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ハッピー・カニバリズム・スローライフ~因習村育ちの社畜、人肉料理を振る舞ったら女子大生に世界を壊すほど愛された~  作者: アカアオ
2章 疑似家族編

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突発的な緊急事態

 「あぁ……やっと解放された」


 打ち上げが……終わった。

 なんかもう。

 本当に疲れた。


 もう夜の11時か。

 今日はミミミさんに家寄れないって言ってるし、帰って寝よう。


 うん。

 それが良い。


 「ちょっとミミミちゃん。痛いよ」

 「我慢してユーフォちゃん。少しだけで良いから」


 ほら、ここに居ないはずのミミミさんやユーフォの声まで聞こえてくる。

 これは本格的にー


 「また例の勘?」

 「うん。すっごい嫌な予感がして」


 あれ。

 これもしかして幻聴じゃない?


 切羽詰まったミミミさんの声。

 何より、ミミミさんの言う『嫌な予感』。


 「何かあったのか?!」


 気づけば声の方向へ走っていた。

 路地を曲がった先。

 パッと開いた視界の先にはミミミさんと、俵の様に担ぎ上げられているユーフォの姿があった。


 「ミミミさん!!」

 「あ、健二さん」


 ミミミさんが凄いスピードで走ってくる。

 よく見れば、二人ともパジャマ姿のままだ。

 相当急いでここに来たんだろう。


 「一体何があった」

 「何も起こってないよ!!急にミミミちゃんが私を拉致ったの」


 ミミミさんの肩の上でユーフォが暴れる。

 ユーフォは凄く不満そうだが……ミミミさんが何の計画性もなくこんなことをするはずがない。


 「ミミミさん、詳しく状況を教えてくれないか?」

 「本当についさっきの事なんです。今までに感じたことの無い、嫌な予感がしたんです」

 「具体的にはどんな?」

 「具体的な事は何も……でも、今すぐ逃げなきゃって勘が訴えてきてて」


 ミミミさんの腕は震えていた。

 それどころか冷汗がとめどなく流れている。


 「分かった。とりあえずこの後はどうする」

 「私の家には帰らない方が良いって勘がします」

 「なら俺の家……いや、警察勢力に監視されている可能性があるか」

 「このままホテルに泊まって一日過ごすのが一番安全な気がしますね」


 あんなミミミさんを見るのは初めてだ。

 今までで一番の危険が迫っているのかもしれない。


 ミミミさんの勘はいつも正確だった。

 その勘がここまで危険信号を出している異常事態。


 一手間違えただけで全て終わるかもしれない。

 ここは慎重に。


 「あれ、スマホが無い」


 俺の思考を遮ったのはユーフォの一言だった。

 彼女は自分の服のポケットというポケットをひっくり返してスマホを探している。


 「おい、今はそんな事言ってる場合じゃないだろ」

 「いや、ありえないでしょ。スマホ無しで一晩過ごすって」


 こんな非常事態に何を言ってるんだこいつは。

 まさかスマホを取りに行くとか言うんじゃないだろうな。


 「良いか?!今は非常事態なんだ。あんな板切れ、一晩ぐらい我慢しろ」

 「そんなのお断りって言ってるの」

 「ちょ、健二さん。ユーフォちゃんも、お、おお、落ち着いて」


 ユーフォはブンと腕を振ってミミミさんを突き放す。

 動揺していたのか、ミミミさんはユーフォの体を手放してしまう。


 「私、スマホ取りに行くから」

 「おい待て!!ミミミさんの話を聞いてなかったのか」

 「うっさい!!ついてこないで」


 そう言ってユーフォがばら撒いたのは一枚の紙。

 そこには見慣れた『この世は全部ユーフォ様のモノ!!』の文字が。


 「な、悪魔文字?!」

 「邪魔するなら眠ってて!!」


 くそ。

 直に見たせいで意識が。


 「ユーフォちゃん……まって」


 意識が途切れる寸前、視界に入ったのは地面に倒れるミミミさんの姿だった。

 

◇


 「ハァ……ハァ!!」


 地面に倒れる健二とミミミちゃんを見て、私は走った。

 勘違いされちゃ困る。

 私は健二とミミミちゃんを利用しているだけだ。


 平気で人を殺して、平気で人を料理する人間。

 そんな奴らと一緒に過ごせていたのは生活の大部分をスマホで潰していたからだ。


 もちろん、ミミミちゃんとは色んな話をした。

 でもそれは、全部私がミミミちゃんに食べられないようにしたいだけだ。


 健二の記憶を戻すのだって真剣にやったよ。

 でも、これもやっぱりあの二人に殺されない為に利用価値を見せたかっただけ。


 あんな狂人二人とスマホも無い、逃げ場のないホテルなんかに泊まれるはずがないでしょ。


 『スマホは方便だって分かってる癖に』

 「うるさい」

 

