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夢幻への再臨  作者: 柴光
55/55

52 半馬〜ツイホウシャ〜

続きです

 




「次が最深部なんだよね?」

「そうダヨ。その先を見透せないないから終わりだと思うヨ」

「魔力もスタミナも十分あるし、行くだけ行ってみよう」


 召喚契約を結ぶと互いの魔力が合わさるみたいで私の無尽蔵に溢れ出る魔力により、パスティは魔力弾の弾切れも心配ないし、スタミナの消費も少なくてダンジョンに入ってからずっと召喚しっぱなしでもまだ余裕を感じる。

 スタミナがあまり持っていかれないのは多分獣人だからなんだと思う。

 上級のドラゴンなんてすこぶる吸われるみたいだし、長時間維持できる人が凄いよ。

 その代わりに召喚獣の恩恵(何かしらのステータスアップ)が得られるみたいだけどね。


「っと、早速お出ましだね」

「先手必勝ダヨ」


 馬の顔を持つ人型の『グラシュティン』達が行く手を阻んできたけど、隣でバズーカを構えたパスティは引金を引いてエネルギー砲を発射させた。

 盾で防ごうとしていた者も居たけど、ソイツ諸共敵全てが消し飛んでいった。


「お見事」


 それにしても下くらいは履いて欲しい…なんでフルチンなのさ…目のやり場に困るんだけど。

 とまぁ、ウチらの前には全裸の馬男が次々と現れては倒されて行き、ドロップ品の黒いタテガミを拾いながら先に進んでいると。


「主人、構えて」

「う、うん!」

「来るヨ」


 猛スピードで近付いてくる首のない馬、鑑定結果は『首切れ馬』…そのまんまじゃん。

 所詮は馬でしょと思っていたけど、ライフルの魔力弾を物ともせずに突っ込んでくる。


「効いてないよ!?」

「魔力耐性が高いみたいダヨ…主人、足元を」

「任せて!」


 言おうとしてる事はわかる、こうするんでしょっと、首切れ馬との間合いに氷の膜『イヴェールロード』を張ってみせる。


「流石ダヨ」


 脚を滑らせて転がる首切れ馬、左手にナイフを握って飛び掛かるパスティ、ザシュッ…起き上がろうと踠いている所へ真上から心臓(魔石)部分に一突き。

 深くまで刺さったナイフを引き抜いて直ぐに黒い塵へと化して首切れ馬はドロップ品だけを残して消えていく。


「やったね」

「ウチ等の力なら余裕ダヨ。これいる?」


 飛躍して戻ってきたパスティの手には蹄が握られている。


「一応…タテガミもコレも高値で売れるかもしんないしね」


 何に使えるのか分かんないけど冒険者ギルドなら何でも買い取ってくれるしね。


 それからも幾度となくグラシュティンと首切れ馬との戦闘が行われ、ようやくこのダンジョンのボス部屋の前へと辿り着いた。

 その扉を守るかのように六匹の半人半馬の『ケンタウロス』が盾と槍を構えて待ち構えている。


「もう向こうも気付いてるみたいダヨ」

「うん」

「援護、お願いしたヨ」

「分かった!」


 他のボス部屋みたくこの空間も広い…パスティに目で合図を送りながら無数の氷柱を落とす魔法を発動して牽制をかけるも、一匹のケンタウロスが放った炎の渦『ファイアストーム』によって氷柱は消えてしまい、別のケンタウロス二匹が此方に向けて風の刃『ヴァンブレード』と土の槍『ソイルランス』を飛ばしてくるのが視界に入った。


「グラースシルト!」


 私は咄嗟に氷の壁を展開するも、パスティに「ダメっ!」と覆いかぶさられる。


 シュンッ…バリンッ…

 土の槍は氷の壁に阻まれたけど風の刃は壁を切り裂いて私達の頭上を掠め飛んでいく。


「あ…ありがとう」

「思った以上に手強いヨ…兵士達を喚ぶから主人は自分の身を守ってるんダヨ」

「うん、お願い」


 前世の兎よりも一回り大きい兎を数十匹喚び出したパスティはライフル片手に高速戦闘を繰り広げる。

 足元に散った兎達を追い払うと、一匹のケンタウロスが水の壁『ウォーターウォール』を、もう一匹が闇へ引きずり込む魔法『ザラームホール』を展開させて近付けまいとしていた。

 その隙を狙ってパスティは一匹、二匹とライフルと近接戦のナイフで倒し、兎の兵に脚を止められていた二匹の直線になる位置へ飛んでバズーカのエネルギー砲を浴びせて同時に吹き飛ばして見せてくれた。


「後二匹…頑張って」


 随分と数を減らさせしまった兎達だけど十数匹はおり、その子達皆で一匹を相手にしてパスティはもう一匹に集中している。

 見てて分かる…あのケンタウロスが強い事が。

 他と違って動きが明らかに違い、魔力弾は全て盾で防がれ、近付こうとするパスティの動きに合わせて槍の刃先が向けられて思うように接近も出来ないでいる。

 飛び交う光りの矢『ライトヴェロス』と魔力弾、防ぎ躱しを両者繰り広げているのを見守る事しか出来ない自分に何か出来ないか考えている時、光魔法の眩さが薄暗いダンジョンの広間を照らした。


「まぶし…目眩まし!?」


 光りが収まって最初に目にしたのは二匹のケンタウロスに前後から腹部を貫かれて持ち上げられているパスティだった。


「パスティーっ!!」


 見当たらない兎達…息が絶え絶えなパスティ…敗けたの??

 敗北の文字が頭を過ぎる。


「主人…」


 微かに聞こえたパスティの声。

 互いの目が合う。

 そして互いに頷いた。


「ごめん…コンジェラジオルッ!!」


 敵を凍らせて動きを封じる魔法をパスティを中心に発動させる。

 馬の下半身から凍らされて身動きが取れずに足掻くケンタウロス達。

 手放したライフルの代わりにパスティの手にはコンカッショングレネードが握られており、私に「また後で」と消えそうな声が届く。


 ドォーンッと響く爆発音、咄嗟に頭を守ってしゃがみ込む。

 土煙と硝煙に混じって光りの粒子が舞っているのが目に入って、「ありがとう…ごめんね。還ってゆっくり休んでね」と声をかけた。


「私一人じゃ引き返すしかないよ…パスティが還ってくるまで冒険業も休業かな」


 散らばったドロップ品を拾って地上を目指して歩き始める。





『グラシュティン』

討伐レベルC

体力C 攻撃力C 速力C+

 全長二メーター程の馬の頭部を持つ人型の魔物。

 盾と片手剣を持っているものの、防具どころか服すら纏っていない。

 ドロップ品は黒いタテガミ。


『首切れ馬』

討伐レベルB

体力C 攻撃力B 速力B

 体高1.7メーター、首のない白い馬。

 脚が速く、その自慢の脚による格闘戦を好む。魔力耐性が高いのも特徴。

 ドロップ品は蹄。


『ケンタウロス』

討伐レベルB〜

体力B 攻撃力B〜 速力B

 全高三メーター以上ある半人半馬で、槍と盾に加えて自身が修得している魔法を扱う。

 このダンジョンのボスであるファントム『ケイローン』を守護する為に最後の広間で冒険者を待ち構えている。

 殆どのケンタウロスは、人語を理解も発する事もしない。

 ドロップ品は盾の中央に埋め込まれていた拳大のガーネット。









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