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夢幻への再臨  作者: 柴光
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58 冠雪竜〜ネーヴェドラゴン〜

転生者、14歳、男

前世の死因、自殺

 




 引き篭もりだった僕は引出し屋に無理矢理家から追い出され、連れて行かれた先の施設と言う名のタコ部屋から逃げ出して線路を見つけて……良い人生でも最後でも無かった僕を女神は助けてくれた。

 新しい人生は真面目に生きようと決意してこの世界に転生し、貴族として産まれて愛されて育ち早14年。

 来年から学院に通う予定なんだけど、家の習わしとして一年間、外で修行を積まなければならない…なんて迷惑なと思っていたけど、今世でのお父様お母様に自分がどれだけ逞しくなったか見てもらいたい、頼れる息子になりたいとの思いが勝った。

 そして両親や家の皆に必ず無事に帰って来る事を伝えてエルフのメイド兼師匠との二人旅が始まったのが三ヶ月前。


「今日の訓練は此処までにして宿へ戻りましょう」

「はい、有難うございました」

「いつも言っていますが、敬語は使わないで下さい」

「いえ、僕の師匠ですし、何から何まで頼ってばかりなのにそーいう訳にもいきません」

「本当に頑固な御方ですね」


 今僕達は領地から遠く離れた街に滞在し、魔物狩りや稽古をつけてもらい修行に励んでいる。


「師匠、明日の予定は?」

「そうですね、そろそろこの街も出て次を目指そうかと思いますが」

「此処に来てまだ四日ですよ?もう山越えですか?」

「はい、坊ちゃまの実力も予定より早く上がっていますので先に進みたいんですが、いかがなさいます?」


 この街を出れば次の人里までは山を越えなければならない。

 師匠の話しだと三日間野宿の覚悟が必要だと、それでも。


「僕は…僕ももっと強くなりたいです」

「分かりました。では明日、朝食後出発致しましょう」

「はい!」


 街を出て一日目、気合は十分あったけどこんなにしんどいとは思わなかった…勾配がキツい山道の挙句、出てくる魔物が岩に手が生えた『ガントロック』や僕達の倍デカい岩を纏った巨人『ルペスギガス』が行く手を阻む。

 コイツ等はスピードが遅くて攻撃も避けやすいんだけど硬くて僕の剣が通らない。


「良く狙って下さい。この様に関節や隙間に刃を入れればそれ程苦戦する相手でもありません」


 師匠はガントロックの腕の付け根、ルペスギガスの岩の隙間を的確に狙って剣を突き刺して倒している。

 しかも楽々と…


「ふぅ…片付きましたね」

「流石です師匠。僕も師匠みたく上手く立ち回れれば良いんですけどね」

「焦る必要はありません、ゆっくり的確にですよ。それに魔法で活路を作っても良いんですよ」


 そう、僕は剣術より魔法の方が得意なんだけど、どっちも秀でた者になりたいから今は剣での対処が望ましいけど。


「あの、魔法でって言われても具体的にどんな魔法ならあの防御力を突破出来るのでしょうか?」

「?」

「ですからどの魔法が有効的なんですか?」

「魔法ならなんでも可能だと思いますよ。例えば剣に付与魔法を掛けてズバッとイッちゃうとか」


 あぁ~そうでした…この師匠、下級魔法でもとんでもない威力が出せる人だった。

 自分で考えなければならない…大きな衝撃を与えるとか…岩同士ぶつけて砕くとか…


「また来ますよ」

「あ、はい」

「ルペスギガス二体、今度はご自分で退治してみて下さい」

「やってみます」


 大きな衝撃…炎じゃ表面だけ…氷なら或いは…そうか、雷だ!


