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夢幻への再臨  作者: 柴光
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53 苦悩〜キョウダイ〜

転移者、16歳、男

前世の死因、事故死

 



「お前の探し物はココに居るはずだ」


 僕の恩人であるオジさんが手掛かりを持ってきてくれたみたいだ。


「隣の国に居たんだ…どおりで見つからないわけだね。ありがとう、僕行くよ」

「…やはり俺も付いて行こうか?」

「大丈夫、必ず見つけてくるよ」

「そうか…終わったら帰って来いよ。美味いもん用意しといてやるからな」

「ありがとうオジさん」


 街の門まで一緒に来てくれたオジさんは僕の姿が見えなくなるまでずっと立っていてくれた。


「あれから五年も経ったんだ」


 この世界に送られた時、僕は一人じゃなかったんだ。

 姉ちゃん…姉と二人でこっちの世界へ送られてすぐさま離れ離れになったんだよ。

 一人で震えていた僕を助けてココまで育ててくれたのがオジさんだ。

 あの人が居なかったら僕は何も分からず知らずに二度目の死を体験する事になっていたと思う。

 見ず知らずの僕にこの世界の生き方を教えてくれただけじゃなく、離れ離れになった姉の居所まで突き止めてくれた…返しきれない恩があるんだ、全てを終わらせて返さないといけない。


 数日かけて隣国に近い街へ辿り着き、オジさんの知り合いの商人に同行させてもらって国境の警備も難なく通り抜けられ、お礼を言って自分が目指している街へ向かった。


「この辺りなんだけど…すみません、僕と同じ髪色の女の人って見たことありますか?」


 露店のおばさんに聞いてみると。


「今はあっちの森で狩りしてるはずだよ、あんたによく似た子だけど姉弟かい?」

「はい、姉なんです。五年ぶりに会うんですが」

「そうかいそうかい、なら早く会いに行ってあげな」

「ありがとうございます」


 その場を後にしておばさんが指を差した西門先の森へと訪れてみた。

 外から見るより深い森の先から戦闘らしき音がする。

 一歩進む事に心臓が痛いくらい速くなっていく。

 痛い…痛い…でも、もうすぐ…すぐそこに。


「姉ちゃん…」


 木々の合間から見えた『銀猪シルバーボア』と女神の剣を振るって戦っている女性、揺れる黒髪の後ろ姿に思わず声が漏れてしまう。

 突進してくる銀猪に剣を突き立てトドメを刺した女性が顔に付着した血を拭って此方を振り向いた。


「誰?」


 その顔はまさしく姉であった。


「僕だよ、姉ちゃん」


 次の言葉に僕は驚きを隠せず、再会の喜びよりも怒りが先に込み上げてきた。


「あんた、生きてたんだ」

「…そうだよ、姉ちゃん」


 姉弟仲は元々良い方ではなかったけど、こんな言われようをされるなんてやっぱりあの時の事はわざとだったんだ。


「驚いたよ。あの状況で生き残れるなんて」


 あの時、僕達がコッチに送られてすぐの時、ホワイトファングに襲われそうになった時!この人は僕を囮にして逃げたんだ!!オジさんが居たからこそ拾えた命なんだ!


「やっぱりあの時はわざとだったんだ」

「そうよ。前世であんたを迎えに行かなきゃ私は死ななかったのに。あんたのせいでこんな世界に落とされちゃったんだからね」

「だからってやって良いことなの!?」

「あんたが生まれた時から…私は嫌いだったの…」

「え?」

「あんたが嫌いだったんだよ!!」


 突如として剣を握りしめて駆け寄ってくる姉。

 僕も咄嗟に女神の剣を構えて受け止めて鍔迫り合いが始まる。


「話し合う気もないのっ!?姉ちゃん!」

「そんなものはない!あんたさえ居なければ!!」


 幾度となく刃が交えては弾かれる。


「姉ちゃん!!」

「姉と呼ぶなっ!!出来損ないがっ!!」


 エンチャントで風を纏った剣先が僕の顔や身体を掠めていく。

 辛うじて避けている僕に、姉の猛攻は止まらずにいた。

 足を落ち葉で滑らせてバランスが崩れそうになった僕を見て一段と声が大きくなる。


「あんたさえ産まれてこなければ!私は幸せだったんだ!!」


 大きく刃を振り上げた姉の表情は憎悪に満ちている。


「ごめん」…ザクッ………


 刃を伝って滴り落ちる姉の血、振り降ろされるよりも先に、僕の剣先は姉の心臓を貫いていた。


「か…はぁ…」

「ごめん、姉ちゃん…」


 剣を引き抜き後退ると、姉はうつ伏せに倒れてひと言「本当に憎い」と呟いて息を引き取った。

「ただ僕は話し合いがしたかった。あの時の復讐なんて考えてなかった。ごめんねの言葉が聞きたかっただけなのに。なんで…なんでこうなるんだよ」


 亡骸となった姉はもう何も喋ることはなかった。


「何となく…親が姉ちゃんに冷たく当たっているのは知ってた。でも…僕にどうしろって言うのさ!! 僕だって…僕だって…」


 涙が溢れてくる。

 この世界でたった二人の家族だったのに。


「僕が会いに来なければ良かったのかな…向こうよりもまともな暮らしが出来てたのかな…教えてよ…ねぇ、神様…貴女は僕達に何をして欲しかったのかな」


 懐から取り出した一発の弾丸が入った小さな拳銃を自分の口に運んで…引き金を引いた。






『シルバーボア』

討伐レベルC〜D

体力C〜D 攻撃力C〜D 速力C

 全長2.5メーター程の銀色の毛をもつ魔猪。

魔石を有する為魔物に分類されるが、肉が美味く、美しい色の毛皮も使い勝手が良いので人間から重宝されている。

 たまに一回り大きいメス(討伐レベルC)がいる。










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