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ハッピー・カニバリズム・スローライフ~因習村育ちの社畜、人肉料理を振る舞ったら女子大生に世界を壊すほど愛された~  作者: アカアオ
1.5章 被害者達

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古島ミミミの被害者

 人の肉を使って飯を作った。

 悪い事は色々やったが、一番後悔しているのはこれだ。


 『あなたですよね。あのラーメンを作っていたのは』

 『なんなんだ……このクソアマァ!!』


 なんせ、ハジキをバタフライナイフで捌く女のガキに襲われる羽目になったからな。

 

 『貴方があんなことをしなければ……私は、出来の悪い陰キャってだけだったんです』

 『なんの話や』

 『もう……こんな世界をしったら戻れるわけ、無いじゃないですか』

 『だから何を言うとる』


 俺はヤクザの下っ端だった。

 頭もよくねぇし、腕っぷしもそこまでだ。


 でも、親父や仲間の事が大好きで。

 出来ないなりに自分の出来る事を一生懸命にやった。


 そのおかげか、皆には『浜やん』『浜やん』ってかまってもうろて。

 俺はそんな六芒組が好きやった。


 『貴方のラーメンを食べてから、私体育の成績が凄く上がったんです』

 『はぁ?!』

 『毎回ドベぐらいだったのに。陸上部の部長の人より走るのが速くなって』


 一番していたのは、隠れ蓑になるラーメン屋の経営。

 親父が死体の隠し場所に困っていた所、ラーメンの具にすればいいんじゃねぇかと提案し、それが見事ハマった。


 『勘も、頭も良くなりました……でも、貴方が実名報道されて、あのラーメン屋が潰れてから、私は元のできない子に逆戻り』


 そんな生活を3年。

 この生活がずっと続くと思っていた。


 『できない子ができる子になって……そこからまた出来ない子になったら周りは私をどう見ると思いますか?』


 だが、悲劇は訪れる。


 『凄く白い目で見られるんです。前よりもっとしんどい失望をされるんです』

 

 うちの組で児童買春を行っていたグループがサツに見つかった。

 そっから芋づる式に皆駄目になった。


 『私、皆からどんなに無能だと思わても苦しく無かったんです。自分で自分の事は分かってましたから。言い訳も、自分に向けた励ましの言葉も、いくらでも自分の心に投げかけれたんです』

 

 『クソっ、弾切れ!?なんで当たらん』


 『でも、一度自分が出来る方だって自覚しちゃったら、そんな言葉も出なくなりました』


 他の仲間はサツに捕まるか、因縁のあった他のヤクザに殺された。 

 正直、いい終わり方とは言えない。


 『もう、私の心は無能な私の味方じゃなくなったんです……それもこれもあなたのせいです』


 でも、ヤクザとして生きて来た以上は起こりうる終わり方だ。

 筋が通った真っ当な終わり方だ。


 『じゃぁ何か?!人を食ったから調子が良くなったとでも言いたいのか?!』

 『そうですよ……その証拠に、今日はこんなにも感が冴えてます』

 

 『は?』

 『家族を食べて来たんです。そしたら、貴方がここに居るような気がして……走って来てみたら大当たり』


 『家族を……食った?!お前、狂ってるぞ』

 『何となく、そうすれば力を取り戻せる気がしたんです』


 『ただの勘で自分の家族まで殺すのか?』

 『自分の頭で考えるより、勘に従った方が上手くいくので』


 でも、俺のこれは真っ当な終わり方じゃねぇ!!

 人を食う狂った女。

 その華奢な右腕で首掴まれて体を持ち上げられる。


 『頭もすっごい冴えてます……力も湧いてきます……銃弾だって、どうすれば防げるのか何となく分かります』


 こんな女に殺されるのは嫌だ。

 こんな意味の分からないものに、俺の人生を終わらせられるのなんてまっぴらごめんだ!!


 『責任とってくださいよ……私の為に、人の肉を作った料理を作ってくださいよ』


 そこから先の事は、あんまりよく覚えてない。

 暴れまくったら拘束が解けて、必死に逃げた事だけを覚えている。


 逃げて。

 逃げ続けた。



 2日ほどたった頃だったか?

