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ハッピー・カニバリズム・スローライフ~因習村育ちの社畜、人肉料理を振る舞ったら女子大生に世界を壊すほど愛された~  作者: アカアオ
2章 疑似家族編

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26/28

真名 ###############

 『お前は百玉様と巫女の関係をどう考えている?健二』

 『どうって、巫女が生贄を食べることでその力を百玉様に送るんだろ?』

 

 頭が痛い。

 ユーフォと出会ってから、毎日の様に記憶の復元を試みてはいるが……これはかなりの長期戦になりそうだ。


 百玉様についての確信めいた記憶を思い出そうとする度に、頭が割れたように悲鳴を上げる。


 『おおむね間違いはない。だが、一つだけ例外が存在する』

 『例外?』

 『巫女が百玉様とは別に特殊な力を持っていた場合だ』


 ここだ。


 いつも巫女の話。

 百玉様の真名の話。

 祝詞の話になると意識が途切れる。


 集中しろ。

 ここが正念場だ。


 痛みにこらえて、少しでも情報を!!


 『実はな健二。皆には内緒にしているが、祝詞の内容が一回だけ変わっているんだ』

 『え?」

 『そもそもの話、百玉様の実態も一度変化している』


 なんだ……その話。

 不思議と聞き覚えはある気がする。

 でも、今の俺にはその記憶が綺麗さっぱり無いぞ。


 『元々百玉様は人格を持たない、『回帰の力』そのものだったんだ』

 『な?!嘘つけよ!!じゃぁ俺が話したあの百玉様は何だったんだ』

 『アレは、村に込められた祈りと3代目の巫女様の意識が混ざった結果生まれた人格だ』


 巫女と祈りが混ざった?

 それっていったい。


 『巫女様の名前は######。夢で#########、そして百玉様の力をより強くされた#######』


 『それじゃぁ、祝詞が変わったって言うのは?』


『あぁ、百玉様の真名が###############』


 ###################。

 ###################。

 ###################。

 ###################。



 「健二さん!健二さん!」


 気が付けば、現実に帰って来ていた。

 視界には、不安そうな顔で俺を見つめるミミミさんの姿が前面に映っていた。


 「ミミミさん……俺は」

 「大丈夫そうで良かったです。悪魔文字を見てから3時間もぐったりしてたから私心配で」


 3時間。

 体感では数分程度しか感じなかったんだがな。


 酒呑角(しゅてんかく)トバリと天使が施した記憶改変の恐ろしさをこれでもかと自覚する。

 

 「体調が戻るまでこのままジッとしてください。無理に体を動かすのは良くないですから」

 「あぁ、ありがとうミミミさー」

 「そう言ってぇ。本当はもっと健二に膝枕したいだけなんじゃない?」


 ドタドタと奥の部屋の扉が開く。

 ニヤニヤと怪しい笑みを浮かべたユーフォがリビングに飛び出てきた。


 「ベ、ベベベ別に。そそそそそそそんな事、なななななな」

 「え~嘘でしょミミミちゃん。動揺しすぎでしょ」

 「そう言いながら動画撮影するなよ」


 ユーフォの奴。

 偉いスムーズにスマホのカメラを。


 こんな映像取ってどうするつもりだ。


 「保険だよ、保険。もし、私が健二やミミミちゃんに殺されそうになったときにこれで脅すの。ミミミちゃんの醜態をネットにばら撒いてやるぞ~って」

 

 こいつは本当に。

 悪魔の力が無かったらすぐに追い出してる所だぞ。


 「んで、健二の記憶は戻った訳?」

 「前よりは情報を持ち帰れたが……まだ肝心の百玉様の真名が分からないままだ」

 「マジか」


 えぇとため息をつきながら頭を掻くユーフォ。

 

 「言っとくけど、私の力が弱いんじゃないからね」

 「別にそんな事は思ってない。安心しろ」

 

 力と言えば……さっき思い出した巫女の話。

 特別な力を持った人間が巫女になると何か特殊な事が起こるって話だ。


 「アバババ。アババ」

 「おーい。ミミミちゃん帰ってきて~」


 ユーフォにいじられているミミミさんを見る。

 特殊な能力と言えば、ミミミさんも持っている。


 人の肉を食べる事で人体スペックが上がる。

 特に顕著なのはその勘だ。


 もしかして、ミミミさんを通して百玉様に変化が起こっている?

