39 海上戦〜フライングダッチマン〜
転移者、31歳、男
前世の死因、事故死
『迅雷二番機、進路クリア、発進ヨロシ。幸運を』
「りょーかい」
『第二カタパルト、壱式四号、五号、発進』
戦闘機『迅雷』のパイロットとして、俺達は幽霊船が出没する海域を目指して母艦から発進した。前回の戦闘で死んでいった仲間のカタキを討つべくして霧が立ち込める海へ。
編成は有人機の迅雷三機、それにそれぞれ二機の無人機『壱式』が随伴するカタチでフォーメーションを組んでいる。
プラスで、先行した哨戒機もいたんだが、少し前から連絡が途絶えている…墜とされたやもしれんが、最後の通信で浮上している事は確認された。
『視界が悪くなってきたな。各機、警戒を怠るな』
一番機から無線が入った。
どんどん霧が濃くなってきている…もう間もなくだろう。
『敵巡洋艦を目視、報告通り自動での照準は合わない。手動で対処せよ』
「「りょーかいだ!」」
『対空砲火に気を付けろ』
一度目のアタックは艦のケツから全機で機銃と主砲のビームガンを撃ち、接近した所で対地ミサイルを切り離して甲板へ落とす一撃離脱戦法。
作戦通りに遂行出来たが、艦から放たれる機銃を避けつつの攻撃がこんなに当たらんもんなのか。クソッ、自動照準に慣れきっている自分が腹立つ。
『どうだ、効いているか?』
『機銃数基が沈黙したくらいだ。艦に穴は見当たらん』
二番機の言うように、艦そのもののダメージは軽微のようだ。硬すぎるだろ、装甲艦かあれ。
『ならば先に武装を排除する。ココからの判断は各機に任せる。墜ちるなよ』
『互いにな』
「あぁ」
合わせた訳ではないが、三機はそれぞれ展開していき、各方面から仕掛けていく。
機銃を撃ちながら接近してミサイルをぶち込み、ホバリングからの急速転回でもう一撃を繰り返す。
三度目のアタック時に、俺の随伴機の一機がレールガンに、二番機の随伴機二機が主砲によって墜ちてしまった。
一発の範囲が広い主砲が一番厄介か…それならと。
「主砲は俺が破壊する。二人は左右へ」
『『りょーかいだ』』
正面から艦へ飛び込んでいくと、狙い通り主砲も俺へ向いてくれている。
発射の直前、操縦桿を引き込んで上昇して回避し、上空から垂直降下してくる壱式とすれ違う。
壱式はそのまま特攻を仕掛けて主砲と共に爆散していった。
「よっしゃー!!この記録は消しといてくれよ」
『俺達も怒られそうだから見なかった事にしとくぜ』
一番機の奴、よく分かってるな。
貴重な戦闘機を故意にぶつけて大破しましたなんて艦長に知れたら…恐ろしい。
『残りもぶっ壊してくぞ』
この調子で行けばなどと思ったのに、そう甘くはなかった。
二番機の焦りが伝わる無線から全てが狂い始めた。
『ロックされた!?ミサイルか?』
『撃ち落とす!一番機も援護を』
「りょーかい」
一発の大型ミサイルが二番機目掛けて発射され、撃ち落とそうと俺達二人は機銃を掃射する。
ブレながらも何とか弾はミサイルを掠め、もう少しで直撃させられると調整に入った時、ミサイルの外装がパージされて中から複数のマイクロミサイルが一斉に放たれた。
「多弾頭だと!?」
『クソッ!手動だと…逃げろ!!エマージェンシーを押せ!』
『た、助けっガァァッ!』
間に合わなかった…何発もの小型ミサイルが二番機と随伴機に当たり、二機は撃墜されてしまった…
『クソ野郎っ!ぜってぇ許さねぇ』
「おい待て」
急旋回した一番機は感情に任せて巡洋艦に突っ込んでいく。機銃の雨を避け、レールガンを回避してブリッジ目掛けてビームガンと機銃を掃射して。
この突撃で後方に飛んでいた二機の随伴機は墜ちているのに、一番機は気付いていない。
それに、巡洋艦のブリッジは迅雷の攻撃にビクともしていない。
「引けっ!!このままではジリ貧だ!」
『もう遅い』
「何を…っ!」
一番機の機体を確認すると、右翼が無くなっている…あれではもうコントロールが効かないじゃないか。
『すまんが、後を頼む!我等に栄光を!!』
神風…一番機はブリッジへ機体をぶつけて自爆を図った
「バカ野郎が」
だが、特攻してくれたお陰でブリッジ表面を覆っていた追加板が剥がれ、本来の装甲が露出していた。
このチャンスは無駄にしないと、格納していたミサイルの信管を起動させる。
「相変わらずロックオンは出来ないか…」
友の死を見送る際に飛び越えた艦に、旋回して再び近付いて行く。
ロックされた事を知らせるアラートが鳴り、巡洋艦からミサイルが発射されて向かって来ている。
舐められたモノだ、正面ならと照準を合わせてトリガーを引いて弾頭に当たって誘爆させるも、距離が近かったのか一部の破片がコクピット上のカーボネートを貫いて利き目を掠めた。
「視界が…くっ!」
片目だけでは機銃の猛攻からは逃れられず、徐々に被弾していき煙が噴き上がる。
「燃料の概念が無くて助かった。じゃなきゃ今頃爆散していたな」
しかし、両主翼がもがれ、尾翼だけで機体を制御しなきゃならなくなった…まぁ、後は突っ込むだけだしな。
「軽くしてくれてありがとよ。艦長、皆、先に逝く」
決しの特攻で、フライングダッチマンの船橋は爆轟により消し飛び、自動航行システムが停止した。
後に別働隊によって完全に沈黙した事が確認されている。
『N2K4-m 迅雷』
全長9.5メーター、可変翼型の戦闘機。
島国の防衛として運用するにあたり、海上戦では機械兵の機動性を上回る為に戦闘機が採用されていた。
垂直着陸、ホバリング、急速転回機構が備わっており、実戦でも他国の機械兵を凌駕し、メーヴェという名で恐れられた。
無重量発生装置を応用したG軽減機能がコクピット内に備わっており、武装は旋回式ビームガン、バルカン砲二門、対空対地ミサイルとなり、弾薬は母艦で生成されるのを使用する。
『A7М1-A 壱式』
全長九メーターの無人戦闘機。
有人機の支援目的で開発され、戦闘時は僚機として随伴させ、有人機からの指示を行う必要はあるが、あらゆる戦況に応じられるCPUが搭載されている。
また、この機体も迅雷同様の機構が備わっている。
武装は、25mm機銃二門と12.7mm機銃二門、対地ミサイルとなる。