 裏路地に入った時、これまた妙な女に出会った。


 『やめて……私の体よ!!』

 『いいじゃん、君じゃ一生かけても相手されないイケメンとワンナイトさせてあげたんだしさぁ』

 『ふざけないで……そんな事で』

 『もう悔いはないでしょ?』


 一人で掛け合いをしながら暴れまわっていた。

 女は薄着を着ているのもあって、大胆に肌がはだけていたが……それ以上に気になる点が一つ。


 肌が虹色だった。


 『嫌だぁ……私は』

 『大丈夫、大丈夫。この体は私が有効に使ってあげるから』

 『最後に……ユーフォ……あなたに』


 ピタッと女が止まる。

 虹色だった肌はすぅっと元に戻る。


 その代わりと言わんばかりに、黒だった女の髪が虹色に変化する。


 『最後に母親ズラしちゃってさぁ。大体、まともな親なら自分の子供に未確認って書いてユーフォなんてつけないでしょ』


 何なんだこれは。

 何なんだ一体。


 もう、何も訳が分からねぇ。

 俺はこのまま、意味の分からねぇ何かに殺されちまうのか?


 それは嫌だ。

 それはおかしい。


 だって、そんな死に方したら親父たちに顔向けできないじゃねぇか。


 『あちゃ~。見られてたか』


 気づけば、さっきの女が至近距離に居た。

 虹色の髪は現実に浮くことは無く、妙にしっくりくる。


 『お、おまえは』

 『どうも初めまして~。私は神話とかで有名なロキって神様なのさ』

 『は?』

 『正確に言えばその死骸……というか、死んだ後にこの女を乗っ取った状態』

 『ふざけるなぁ!!』

 

 銃を構えた。

 もう、弾は入ってない。


 でも、ふざけた女一人をビビらせるには十分だと思った。


 『ほんとだって、ほら見て』


 そう言うと、ロキと名乗った女は手のひらの上に火の玉を作る。

 その火を一瞬で凍らして、それをまた一瞬で溶かして、また火の玉を作って。


 あぁ、もう意味が分からねぇ。

 あぁ……もう嫌だ。


 『ふ~ん……大好きな組が潰されて、よくわかんない女に因縁つけられて、私まで見て……これは相当心に来てるね』


 もう、震えて声も出ない。

 そんな俺をロキは楽しそうに見つめている。


 『よし、じゃぁこうしよう。私と君で、その六芒組を蘇らせるんだよ』

 『は?』

 『今度は日本で一番のヤクザとしてさ』


 本当に……何を考えているんだ、こいつは。

 いくら何でも話が急すぎる。


 『どうやって六芒組を日本一にするつもりだ』

 『もちろん、ズルをするのさ』


 ロキが操っていた氷が肥大化する。

 それはまるで、どこぞのディスニー映画の様に氷の城壁を作る。


 『魔法、悪魔、神の権能、超能力……この世界には君みたいな人間が想像も及ばない力が沢山あるんだよ』


 薄汚い路地の見てくれが一瞬にして煌びやかになる。

 ロキがパチンと指を鳴らすと、火の玉が明かりを灯す照明として周囲に浮かび上がった。

 

 『今の私は元の力の20分の1も出せないけど、君一人を成り上がらせるには十分って訳』


 そう。

 それは間違いなく、普通の状況じゃなかった。

 

 きっと、あの人食い女と同じ力。


 『私ってばネームバリューが大きすぎて敵が多いんだよねぇ……だから、隠れ蓑が欲しいわけ』

 『俺と六芒組を利用するってか』


 人の肉を使って飯を作った。

 悪い事は色々やったが、一番後悔しているのはこれだ。


 そのせいで、俺は普通の生活には戻れなくなったからだ。

 見ているだけで不安になるような、ぐらっと頭を揺さぶられるような、そんな力との縁が出来ちまったからだ。


 でも……後悔だけして下を向いてたら、親父や組の皆に笑われちまう。

 

 『いいだろう……テメェと手を組む』

 『よし、んじゃ契約成立って事で』


 ロキがそう言った瞬間、彼女の首に鉄の首輪がガチャンとハマる。

 その首輪にはデカデカとプレートが付いていた。


 『ロキの死骸は浜道銅兵(はまみちどうへい)を裏切りません』


 その文言がデカデカと書かれている。


 『この首輪は私と君にしか見えない。ま、私なりの誠意だと思って』

 『随分と仰々しいな』

 『え~だってロキと言えば裏切者のトリックスターでしょ?これぐらいはしないと信じてもらえないと思ってさ』


 神経を逆なでするような顔。

 俺が一番嫌いな女の顔だ。


 気に喰わねぇ。

 ただ……親父の持ってたカリスマとは違う何かをこの女が持っている。


 その何かが神様の威厳だって言うなら大したもんだぜ。

 いつか死んだとき、親父に話してやらねぇとな。


 『六芒組を日本一にするなんて大口叩いたんだ。キリキリ働いてもらうぜ、神様』

 『はいは~い。これからよろしくね、浜やん』

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