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ハッピー・カニバリズム・スローライフ~因習村育ちの社畜、人肉料理を振る舞ったら女子大生に世界を壊すほど愛された~  作者: アカアオ
1章 はぐれ者、二人

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日常が前進する

 「健二くんさぁ。最近何か良い事あった?」


 初めて上司のダルがらみを受けた。

 今までに見た事のない、やけに楽しそうな顔で声を掛けて来る。


 「いや~顔つきがさぁ変わったよね!!前まではまるで生気が無かったけど、今は何というかこう……目的を見つけて走り出した的な?」


 あながち間違ってはいない。

 百玉様の為に出来ることが見つかったのだ。


 『良かったらまた、私の為に人を料理してくれませんか?』


 古島ミミミ。

 人食いの女子大生。

 とても都合の良い余所者と出会えた。


 彼女のおかげで俺はまた人肉料理を作る機会を得られたのだ。

 村や百玉様の為に出来る事が見つかったのだ。


 余所者であるミミミを通して百玉様に食人料理を届けないといけない事。

 彼女とのつながりの為、使いたくもないスマートフォンを使った事。


 このように心に引っかかっている事はいくつかあるが……これは妥協点だ。

 飲み込んで受け入れなくては現代社会という牢獄からは抜け出せない。


 「スマホさ、前は未読無視とかすごく多かったけど……今はちょこちょこ画面見てるよな。やっぱ何かあったんだろう?」


 「特にないですよ」

  

 「え~本当に?」


 この人、地味に俺の事よく見てるんだな。

 まぁなんだ、会社で浮いている俺にも話しかけて来れるあたり悪い人じゃない。


 上司だって生まれが現代日本ではなく、百玉村であればもっといい人生を送れたはずだ。

 世間体やハラスメント、昇進なんかに囚われずに済む。


 皆に良くしてくれる気の良い村男として過ごして、最後には百玉様に食べられて。

 良き輪廻の循環に加われたはずだ。


 「波内さんもそう思うよね?」


 上司はこの話をよりにもよって波内に振った。

 

 楽しそうな上司の声色とは似ても似つかない、冷めきった声で波内は答える。


 「さぁ、知らないですよそんな事」

 「え、えぇ……そう?」

 「大体、捌キノさんはさっさと社会に適応するべきなんですよ。スマホを見ないのも、いつも死んだ顔をしているのも、過去に固執しているのが原因なんですから」


 波内だって、俺と同じ村の出身だ。

 その心の内には故郷を思う心があると思っていた。


 でも、彼女は変わってしまった。

 村の誇りを忘れ、現代日本の住人になってしまった。


 環境が波内を変えてしまったのか。

 それとも、俺が知らない洗脳装置なんかが現代日本にあってそれが原因で根本的に変わってしまったのか。


 俺にはもう分からない。


 「もう私達、子供じゃないの。いつまでも昔の価値観のままじゃいられないのよ」


 そっと、俺だけに聞こえるような声で波内が釘を刺す。

 あぁ、嫌でも自覚するよ。


 俺は今、孤独だ。




 結局、今日は半日有給を取った。

 波内の言葉がだいぶ響いてしまった。


 メンタルの問題でダウンしてしまうとは捌キノ家の長男として情けない。

 父さんがここに居れば頭の一つや二つ殴られていただろう。


 とはいえ、しんどいものだ。

 孤独というものは。


 「あ、健二さ~ん」


 ふと声がする。

 振り返ると、そこには昨日出会った古島ミミミが立っていた。


 「え、えっと……何となく、健二さんがここに居るような気がして」

 「まさかアンタ、その勘だけでここまで歩いてきたのか?!」

 「はい!!あ、あの間違っていたらすみません……お仕事も終わっていたりしませんか?」


 超人的な力を得るために人食いをしているとは聞いていた。

 人を食べてから異常に勘が良くなっているとも聞いていた。


 だが……えぇ……マジで?


 もう勘が良いと言う範疇をはるかに超えている。

 千里眼とか予知能力とか言われた方がまだ理解できるよ。


 「も、もしかしてビックリさせちゃいましたか?」

 「あぁ……正直引いてる」

 「ごめんなさい、メッセージ送るのって苦手で」


 どうも文を送る直前であれこれと考えてしまうらしい。

 そうしてアプリを閉じるまでがいつもの流れだともミミミさんは言っていた。


 「それと……こんな事言っちゃうのは言い訳っぽいんですけど」

 

 ミミミさんがそう言葉にして数秒。

 少しあたふたする彼女を見た、また数秒。

 やっと落ち着いたのか、小さな声で彼女は語った。


 「ほら、健二さんっていわゆる因習村的な場所の生まれなんですよね。スマホとか、現代機器って嫌いなのかなと考えたり」


 確かに、スマホに連絡を寄こされるよりこうやって出会う方が俺にとっては好みだ。


 こういえば、村に居た時は自分より年の小さいガキが家のドアをドンドンと叩くことが頻繁にあった。

 『今暇だろ?一緒に遊んでよ』ってな。

 

 「ひぃぃぃ。ごめんなさい、私の貧相な脳で変な事を考えてしまって……おまけに健二さんを驚かせてしまって」

 

 「いや。良いんだ……と言うかむしろ」


 気が付けば口元が緩んでいた。

 

 「少し、昔を思い出していい気分になったよ。出来ればこれからもこうやって突撃してくれる方が助かる」


 こんな愉快な気持ちで笑ったのなんていつぶりだろうか。


 「あ、そうそう。実は今日健二さんの所にお邪魔したのには理由があるんです」


 そんな事を考えていると、ミミミさんは小声で話しながら体を寄せて来た。

 彼女は非常に慣れた手つきでスマートフォンを操作していた。



 そして、画面に映ったのは見知らぬ女の死体だった。



 「お互いの事情、もっと話し合った方が良いと思ったんです。今後の私達の為に」

 「確かに……それはもっともだな」


 俺は百玉様の為に。

 ミミミさんは自分の為に。

 俺達は人を殺して料理をする事になる。


 その際、互いに不利益が出ないようにある程度の決め事は作っておかなければ。

 ミミミさんの腹だけ満たして百玉様が復活できないなんて事態だけは何としても防がないと。


 「実は、こういう話し合いをするのにぴったりな場所があるんです。この後一緒に

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