 それともー


 『アレは、村に込められた祈りと3代目の巫女様の意識が混ざった結果生まれた人格だ』


 ミミミさんの方に何か変化が?


 「なぁミミミさん」

 「フェ?!な、なんですか健二さん」

 「俺と百玉村に行ったあの日から、何か体に変化とかー」


 そう言いかけた瞬間の事だった。

 誰かのスマホから着信の通知音が鳴り響く。


 ユーフォのものかと思ったが、どうも違うらしい。

 それじゃぁミミミさんの?

 いや、それも違う。


 「俺のスマホから?」


 猛烈に嫌な予感がする。

 ゆっくりと仕事用のカバンを開け、スマホを確認する。


 そこに書かれていた相手の名前は波内だった。


 「はぁ……またこの日が来てしまったか」

 「健二さん?この人は誰ですか」

 「会社の同僚だよ。多分、部署で打ち上げをするから来いって誘いだろ」


 毎年この時期にやってるよなぁ。

 しかも、俺は毎回波内に引っ張られて強制参加だ。


 「はぁ、いい加減諦めてくれないもんかね」


 そうして、ピっと通知を切った。


 「え、健二さん⁉電話で無くて良いんですか?」

 「嘘でしょ?!着拒?!曲がりなりにも社会に出てる成人男性が着拒って」


 どうして二人ともこんなに慌ててるんだ。

 別に行きたくもない打ち上げの誘いの電話だぞ?

 

 仕事じゃあるまいし、会社に居ないときぐらいは外の世界のルールに従わなくても良いんじゃないか?


 「大丈夫だよ。毎年こうしてるから」

 「毎年電話切ってるんですか?!」

 「しかも、毎年波内に連行されるんだよ。早くちゃんと社会人らしい行動を身に着けろって言われながらさ」

 「怒ってんじゃん。同僚の人怒ってんじゃん」


 な、なんだ?!

 ユーフォはともかく、どうしてミミミさんまで?


 「それは不味いって。いや、ホントそれで会社クビになったらどうすんの??私の生活は!!」

 「匿われてる身で何を」

 「大事だから!!何の為に私が殺人カニバリズム狂人と一緒に暮らしてると思ってる訳!!」


 ユーフォがヒートアップしてまくし立てる。

 そんな中、ミミミさんがトントンと肩を叩いた。


 「健二さん、私は分かりますよ。苦手なんですよね、打ち上げもスマホでの会話も」

 「ミミミさん。やっぱり分かってくれるか!」

 「それでも……これはあんまりよくないんじゃないかなぁと」


 えぇ。

 ミミミさんもその結論になるのか。


 「ちょ、そ、そんな目で見ないでください。えっと、辛いのは分かるんです。健二さんが現代社会を嫌いな事も知ってるんです。でも、でもぉ」


 「駄目だよミミミちゃん。こういうやつにはガツンと言ってやらないと」


 「えっと、えっと。あ、そうだ。私の勘が言ってます!!絶対、連絡返した方が良いって、ほら、今すごい感じてます」


 ミミミさん。

 凄い目が泳いでる。


 てか凄い感じてるってなに??

 今までそんな事言って無かったじゃん。


 「と、とにかく」

 「今く掛けなおして!!」


 まじかぁ。

 この状況から波内に電話を帰るのは気が乗らないなぁ。


 俺はそう思いながら重い腰を上げるのだった。

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