ご褒美
「健二さん!!これ、全部食べて良いんですか?」
「あぁ。遠慮はしないで良い」
揚げ物。
どんぶり。
ステーキ。
色んな料理が並ぶテーブルを見たミミミさんは心底嬉しそうな顔を浮かべる。
百玉村で鉈を手に入れられてよかった。
やっぱり普通の包丁では切れなかった箇所が切れるようになり、肉の形を整えるのも簡単になった。
今までは何とか切り離した肉を鍋に入れるだけだったが、これで色んな料理を作れるというものだ。
「にしても、二人分の人肉を料理してほしいって言われた時は流石にびっくりしたぞ」
「えへへ……旅も終わってほっとしたらおなかすいちゃって」
いたずらに生贄を増やすのはあまり褒められた行為では無いだろう。
でも、ミミミさんが俺の為に頑張ってくれたのは事実だ。
百玉村を勘だけで見つける。
そんな大それたことを平気でやってのけたのだ。
その分、エネルギーを使って消耗していてもおかしくない。
これは、俺なりのミミミさんへの恩返しだ。
「それじゃあ健二さん。骨を」
「あぁ」
今日の生贄になった人間の骨をミミミさんに渡す。
その骨を加え、じっと目をつぶってミミミさんが祈りを捧げた。
気のせいだろうか。
それともミミミさんが慣れて来たんだろうか?
今までは頑張って祈りをやってくれていた感じがしていた。
でも今はー
「……」
村で見た、巫女が祈りを捧げていたのと変わらない雰囲気を纏っているように見える。
ミミミさんもまた、百玉村に行ったことで何かが変化しているのか?
まぁ、嬉しい事だ。
◇
食事を終え、食器などを片付ける。
毎日の様にミミミさんの家に寄っているが、いつも最後にはこうやって自分の家に帰っている。
「う~ん」
荷物をまとめ、いつも通り帰ろうとした時のこと。
ミミミさんはうなり声を上げながらカレンダーを見ていた。
「どうしたんだ?」
「いや……もういっその事、健二さんと同棲出来たらと思いまして……っは、いいいや、これはその?!」
顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
同棲がしたいと言うのはぽろっと出てしまった本音だったらしい。
「いや……同棲したいって言うのは本当で……ただまだ心の準備ガガガ」
「同棲かぁ……まぁ悪くはない提案だな」
「ふぇ?!」
どのみち、俺は仕事終わりにミミミさんの家に来る。
そこで人の肉を料理して、巫女となったミミミさんを経由して百玉様に人肉料理を捧げる。
このルーティーンは変わらないわけだ。
律儀に家に帰るのは面倒まである。
「健二さん……今すっごく心臓がバクバクしてていい気分なんですが」
「お、おう」
ミミミさんの顔が殺気にもまして赤くなっている。
目はぐるぐるしているし、頭上には湯気が立っている幻覚すら見えるほどだ。
「一つだけ、気がかりな事があって」
「気がかりな事?」
「はい……私の勘が、まだ同棲するべきじゃないと強く訴えてまして」
なるほど。
ミミミさんの勘の異常な鋭さは身をもって実感している。
それに……思い返してみれば、今俺が住んでいるマンションは警察との繋がりがある施設の連中が選んだものだ。
下手に行動を起こして酒呑角トバリに察知されるのは避けたいな。
「それで、カレンダーを見てたんです。何かピンと来ないかなと」
ミミミさんは少し落ち着いたのか、じーっと指でカレンダーをなぞる。
俺は手に持っていたカバンを一回地面に置き、その様子をじっと観察した。
数分が経つ頃だろうか。
ミミミさんの指の動きがすっと止まった。
「健二さん……今週の日曜、山に行きませんか?」




