59 永劫〜サトゥルヌス〜
転移者、37歳、男
前世の死因、事故死
57話の続きです
転移者である俺はこの世界で五回の死を体験し、永却回帰…己の人生が繰り返されている事が解った。
初めは長い夢が正夢になったのかと思ったが確信に変わったのが二度目の死。
それはどの転生者でも同じみたいだが、此方で死んだ事は皆覚えていない、何故か俺だけが記憶を持って繰り返しているようだ。いや、もう一人覚えていそうな人がいたな。
過去だか未来だか…だから俺は自分のこの性質と経験を活かして同胞を救う為この世界を生きると誓った。
「なんだが、こんなのは初めてだ」
直近の生では今より永らえたんだが、六王竜が地へ舞い降りるなんて事はなかった。
そこだけ記憶が無いのか?いや、そんなハズはない…ルフアフィスに勝利した後は拠点に戻って祝杯を挙げて皆で騒ぎ散らしていたのが脳の片隅に残っている。
一体何故…この衝撃、艦に直撃したのか。
考えるのは後にしてブリッジへ通信を行う事にしよう、いやその前に。
「このままじゃ墜とされる。整備も出来ておらず心許ないが力を貸してくれ」
「もちろんです!やりましょうよ!」
「俺達で何とかしないと!」
「すまん……。ブリッジ、俺達を出してくれ!」
艦長は渋っていたけど何とか出撃許可が下りた。
「一番機出るぞ!………任せろ戦友、俺一人じゃないからな」
ルフアフィス討伐の為にフライトユニットに換装していたのが功を制したな、まさか連戦とは思わなかったが。
「俺達の目標は覇王竜だ。一定の距離を保つ事を忘れるなよ」
『『了解』』
過去のデータを見るに奴は近接戦を得意とするようで、近付き過ぎずライフルの威力が落ちない射程圏内を維持しつつエキュレイユ二機と俺のバルディエルの三機がサトゥルヌスを囲み、Eライフルで中距離射撃を行い牽制をかける。
本来、俺の機体は大剣で近接戦を仕掛ける仕様になってるが、予備兵装で持ち出したライフルを左手に、大剣を右手に持って味方機に合わせて攻撃する。
だが効果が薄い…奴の鱗が硬すぎるのか、エキュレイユ用のEライフルは銃身が短くカービンに近い為、この距離では十分な威力が発揮されないのか分からんが当たっても血が流れている様子がない。
前者だろうが、致命打にならなきゃ近付くしかない…だが奴もブレスと斬撃を飛ばして応戦して来ておりこの距離でも隙がない。
他の二人は攻撃を避けられてはいるがいつまで保つか分からん、覚悟を決めるしかないな。
「埒が明かなん、俺が接近するから二人は援護を頼む」
『『了解!』』
ライフルを背面にマウントして両手に大剣を握りしめスラスターを吹かす。
サトゥルヌスは左右から飛んでくるエネルギー砲に目をくれず俺に視線を向け、互いに攻撃体勢を取り、すれ違いざま大剣を振るったのだが。
「空かした!?いや、これは…」
『隊長、隊長ぉぉぉ゛ーあ゛ぁぁっ!!』
瞬間移動…奴は剣が当たる直前で瞬間移動を行い、味方機の目前に現れて機体を引き裂いたのだ。
『貴様!よくも!!』
「待て!!早まるなっ!」
『おぉぉー!!』
もう一人の仲間は我を忘れてライフルを連射しながら突っ込んで行ってしまった。
『仇を!受けろーっ!』
ライフルを捨ててプラズマソードを展開し、サトゥルヌスの背後から一太刀浴びせるも、表面に少しの焦げ跡を残したのみで鱗の硬さを上回る事が出来ず、振り回された尾に当たってしまい吹き飛ばされてしまう。
「大丈夫か!?」
『アラートが鳴ってますが、なんとか』
「なら落ち着くんだ、二人で仕掛けるぞ」
『はい、っ!!』
またしても転移魔法を行使され味方機の目の前へ現れた奴は腕を一振り。
「避けろーっ!!」
咄嗟に盾を構えた仲間、横薙ぎの爪撃。
盾は意味をなさず、機体は分解され誘爆を引き起こして空中で散って行く。
みすみす仲間を死なせるとは隊長失格だ…せめて一矢報いてやる。
「バルディエル、オーバードライブ!」
機体に大きな負荷が掛かるから緊急時以外使用するなと言われているリミッター解除、此処で奴に殺られるより整備長に怒られる方がマシだ。
「行くぞ」
リミッターを外した事により得られる速度は1.5倍、パワーもその分上乗せされるが、じゃじゃ馬になっちまうのが欠点だ。
「だが今回は乗りこなしてみせる」
奴は転移魔法を使わず、ブレスと斬撃波で近付く俺を牽制している。
避けられない斬撃波は大剣で受け止め、ブレスは流してさらに、もっと、射程圏内まで速度を落とさずに接近して俺は大剣を、サトゥルヌスは付与魔法で光っている爪を振るった。
一撃目は互いに弾き、二撃目も同様だが奴の姿勢が少し崩れた。
勝機と思った俺は胸部のバルカンを顔面に喰らわして怯みを誘い、顔を背けた所に三撃目を。ガキンッ…
「これでもダメか」
大剣は爪で防がれて中心部から折れてしまった…コーティングされてても衝撃いや、奴の爪には敵わなかったようだ。
勝ち誇ったツラに見え腹が立つな…今回は此処までか。
否、仇討ちも出来てないのに諦めるのか。
振るわれるサトゥルヌスの腕、俺は折れた大剣を捨てて腰にマウントしているヒートナイフを逆手で持ち、懐へ入って左腕を振り上げる。
一発でナイフは砕けてしまったけど、奴の腕を切り離したぞ。
「見たか。人間の底力」
ここまでが俺の出来る足掻き、サトゥルヌスの反撃で牙を立てられた頭部は破壊され、モニターが死んだ中で爪撃が来ると予感した俺は腕で防御体勢を取ると、直後に衝撃が走って落下していくのが身を感じて分かった。
あぁ、切り裂かれたんだと。
…
……
………
「……生きてるのか…」
自重で地面に叩き付けられた後気を失っていたようだ。
「奴は…艦はどうなってるんだ……」
スイッチに反応しないハッチをこじ開けて外へ出た俺の目に移ったのは、コクピット前面に引き裂かれた後が残る愛機と煙を吹いて不時着している母艦だった。
『ザ…ザ……るなら………聞こえ…か……生きてるなら…くれ』
通信、艦の連中も無事だと確信し胸を撫で下ろした。
しかし、奴は何故俺達にトドメを刺さずに消えたのだろう…腕の一本で引くような相手ではないのに。
疑問は残るが生きてる事に感謝して艦へ歩みを進めた。
「今まで有難うよ、相棒」
『MMAS-010Cc バルディエルTypeC+A』
加速力なら本来背負っているバックパックの方が上だったが滞空時間が短い弱点があった為、空戦用に付け替え、Eライフルを持たせて射撃能力も上げた。
一部の機種に備えられたオーバードライブ機能は、機体と人員保護を目的にして付いているリミッターを外して機体スペックをカタログ値(限界性能)まで持っていく機能だが、関節駆動部やスラスター部に大きな負担が掛かるので奥の手とされる。
今回の戦闘で大破したので乗り捨てられる事になった。




