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夢幻への再臨  作者: 柴光
53/55

50 弩蜘蛛〜マンイーター〜

転移者、18歳、男

前世の死因、溺死

 




 こちらの世界に送られて一年は経っただろうか。

 知識も冒険者としての腕も身につき、新たな地を目指して慣れ親しんだ街を後に歩み始めていた。

 今はギルドから貰った地図を確認しながら森の中の一本道を進んでいる所だが、街から結構離れた距離にある為か襲ってくる魔物がやけに多くて足止めを食らっている。


「こんな事なら付いてきてくれる仲間を募集するべきだった。まぁ、今更嘆いても仕方ないんだけど」


 幸い出てくる魔物が俺の得意とする炎魔法を弱点とする蛾の『ラージファレーナ』や、植物型の『トランカータ』ばかりで助かっている。

 時たま出くわすオーク…こっちじゃ『ウルク』だったな、ソイツが肉厚でダメージを与え辛く厄介なんだよなぁ…って、言ってる傍からガサガサと草むらを掻き分けて近付いて来てやがる。


「もうこっちは疲れてんだよ!森ごと焼き払ったって良いんだぜ!?」


 両刃の剣を構えてエンチャント(炎)を纏わせて、街道に出てくるタイミングで振りかかる。

 ウルクは手にした丸太で防ごうとしていたが、この剣の斬れ味は丸太如きじゃ止められない。

 前の俺ならまっ二つに出来なかっただろうが、今は違う。丸太や棍棒なんかで防げると思うなよ。


「甘いんだよ!魔物風情がっ!」


 はぁはぁはぁ…殺ったか。

 息は上がってしまうが、丸太ごとウルクを斬り裂いてみせた。


「はぁ…本体の方が硬いとか、どんだけ骨太なんだよ。あ~、もう日ぃ暮れてきたしよぉ」


 暗くなる前に森を出たかったんだけどな、太陽の光りが僅かに差す森深く続く道を眺めて諦めの気持ちが勝った。

 今日はこんなかで夜営するしかないのかと、歩みを進めながら思っていると、街道から逸れた獣道の先に朽ち果てる寸前の小屋が目についた。


「あんな所に…贅沢は言ってらんないな。屋根があるだけマシだと思おう」


 膝下辺りまで茂った草木を踏みながら小屋へ向かっていた時だった。

 メキメキっと音が聞こえた瞬間、俺の身体は宙を舞っていた…いや、地面の中に落ちているのだ。

 あまりにも一瞬の出来事で頭が追い付いていない状態で深く暗い穴の底へと叩き付けられる。


 ドスンッ…「痛っ…息が」


 背中から落ちた為か息が出来ない。

 一旦体勢を整えねば。

 なんでこんな所に大穴が開いているんだ。

 何故俺がこんな目に合わないといけない?

 色んな思考がよぎって行き、落ち着きを取り戻す寸前だった。

 カラカラン、パキッ…動く度に身体の下から音がし、何か硬く脆いモノが敷かれている…


「フェーゴ」


 火力を抑えた炎魔法を唱え、掌に創り出して辺りを照らし出す。

 敷き詰められたモノの正体が露わになり、俺は驚いて声を漏らした。


「骨?これ全部が!?」


 何の骨だか分からないけど人間サイズだという事は分かる。

 コイツ等も落ちてきて登れずに力尽きたのかと考えこんでいると、枯れ草に混じって太い糸が身体にひっ付いてるのに気付いた。


「糸…蜘蛛の糸かコレ…」


 粘着性の高い糸、元の世界でよく顔に引っかかってきたアレと同じ感触…一体どこで?


「っ!?」


 自分の身体を直視していた視界の隅で光る何かが一瞬映し出され、掌の上でメラメラと燃える火をその方向に向けた瞬間だった。

 瞬きの間、飛び掛かってきたソレは俺に覆い被さり、胴体に太く鋭い牙を突き立てられて液体が胎内に流れ込んでくる感覚が全身を襲う。


 不思議と刺された痛みはない…

 痛くはないが力が一切入らない…

 なんで気付かなかったんだ…

 こんなにもデカい魔蟲に…


 枯れ草に引火した弱々しい火の灯りで、魔蟲が持つ幾つもの眼に反射した歪んだ俺の顔が映る。

 遠退く意識の中で思った…

 此処に来なければ良かったと。

 あの街で楽しく暮らしていれば良かったと。





『ラージファレーナ』

討伐レベルD

体力D 攻撃力D 速力C

 全長二メーターはあるデカい蛾。

 毒(幻覚作用)のある鱗粉を吸い込まなければ駆け出しの冒険者でも倒せる。


『ウルク』

討伐レベルC〜D

体力C+ 攻撃力C〜D 速力D

 全長二メーター程の所謂オーク。

 筋肉質で骨太の為、手練れでもなければ一太刀浴びせるだけじゃ致命傷を負わせる事が出来ない。

 棍棒や丸太を用いて攻撃してくる。


『マンイーター』

討伐レベルB

体力B 攻撃力B 速力B(瞬発力はA並み)

 全長四メーター、地中に巣を作り獲物を待ち構える土蜘蛛タイプの魔蟲。

 糸と草木や土で落とし穴状の巣に蓋をし、落ちてきた獲物に毒液を注入して弱らせてから捕食する。

 ほぼ完璧に気配を断ち切れる能力を有するのが厄介とされている。

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