 大体、ミミミちゃんの話だって怪しい。

 ミミミちゃんの勘が本物だって言う事は知ってるよ。


 でも、それを周知させた上で嘘の方便に使う事は出来るじゃん。

 その勘が本当が嘘かはミミミちゃんしか知らないんだから。


 『随分と自分に都合の良い考え方しててウケル』

 「うるさい」


 私は健二やミミミちゃんとは違う。

 人を殺したいなんて思った事なんかない!!

 人を食べたいと思った事なんかない!!



 『私が怖いのは、ホテルって密閉空間であの二人を私が殺してしまう事でしょ?』

 「違う!!」


 

 私は、ママがロキとか言う変な奴に乗っ取られただけなの。

 体を六芒組とか言うヤクザに改造されただけなの。


 『じゃぁ警察にでも転がり込めば良いじゃん』

 「ちがう」


 『ほら、何だっけ?トー横だっけ?そこに行って匿ってもらいなよ』

 「あれをやったのは私じゃない」


 『だいたい、あんなカニバリズム狂人といる方が危険でしょ……ねぇ、どうして?』

 「違う!!違う!!」


 『ねぇ私?どうしてだっけ??何で安全な警察署に行かないの?どうして居心地が良かったトー横に帰らないの』

 「うるさい!!うるさい!!うるさい!!」


 あれは違う。

 私じゃない!!


 どうして私が優しくしてくれた交番の人を殺さないといけないの!!

 なんで私がトー横の皆を殺さないといけないの!!


 『な~んだ分かってんじゃん』

 「違う、私じゃない」

 『違わないよ。私が自分で壊して自分で首を絞めてるんだ』

 「違う違う違う違う違う!!」


 気づけば息も絶え絶えだった。

 目の前には、ミミミちゃんのマンションがある。


 良かったこれでスマホを回収できー


 「いやぁ、兄貴のおかげで良い事尽くめっすねぇ」

 「浜やんに感謝だな」

 「組潰された俺達にも席用意してくれて、感謝しかねぇよなぁ」


 ミミミちゃんのマンション。

 いつも出入りする部屋の二つ隣に……見たくもない奴がいた。


 「なんで、六芒組の奴らがここに」


 やばい。

 見つかっちゃう。


 急いで逃げないと。


 「あ」


 あ~あ。

 急いじゃったからかなぁ。

 こけちゃった。


 「ん?今音しなかったか?」

 「え~っと、ん??アニキ、あれ!!」

 「あいつ、浜やんが探してたガキだろ」

 「お~い浜やん。こっち来いよ!!棚ぼただぜ棚ぼた」


 六芒組の奴らが私を囲んでる。

 逃げ場もない。


 「んだよお前ら……ってお。ユーフォじゃねぇか」

 

 あぁ。

 終わったんだ、私。


 浜やんだっけ?

 一番偉いやつがもう目と鼻の先じゃん。


 「探したぜ。散々逃げ回ってくれやがって」

 「い、今更私に何の用」

 「お前はウチの組の大事なしのぎだ。それにロキが会いたがってる」


 馬鹿な事したなぁ。

 あのままミミミちゃんに担がれてたらよかったのに。


 「おいお前ら。そいつ縛っとけ」

 「うぃーす」


 嫌だ。

 こいつらに捕まりたくない。


 「なぁ浜やん。こいつ使って遊んでも良いか?良いよな?」

 「お前、児ポでパクられたの忘れたのか?程々にしとけ」


 こんなことで人生終わるなら。

 もういっそ。


 「悪いな、現代社会育ちのもやしども」

 「え?」


 そんとき、聞こえてきた声に私は反応できなかった。

 だってここに来ないと思っていた人間がそこに立ってるんだから。


 

 「何で起きて……悪魔文字の効力がまだ」

 「ミミミさんに感謝しとけよ。マジで危ない所だったんだからな」


 困惑する末端組員を健二が殴り倒していく。

 現代社会育ちは貧弱だなんて、意味の分からない理屈を述べながら。


 「こいつは百玉様の復活のために必要なんだ。返してもらうぞ」

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