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ハッピー・カニバリズム・スローライフ~因習村育ちの社畜、人肉料理を振る舞ったら女子大生に世界を壊すほど愛された~  作者: アカアオ
2章 疑似家族編

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惚気 / 想定外

 「こういう道は滑りやすいから気を付けてな、ミミミさん」

 「大丈夫ですよ健二さん。こう見えても私の運動神経は……わわっと?!」

 「言ってるそばから危なっかしいことになってるじゃないか」


 来る日曜日。

 ミミミさんの提案でやってきた山登り。


 天気は快晴。

 おあつらえ向きだ。


 「うぅ……恥ずかしい」

 「まぁ、コンクリートの地面とは勝手が違うからな」

 「健二さんは随分と慣れてますね」

 「村にいた時にこういう所で散々こけたからな」


 探検だとか言って山を走り回ったよなぁ。

 俺は酷い転び方をしたもんで、村が大騒ぎになったり。


 昔を懐かしがりながら、ぱっと周囲を見た。

 もう少し歩いた先に、開けている場所があった。

 ちょうどベンチ代わりに仕えそうな岩もある


 「ミミミさん。もうちょっと歩いてあそこで休憩しよう」

 

 ただ、結構滑りやすそうだな。

 斜面も急だし。


 ここはー


 「け、健二さん……その手は」

 「こけて怪我するといけないだろ?」


 俺の手を握っておけば、ミミミさんが怪我することもない。

 

 「そ、そそそそ、そうですよね!!怪我を……するのは、良くないですからね!!」


 ガシッと手を掴むミミミさん。

 不可抗力、不可抗力と呪詛の様に呟いていたのは何か理由があるのだろうか?




 「たまには市販品も良いものだな」


 岩に座ってゆっくりとパンを食べる。

 山の中で食べようと持ってきたのは、コンビニなどで売っている菓子パンや総菜パンだ。

 

 「いいですねぇ……自然に囲まれてゆっくりするのも」

 「そうだな……せわしない現在社会のストレスも落ち着くよ」


 ミミミさんの勘がこの山に何かの可能性を見出したのは事実だ。

 だが、それだけだと味気ない。


 文明の利器から限りなく離れたこの場所で、出来る限り労力をなくしてゆっくりする。

 そんな少し特別な休暇も今日はかねているのだ。


 「確かに美味しいですけど……健二さんの料理には負けますね」

 「ミミミさん?」

 「因みに100%本心ですよ。最近、健二さんの料理は本当にすごいんですから」


 焼きそばパンをまるっと平らげたミミミさんが目を輝かせてそう言った。


 「健二さん、最近の料理もっと美味しくなってませんか?」 


 とん、とミミミさんの頭が俺の肩に乗っかった。

 随分とリラックスしている様子だ。


 「あの鉈のおかげだな。今まで出来ない料理法を試せるようになった」


 市販の包丁で人を捌くのはほぼ不可能だったからな。

 これからは、可食部分を泣く泣く捨てる必要もなくなった。


 以前より、祈りを込められるようになるだろう。

 以前より、生贄になった人間の魂を浄化させることができるだろう。


 「ミミミさんこそ、バレないように人を殺すのは大変だろう?」

 「いえいえ。私の方も健二さんの料理で感が冴えわたっていますので」


 ミミミさんは事あるごとに『健二さんの料理のおかげです』と言ってくれる。

 だが、俺だってミミミさんの力が無ければ何もできなかった。


 「こんなことを言うのは恥ずかしいですが……私は今、きっと、人生で一番幸せです」

 

 そう言えば、最近のミミミさんは言葉に詰まらなくなったな。

 初対面の時とは大違いだ。


 「最近本当に美味しいですよ。元が人の肉とは思えないぐらい」


 ボディタッチも増えているような気がする。

 表情も気持ち柔らかいような。


 「健二さん?」


 少し、熱い。

 ミミミさんを意識したせいなのか?


 





 パキ





 いつぞやの時の様に、異音がムードというものを壊していく。

 今聞こえたのは、人の足で何かを踏んだ音。


 「ワッ」


 今の声で確信した。

 誰かにさっきの話を聞かれている。


 「なんだ」


 通りすがりの部外者か?

 それならいい。

 いくらでも手はある。


 だが、これが警察関係者なら厄介だ。

 まずは状況把握をー


 「イタっ」

 「え、子供?」


 振り返ると、そこに居たのは中学生程の女。

 真っ黒なマスクを身に着け、ボロボロの服とリュックを身に纏っている。


 「えっえっえっ、ななななな、なんで人が?!」


 隣に立っていたミミミさんがパニックになっている。


 「私の勘は……今日は大丈夫だって……健二さん、これは」

 「大丈夫。ミミミさんの勘の事はちゃんと理解してる」


 もしかして、この子の存在はミミミさんの勘で察知できなかったのか?

 もし、この子供が俺達に敵対する存在であるならば……ミミミさんの勘が何も反応しないのはおかしい。


 なら考えられるのはー


 「なぁミミミさん……これって俺とミミミさんが出会った時と似てないか」

 「え……た、確かに言われてみれば」


 あの時のミミミさんを思い出せ。

 ホストを絞め殺していたミミミさんは俺を見て驚いていた。

 きっとあの時も、俺と出会う所まで勘で察する事は出来なかったんだ。


 

 「あ、あの~」

 「これ以上近づかないでほしいなぁ。私、スマホ持ってるから警察に通報しちゃうよ?」


 しばらく無言を貫いていた少女が口を開ける。

 警察に通報するねぇ……確実に俺とミミミさんが人肉を調理している事はバレているな。


 「そのスマホ、充電ないですよね」

 「え?!なんで」

 「なんとなく、そんな気がしたので」


 少女の顔を見ると、ビンゴだな。


 「間違いだったらすみません。貴方に一つ、聞きたいことがあって」

 「何?」



 随分と警戒している顔だ。

 だが、それも仕方ない事だろう。


 この現代社会において食人行為は野蛮な行いであると定義されている。

 仮に、ミミミさんと同じカニバリズムの同志だったとして……こんな社会じゃ常に警戒を解けるはずがないからな。


 「あなたは……カニバリズム同志ですか?」

 「はい?????」


 本当に何を言っているのか分からないって顔だ。

 もしかして……俺の推理は間違っていたのか?

 

 「んな訳ないでしょうが!!!!」



 この子供は俺やミミミさんの理解者などではない。

 食人行為を真っ向から否定する、現代社会の住人だ。

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