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夢幻への再臨  作者: 柴光
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54 襲撃〜ユピテル〜

転移者、40歳、男

前世の死因、戦死

 




 結構寝た感覚があったからまだ日が昇らない夜明け前だろう、外が騒がしくて目が覚めた。


「おい!早く起きろ!ドラゴンだ!!」


 自室の入口を怒鳴りながら入ってきた仲間が冗談めいたことを言うじゃないか。


「ドラゴン?あんな頭が良い魔物がココに来るわけないだろ」


 此処は救済ボランティアの拠点の一つ、廃村を建て直して作り上げた場所であり、強者が集っているというのに。

 そんな所に来るなんて下級とか知性の低いドラゴンだろうと思っていたら。


「『神王竜ユピテル』なんだよ…来たのが」


 これまた寝起きには悪い言葉だ。


深淵クロの六王竜が何の用だよ」

「知るかよ!お前も早く準備しろ」

「あぁ」


 自分の目で確かめるまで信じてはいなかった。

 深淵の六王竜と呼ばれ語りづかれる伝説の竜達…古の時代に天使と共に地上を無に還そうとしたらしいが。


「あれが…ユピテルか」


 六王竜の一体であるユピテル、深淵クロと呼ばれるだけあって漆黒の鱗を持つ西竜が白み始めた空を舞っていた。


「タイミングが悪すぎる」


 此処にいる俺達も冒険者でいうAランク以上の実力がある者達ばかりだが、対抗出来そうな召喚士達は皆『厄災の三大竜』の一柱ルフアフィスを狩るために出払っている。

 こんな時に襲ってくるとは誰かが意図を引いてるんじゃねぇかと思ってしまう。


「おい!ボーッとしてないで交戦しろ!」

「すまん」


 女神の剣を取り出して構えたは良いが、空を飛んでるんじゃ攻撃手段が限られる。

 周りの仲間達は魔法を放っているものの、ユピテルは回避もせず翼で受け止めて弾いている。


「大したダメージを与えられていないようだな」

「って言うかノーダメだ」


 仲間の言う通りだ、上級魔法を喰らっても表面から血が滲み出てる様子もない。

 それどころか…


「来るぞ!!」


 誰かが叫び、見上げていた空は浮かび上がった幾つもの魔法陣で覆われ、地上へ向けて赤く光る光線群『ホライゾンファーレ』が放たれた。

 数人の魔法使いが防壁を展開してくれたが、中級程度の防壁魔法では最上級魔法を止められる訳もなく次々と打ち砕かれていく。

 俺も上級光魔法『セイクリッドフィールド』で近くの仲間共々守りに徹してはいるが。


「なんて強大な力だ…」


 止むことのない光線の雨が徐々に光の結界を削っていく。


「このままでは破られる」

「おい、止むぞ」


 破られる既の所で猛攻が治まった。

 発動時間が過ぎたのかと上を向いていた視線を下に落として理由が解った…俺達二人以外誰も立っている者がいなかったのだ。

 住める程度には直した家々も存在が無かったかのように跡形も無く消し飛んでいた。


「終わりだ…」


 そう仲間が呟く。


「二人じゃあ…どうしようもねぇな」


 俺も呟くと、ユピテルはブレスを放とうとして俺達の方へ大口を開け構えている。


「最後は派手に散るか」

「賛成だ」


 俺達は女神の剣に付与魔法を掛けて走りだした。

 放たれるブレスを左右に別れて間一髪の所で避けてみせ、互いに得意としている斬撃波を打ち込んでみるも。


「やはり効果ないな」


 仲間の発言で俺も頷いて「鱗の一枚くらい落としたかったな」と続ける。

 死を覚悟した…もうどうしようもないと、見てみろアレ…次の魔法が飛んでくるぞ、と本当に終わりだと覚悟していた時、希望が訪れた。


「煩わしい」


 鎌状の腕を持つ黒紫色の西竜姿の『冥庭竜アスカラポスドラゴン』がユピテルの横っ面に一撃のブレスを喰らわすのを見た俺は歓喜に震えた。


「煩わしいぞ人間。此奴の相手、高くつくぞ」


 ユピテルと睨み合っていた冥庭竜が決まった台詞を吐く。

 俺が実際に会ったのは初めてだが、いつも高くつく等と言っては助けてくれて何も要求せずに去っていくと聞いている。


「助けに来てくれたのか?」

「多分」


 仲間の問いにイエスとは答えられないのも信用するに値するか分からないからだ。


「おい人間共よ。煉獄の娘を従えた者はおらんのか?」

「煉獄の娘?あぁ、リーダーか。ココを預かっているのは別の人だから滅多に来ないな」

「そうか…なら伝えておくがいい。此奴(六王竜達)等の名付けに冥王達が難色を示しているとな」

「は?なんだよそれ」


 それだけ言い残して二体は空高く上昇していく。


「始まった…」

「見届けるしかないな」


 二体の凄まじい魔法が交差しながらまだ仄暗い空を明るく照らし、ブレスが薄い雲を薙ぎ払っている。

 攻防が続いている中、ユピテルの周りに魔法陣が展開されて先程地上を焼き払った最上級魔法のホライゾンファーレが再び放たれ、冥庭竜は赤い光線の隙間を縫うように飛んで接近して行き、鎌状の腕ですれ違いざまにソイツの首へ一撃与えて振り返った冥庭竜は鳥に似た無数の紫の光弾魔法『グラウクスフロック』を放ち、ユピテルの背面に浴びせた。


「やったのか!?」


 硝煙が上がる中、煙に混じって光りの粒子が舞っている…何故だ?召喚獣が墜ちた時の粒子と同じだ…なら奴も誰かが召喚したモノだと言うのか…


「終わったぞ、支払いは後で受け取るとしよう。さらばだ人間共よ」


 ユピテルは消失し、冥庭竜は出現した魔法陣の中へ消えて行ってしまった。

 ソレを見届けた俺は口を開く。


「終わったのか…残ったのは俺達だけか」

「そうみたいだな。弔う骨すら残ってねぇな」

「あぁ…本拠地に帰るしかないな」

「そうするか」





『神王竜』

討伐レベル?

ステータス?

 全長20メーター、ユピテルとも呼ばれる黒鉄の翼をもつ西竜型の最上級種。

 かつて地上へ攻め入ってきた深淵の六王竜の一体で、現在は召喚獣として再び戻ってきた。

 元々は天界の竜であったが、天使の堕落で共に魔界の竜となった。

 ステータス上では厄災の三大竜に劣るも、人間にとっては脅威である事には変わらない。

 魔界の王達はコイツ等のネーミングに苦言を呈したいと常々思っている。


『冥庭竜』

討伐レベル?

ステータス?

 全長16メーター、鎌状の腕に黒紫色の西竜で冥王の側近の一体。

 六王竜を上回る実力を有するようだが、相性が良かったのかもしれない。

 時々人間の味方をしてくれるが理由は定かではない。












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