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夢幻への再臨  作者: 柴光
41/55

40 生物兵器〜カニバリズム〜

転移者、26歳、男

前世の死因、事故死

 




「遂に成功したか」

「はい。ロメロを媒体にしたお陰で思っていたよりも早く」

「良くやった。準備が整い次第実行に移すと奴等に伝えろ」

「はっ」




 国境の平原に隣接するこの街はいつ隣国から攻め入られるか油断ならない状況下にあった。

 そんな街に越してきてしまったのが運の尽きだった…だってそん時はもう戦争は終わってたし平和が続くと思うじゃんか。

 ところがどっこい、お隣さんの王様が代わって程なくしてからまた戦争が始まったんだよ。せっかくこの街が気に入って住み始めたのにさ。

 気に入ってるからこそ軍属でなくとも防衛には参加するけど、攻めて来たのは開戦直後の一度だけで後は此方側が攻め入って国境周辺の街を自軍の領土へ変えていき優勢を保っていたみたいだが、南側の戦闘じゃあ前回、前々回と敗北を喫していたようだ。

 国境中心部のこの街は前に召喚士が裏切って痛手を負ったが、それ以外だと最近では大きな損失はないのが幸いか。


 今日も平凡な一日を過ごして何事もなく終わり、床に就ついて後は寝入るだけだった。

 突如として街中に敵襲を知らせる警報が鳴り響いた。

 俺は跳ね起きて窓から外を確認してみると、月明かりに照らされた飛行機が街に向かって飛んできていた。

 高度が低いのか、下から放たれる魔法が機体に命中しているのが見受けられるが、止まる気配はない。


「あれは輸送機ってやつか?隣国が攻めてきたのか?」


 今この街には召喚士はいない、あれ一機墜とすにしても苦戦を強いられるだろう。

 俺も魔法使いだ、現場に行って手伝わなければと着替えている最中、爆発音が聞こえて再び外を見やると、輸送機の姿が確認出来ない。

 代わりに外壁の外から火の手が上がっているのが見える…街に入られる前に墜ちたのかと一安心し、取り敢えず近くまで向かってみることにした。


「何が起こっているんだ…」


 外壁近くまで来たのは良いが、目の前に広がるのは映画で見た光景そのものだった。

 墜落した輸送機は門にぶち当たり大穴を開け、駆け付けた兵や野次馬に来ていた市民にロメロが襲いかかっている…何故ロメロがここに?隣国が運んできたに違いないのだが、明らかに人間であろう者まで住民を襲っている。

 その者を良く見ると、身体を食いちぎられた箇所がある…ロメロに喰われたんだろうが、元いた世界のゾンビ映画と異なり、こっちじゃ噛まれた奴もゾンビになるなんて起きないはずなのに…頭が混乱してきたぜ。

 

「どうにかしないと。でもどうする…魔法を使えば住民も巻き添えになってしまう」


 ゾンビになった人間はまた別の人間を襲い、その人間もまた別の人間を。どんどん数を増やしていく。

 元凶のロメロも外から湧き出て、抗っていた兵達も数に押されて喰われていた。

 人々の悲鳴が交わされる…逃げる者も走るゾンビと化した住民に捕まってしまう。


 俺は逃げた。

どうしようもなかった。

立ち向かえるはずなんてなかった。

家に戻って自室へと駆け上がり床に膝を落とした。

足の震えが止まらない。


「外は…どうなった?」


 ゆっくりと立ち上がって窓から外の様子を伺ってみると、隣家へ押し入ろうとするゾンビや、既に扉を破られて入られてしまっている家が見える。

 こっちのゾンビは走らないし、木製だからと扉を破る程の力はないはずなのに…自宅に逃げ込んだのが間違いだったか。

聞こえる悲鳴、扉を叩く音…真下から聞こえる。


「なんでココが分かるんだ!」


 ドンドンッからバキバキッに音が変わった。破られたんだと、ボーっとしていた頭が自覚する。

 もうココには居られないと、階下に行き玄関先に群がる元住民達を水魔法(氷)で氷漬けにして女神の剣で砕いて外へ飛び出した。

 まだ街の中央方面なら被害が出ていないだろうと、輸送機墜落の外壁から逆方向へ走るも、俺を見つけたゾンビ達が追ってくる。

 速い、速すぎる…こちとら全力なのに距離が詰まってきている。

 俺は振り向きざまに魔法を放って足止めし、中央の広場を目前にして今度は俺の足が止まった。

 なんで皆ココに居るんだ?あの惨劇を知らないのか?


「おい!向こうから魔物が来てるぞ!!早く逃げないと!」


 歩みながら叫び、広場に居た皆が俺の方へ顔を向け、走り寄ってくる。

街灯に照らされた住民達は既に人間ではなかった。

 前方に氷漬けにする魔法『レァダスフィールド』を、間合いに入ったゾンビは剣で斬り伏せるも、数が多過ぎて囲まれてしまう…必死に振り払い退ける。何を斬ったのかすら見ぬままに。

 …

 ……

「逃げ切れた…ここなら暫くは来まい」


 息を切らしながら郊外の納屋に身を隠した。

腕に痛みが走る。

あの時(広場)にやられたのか、腕から血が滴った。

 

これからどうしよう…王都方面に行ってにょゆるなり、一からやりゃになおずぅ…

 あ、ダメだ…思考だでゅない…腹減った…肉…肉ぎゃぐ、い、だ、い。





『C-140u アルバトロス人員輸送機』

 最大人数102人を収容出来る全長30メーターの輸送機。

 バトルシップより希少で、大国でも二、三機程度しか所有していない。


『ジェフリー』

討伐レベル記載無し

ステータス記載無し

 ロメロを人工的に強化したアンデッド。

通常種と違い、力が強く、走り、体液が動物の中に混入するとゾンビ化する特性を持ち、ゾンビ化した動物もまた同様に、肉を求めて新たな犠牲者を増やしていく。






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