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ハッピー・カニバリズム・スローライフ~因習村育ちの社畜、人肉料理を振る舞ったら女子大生に世界を壊すほど愛された~  作者: アカアオ
1章 はぐれ者、二人

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これはまだ始まりだった

 「それじゃぁ、ミミミさんは俺が寝ている間に百玉様と」

 「はい。少しだけお話しました」


 グシャリ。

 グシャリ。


 土を踏む。

 壊れた故郷に響くのは、俺とミミミさんの声だけだ。


 「なんでも、私達をここに連れて来るので力を使っちゃったそうで」

 「そうか」

 「健二さんは、夢の世界で試練を受けてたんですよね」

 「あぁ……ちょっとキツいもん見たよ」


 何か、今後に繋がるものが無いか?

 そんな事を思い、二人で村を探索する。


 「記憶は……完全には戻っていないんですよね」

 「あぁ……でも、もう大丈夫なんだ」


 子供の頃、走り回った広場の跡。

 川に行くときに通った道。

 俺の家だった場所。

 波内の家だった場所。


 「気持ちの整理はついた、百玉様も俺達の事を認めてくださった」


 全部壊れてしまっていた。

 その景色を見て、何かを思い出す事も、衝動に駆られることもない。


 「これ以上の成果は無いよ」


 でも、俺は得た。

 今後の俺に必要なものを。

 村に戻ってくるまでの、この旅で。


 「う~ん……もうちょっと見て回りませんか?」

 「何か気になる事でもあるのか?」

 「はい。まだ何かが残っているような気がして」


 ちらちらと周囲を見るミミミさんの姿が目に映る。

 

 本当に不思議な子だと思う。

 少し変で、ずっとおどおどしていて。


 なのに変に勘は鋭くて。

 その特性を生かすことを厭わない。


 「ミミミさん」

 「どうしました?健二さん」


 小動物の様に振り返るその姿も。

 目を離すと人を殺してしまうその狂気も。

 おいしそうに俺の料理を食べるその姿も。


 その全部が、俺の脳裏に焼き付いて消えない。

 喉まで焦がして、声にすると感情があふれ出そうだった。


 「わっ?!どどどどど、どうしたんです?!」


 だから……そう、きっとだからだ。

 みっともなくぶちまけそうになった感情が、抱擁という行動に変わっただけ。


 そんなに強くは抱き着いていない。

 本当に、本当にそっとミミミさんを包んでいるだけだ。


 「この旅の事、本当に感謝してる」

 「健二さん?」

 「不安な事もある、課題もある……それでも、生きてみようって思えたんだ」


 あぁ。

 でも、嘘の言葉で強がることは出来ねぇなぁ。


 気づけばもう、本音が口から零れ落ちてる。


 「全部全部、ミミミさんのおかげだ」


 ぎゅっと。

 ぬくもりが俺の体を包む。


 「言ったじゃないですか。今度は私が健二さんを救う番だって」


 ミミミさんが俺の体を抱きしめ返していた。

 互いの体を引き寄せる力は、徐々に強くなっていく。

 気づけば、互いの瞳をじっと見つめている。


 「健二さん」

 「ミミミさん」


 ふと、気づいた。

 俺とミミミさんの顔が近づいている。


 このまま数秒も立てば、互いの唇がーー






 バキ!!!!!






 「うわぁぁぁ?!なな、なんの音ですか??」


 突如響いた爆音で、ミミミさんがぱっと離れてしまった。

 獣でも出たのかもしれない。

 そう考えて、ふと音がした方向を振り返った。


 「あれはー」


 そこにあったのは、真っ二つに割れ、朽ちた一本の木。

 その木の中に……銀色に輝く鉈が一つ。


 「健二さん……あれって、前に言ってた」

 「あぁ」


 忘れもしない。

 オヤジが使っていた、生贄料理用の鉈だ。


 「ハハ……なんでこんな所にあるんだよ」


 すっと手に取った。

 驚くほど手になじむ。


 「これも、百玉様からの施しなのかもな」

 「……だとしたら、ちょっとタイミングは考えてほしかったです」


 愚痴っぽくこぼしたミミミさんの言葉。

 少し笑ってしまった。


 そんな俺につられてか。

 すこし、恥ずかしそうにミミミさんも笑う。


 「それじゃぁ、健二さん」

 「あぁ。帰ろう……俺達の家へ」

 

 そうして二人、手を取る。

 これから色々あるだろう。


 酒呑角(しゅてんかく)トバリに、ミミミさんが出会ったと言う他の神。

 気がかりな事は多くある……でもー


 「はい!安全に帰るまでが旅ですから」


 ミミミさんと一緒なら大丈夫だ。

 



 これは健二さんがまだ寝ている時の話。

 私と健二さんが家に帰る……その少し前の話。


 百玉村に着いた時の、私と百玉様だけの内緒の約束。


 「たしか……ここに」

 「何を探しているんですか?」

 「私の死体だよ」


 百玉様はそう言って、地面を優しく掘った。

 私の勘は、いまだに百玉様を味方だと訴えかけている。


 なら、きっと私は受け入れた方が良い。

 この後おこる、すべての事を。


 「あった」


 地面から出てきたのは、干からびた人の手。

 異常だったのは、その手の切断面に白と黒のノイズが走っていた事だ。


 「回帰して」


 百玉様がそう言うと、ふっとノイズが消え去った。

 残ったのは、腐った干し肉に見える……神様の死体だけ。


 「いまからすることは、けんぼうには内緒」

 「り、理由を聞いても……いいですか?」

 「けんぼうは保険があるのを知ると、それを頼りにするだろうから」


 なるほど。

 だから内緒の保険を私と作るつもりなんだ。


 「これ……食べて」


 美味しくはなさそう。

 できれば、健二さんに料理してほしい。


 「でも、それじゃぁ駄目なんですよね」

 

 どんな影響が私の体に出るか、分からないけど。

 一つ、確かなのは……この肉を食べる事は重要であると、私の勘が告げてるって事。


 「なら、私に拒む理由はありません」


 いま、私の胃の中には百玉様の腕がある。

 それがこれからの私達にどう影響するのか、今は分からない。

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