?のキャラクターが映っているのは分かるが。


 「私が本気をだせば1000円でラッキートリガーを引き当てる事もGOGOランプを光らせまくる事も可能なんです!!」


 「ラッキー……何?」


 「え?」


 俺の返答が予想外だったのか、ミミミさんは固まってしまった。

 そしてプルプルと腕を振るわせながらその顔が青ざめていく。


 「も、もしかしてパチンコとかスロットとか、知らないですか?」

 

 「あぁ。まるっきし分からない」


 「そんなぁ……せっかく私の力の凄さを感じやすいのに……無念」


 どうも、ミミミさん曰くギャンブルの事なんだそうな。

 ギャンブルをするにも機会と画面ねぇ……本当に外の世界はこういうの好きだな。


 「そう言うわけで、資金は問題なしです。なのでゆっくりと時間とリソースをかけて百玉村を探しに行きましょう!!」


 「あぁ。頼りにさせてもらう」


 空になった食器を二人で片づける。

 パッと布団を敷いて、夜の10時には部屋の照明を消した。


 「それでは健二さん。良い夢を」

 「あぁ。明日からよろしく頼む、ミミミさん」

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