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ハッピー・カニバリズム・スローライフ~因習村育ちの社畜、人肉料理を振る舞ったら女子大生に世界を壊すほど愛された~  作者: アカアオ
1章 はぐれ者、二人

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【ミミミSIDE】 恋の病は勘をも超える 症例1

 「けんぼう……よぅここまで」


 はっと目が覚める。

 何か知らない声が聞こえたような気がするけど、何だったんだろう。


 「健二さん。起きてますか~」


 小声でそう言った。 

 何となく、健二さんはまだ寝てそうだと思ったから。


 返事はない。

 代わりに聞こえてくるのは健二さんの寝息だけ。


 なら、私は家を出る準備をしよう。


 今日は何となく百玉村に一気に近づく様な気がする。

 早くこの家を出た方が良い気もする。


 「よし、それじゃぁ健二さんの荷物をまとめてー」


 そう言って、立ち上がった瞬間の事。


 「え?」


 私の目に映ったのは、異常な光景だった。

 

 「けんぼう……ごめんねぇ」


 熟睡している健二さんの上に、何かが居る。

 女の子?

 それにしては腕が干からび過ぎ。

 髪も異常なぐらい伸びてる。


 私の勘が告げる。

 目の前の異常存在は、私達の敵ではないと。


 「健二さんから離れてください」

 「きみ……は」


 おそらく、百玉村に関係する存在であることも何となくわかる。

 いや、そんなものじゃない。


 目の前の幼女が健二さんの言う百玉様だって、私の勘は言ってる。

 でもー


 「早く……早く離れてください」


 あれ、おかしいな。

 どうして私はナイフを構えてるんだろう。


 いつもは勘に全てを委ねているのに。

 今の私の行動が間違っていると全身が訴えているのに。

 

 「私の健二さんから離れて」


 幼女……もとい百玉様が健二さんの頭を撫でていたのに妙に腹が立った。 

 私だって健二さんと一緒の布団に入って寝た事はないのに、アレは体をピッタリと当てている。


 嫌だ。

 健二さんは私の人生を変えてくれた大切な人で、私は今その健二さんの為に旅をしていて。

 

 朝起きたらおはようを言って。

 『準備が出来てますよ』って言って。

 『早く出た方が良いと私の勘が言ってますので』と言って。


 二人で家を出て、二人で旅が始まるはずだった。


 「あなたは……巫女の……」

 「う、動かないで」

 「ひどい……汗だよ」

 「やめて」


 なんで女の神様なの。

 よりにもよってこんな蠱惑的な神様なの。


 因習村の神様って言うのはもっと化け物みたいな神様を想像してたのに。 

 どうしよう。

 もし、百玉様が復活して……健二さんが私の事なんて眼中になくなったら。


 「ハァッ……ハァッ」

 「大丈夫……大丈夫」


 健二さんの大切な神様に、ナイフを向けている。

 私は一体何をしているの?

 間違っているって、頭でも勘でも分かっているのに……感情が抑えられない。


 あろうことかその神様に心配されてる。

 心臓はバクバクと音を鳴らして『早くこの家から出ろ』と警告している。


 「けんぼうは疲れてる……しばらくは起きない」

 「だ、だからッ何?」

 「気持ちの整理……つけていい」


 どうしよう。

 どうしよう、どうしよう。


 私、このナイフをしまわないといけないのに。

 私、早くこの家から出ないといけないのに。


 体が動いてくれない。

 心が追い付いてくれない。


 これは一体……何なの。


 「一つ……聞かせてください」

 「なぁに」

 「あなたの……名前はー」


 それを聞こうとした瞬間の事だった。

 



 ピンポーン。





 インターフォンが鳴った。


 ハッと我に返る。

 さっきまで私の勘は速くこの家を出ろってずっと警告してた。


 そこから考えると、今扉の前に誰かがいるこの状況は……やばい。


 「ど~も。ロキロキ☆ファイナンスで~す。ねぇねぇ、安久田さん、そろそろお金返してくれないかな」


 きっとこの家の人に用があるんだ。

 このままだと、健二さんと私が人を食べているのがバレる。

 急いで逃げないと。


 「後で話は聞かせてください。今は健二さんを抱えて脱出します」

 「おやおや?な~んか逃げようとしてない?」


 瞬間、轟音が鳴り響いた。

 後ろを見れば、正面のドアが強引に破壊されている。


 さっきまでいた借金取りの人がドアを壊したの? 

 噓でしょ?


 「ん?安久田さんいないじゃん。君たちは誰?」


 借金取りは女の人だった。

 髪色は……虹色?

 

 びっくりするぐらい派手な色だけど、不思議と違和感がない。

 この世の物とは思えない程綺麗。


 「へぇ。驚いたなぁ、まさか私と同じ死にかけの神が居るなんて……そっちの女の子も妙な力を持ってるみたいじゃない?」


 体中を冷汗が支配する。

 猛烈に嫌な予感が頭の中を駆け巡った。

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