「『ケラウノスショット』!」


 剣を媒介に雷撃弾を撃ち出して一体のルペスギガスの胸に命中した。

 ソレは内部から爆発を起こして爆ぜて消え去った。


「やりましたね!その調子です」

「はい!二体目も行きます!」


 二体目は師匠が言っていた付与魔法、最大まで魔力を練り上げたエンチャント(炎)を剣に付与して渾身の一突きを。


「…やった。やりましたよ師匠!」

「はい!お見事です」

「有難うございます、師匠のお陰です」

「私は何も…っ!!何か大きいのが来ます」


 師匠が空を見上げ、僕もその方向に視線を向けた。


「あれは…ドラゴンですか?」

「『冠雪竜ネーヴェドラゴン』です…何故ココにあんなのが」

「どうしますか?」

「向こうはもうこっちを認識しているみたいなので殺るしかないですね」

「…分かりました」

「大丈夫です。上級種なら何とか渡り合えますんで。ブレス来ますよ」


 予期せぬ遭遇だったけど、前に出て防御魔法で僕を守ってくれてる師匠の背中は大きかった。


「坊ちゃまに指一本触れさせません!」


 師匠は普段愛用してる両刃剣とは別に魔法でもう一本の光剣を造り出して二刀流で挑む。

 空に魔法陣の足場『クライムフォールド』を浮かべて登って行き、ドラゴンに斬りかかる。

 師匠の攻撃を避けたネーヴェドラゴンは氷魔法を放ち、師匠は氷魔法を炎魔法で相殺させた。


「流石上級種ですね、私の炎と相討ちとは」

「…上級種?」


 ドラゴンが喋った…いや、珍しい事じゃないってのは分かってるんだけど初めて喋る魔物に遭ったから驚いた。


「上級だのなんだのと人間共は何を見て判断している」

「さぁ分かりません。ギルドが昔に定義したランクなので」

「はっ、片腹痛いわ。アヤツが最上級で我が上級などと笑わせてくれる」


 アヤツ?アイツは別のドラゴンの事を言ってるんだろうけど。

 僕も討伐レベルがSの中でも上級や最上級に別れているのは何でだろうとは疑問に思っていた。

 この戦闘が終わったら聞いてみよう、この前思った時に聞かなかったし。


「師匠!僕も援護します!ケラウノスショット!!」

「ダメです!!」


 僕の魔法はドラゴンに当たったけど此方を見下ろすだけでダメージなんて受けてないのが見て取れる。


「矮小の分際で」

「え?」


 辺り一面がヒンヤリした空気に包まれたと思ったのも一瞬の事、僕は突き飛ばされ尻餅を付いた。

 戻ってきた師匠が僕を魔法範囲外に飛ばしてくれたみたいだけど、代わりに師匠の足が周囲と一緒に凍らされていた。


「師匠!!」

「大丈夫です…この程度」

「先程のようには行くまいて」


 足元に魔法を打とうとしてる師匠、師匠に向けて魔法を放とうとしているネーヴェドラゴン。

 師匠の『ファイアストーム』が先に展開されたけど、ネーヴェドラゴンの『コンジェラジオル』は炎の渦をも凍らせて、中心にいた師匠は「逃げて」の言葉を残して…呼べども呼べども返事は返って来なかった。

 初級魔法でも絶大な威力を誇る師匠が敗けた…上級種ってこんなにも格が違うのか。


「森人と共に滅びよ」


 ドラゴンの開いた口内に光りが凝縮されていく、ブレスだ。


「師匠はまだ死んでない!僕だって!ケラウノスショット!ケラウノスショット!!ケラウノスショット!!!ケラウノス…ショット」


 魔力が続く限り、力の限り撃ちまくって撃ちまくって撃ちまくったんだけど…ダメみたい。

 すみません、師匠…僕が余計な事をしなければ…ごめんなさい。


 ブレスは凍った師匠を砕き、僕を焼き焦がした。





『ガントロック』

討伐レベルC

体力B 攻撃力C 速力E

 全長1.5メーター、丸っこい岩に腕が生えた魔物。

殴ったり転がったりして攻撃してくる。


『ルペスギガス』

討伐レベルB

体力B 攻撃力B 速力C

 全長三メーター以上、岩の表皮に覆われた巨人。

 土魔法を使用するも、基本は殴る蹴るしかしてこないが、巨体故に一撃が重い。


『ネーヴェドラゴン』

討伐レベルA

体力A 攻撃力A 速力A

 全長15メーター、氷のように透き通った水色の鱗を持つ西竜。

 冠雪竜とも呼ばれ、上級種に位置するものの実力が最上級種に劣っておらず、近年では竜種の討伐レベル及び階級の見直しが必要だと意見が出ている。









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