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夢幻への再臨  作者: 柴光
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38 幽霊船〜サマヨウアララギビト〜

転移者、52歳、男

前世の死因、溺死

 




 前世で船乗りをしていた俺は、此方ではアーティファクトと呼ばれている古の艦『レナウン級巡洋戦艦二番艦ベオウルフ』の艦長を任せられている。

 古のとは言うが、殆どの操作が自動化されているので、いざとなれば一人でも対応出来る近未来的な艦だ。

 こっちじゃ既に失われた技術で、アーティファクトそのものも貴重な代物なんだが。

 それはさておき、俺達は今この海域に出現する幽霊船の調査に出向いている。


「だんだんと霧が濃くなってきましたね」


 操舵手が言うように、先程まで頭上から照らしていた太陽が隠れる位の霧が艦を進路を塞いでくる。


「オートパイロットに切り替えて辺りを警戒してくれ。他の者も同様に警戒を怠るな」

「「了解!」」


 船橋ブリッジにいる皆に伝えながら、天候が悪かろうと外の様子が詳細に映し出されるモニターを凝視していると、CICが見ていたソナーが何かを捉えた。


「艦長!ソナーに反応有り」

「何!?方角は?」

「後方、これは…海の中です!!」

「海中だと?モンスターか!?」

「いえ、魔物とは表示が異なりますので…この反応は船と思われます」

「まさか潜水艦か!?」

「潜水艦とはなんでしょう?。ッ!対象、速度を上げ浮上してきます!」

「総員、衝撃に備えろ!」


 ザバァーンと波が艦を大きく揺らし、落ち着きを取り戻そうとしていた頃、その姿が確認出来た。

 全長240メーターを超えるこの艦が小さく見える程のサイズを誇る艦……艦だと!?アレは潜水も可能とするのか…流石は古の技術と言ったところか。


「艦長指示を!!」


 そんなこと思っている場合ではなかった。


「後ろを取られてちゃこちらが不利だ!距離を取るぞ。狙える砲門は全て回せ!あの艦を撃て!!」

「「了解っ!!」」


 後方への攻撃手段は少ない、先に逃げきる事に専念したい所だが。


「艦長、データと照合した結果、9割一致する船がありました」

「データに入っていたのか?」

「はい。あの船の名は『ホラント改級防護巡洋艦』」

「巡洋艦?あのデカさでか…」


 まぁ、正体が判明した所でなんだという気がするが、幽霊船じゃなさそうだと分かっただけでも気持ち的に楽になる…のか。


「ですが生体反応がありません」

「なんだと?じゃあ無人で動いているのか」

「だと思われます」


「艦長!」

「今度はどうした?」

「機銃とミサイルの照準が出来ません!」

「照準が出来ない?どういうことだ?」

「分かりませんが、自動で追尾してくれないんです」


 何が起きてる…まさかこの霧はジャミングスモークなのか?だとすればオートロックが使えないのも納得がいく。


「ならば手動に切り替えて狙え、ミサイルはダメだが機銃なら使える。当てなくても良い、牽制するんだ」

「はい!」


 武器管制システムを通じて手動で照準を合わせて発砲を開始し、それに合わせて艦の速度を上げ全速で進み出した。

 あのデカさならスピードはこっちに分があると思いきや、振り切れないどころか向こうの方が速いまである。

 どうにかして撒けないか考えていると。


「ロックされました!攻撃来ます!!」


 向こうさんはジャミングの影響を受けてないのか…十数基もの機銃と単装砲がこの艦へ鉛玉を飛ばしてくる。

 大半は直撃を免れてはいるが、それでも徐々に削られている…こっちの機銃は当たってもビクともしないのに…時間の問題だ。


「右舷でも左舷でも構わない、なんとかしてあの艦の横に着けろ」

「了解」


 操舵手に指示を出して、俺はチャージが必要な主砲の準備に取り掛かろうとしていた時、水面から水飛沫が上がり艦が大きく揺れてアラートが鳴り始めた。


「艦長…操舵が効きません!」


 やられた…恐らく軽魚雷だろう。ラダーが潰され舵が切れなくなった。

 後方の甲板に対艦ミサイルが直撃して振動と爆発音が船橋まで伝わってくる…もうココまでだ。


「総員、退艦準備を。脱出ポットを起動させて他の者と共に艦から離脱しろ」

「…お前はどうするんだ?」


 一番仲の良かった航海士が尋ねてきた。


「俺は残る。最後に一矢報いてやる」

「何をバカな事を言ってるんだ!お前も逃げるぞ!」

「囮役がいなきゃポットが狙われるだろ。時間がない、早く行け」

「なら俺も残る!」

「…航海士のお前がいなきゃ、次にまたココに来れないだろ。大丈夫だ、俺も最後には退艦するから」

「…分かった。死んでも死ぬなよ!」

「あぁ」


 全員とまでは行かないが、出来るだけの人数を乗せて四機の脱出ポットは設定された海中へ潜らせた。

 これで少なくとも轢かれる事はないだろう…後は出来るだけ遠くへ。


「本当に舵が効かねぇや…真っ直ぐ進むだけか。ようそろう…視界、悪し」




 ベオウルフと艦長は、ホラント改級の主砲、三連装高エネルギー砲によって轟沈したと搭乗員が語った。

 艦長のお陰で俺達の命があるんだと、救助時に涙を流しながら。





『レナウン級巡洋戦艦二番艦ベオウルフ』

 全長242メーターの大型艦。

大型であるものの、速度は他種の巡洋艦に劣らない。(旋回性能は低い)

 武装は、主砲である二連装ビーム砲、連装砲二基、三連装速射砲四基、機銃24基、ミサイル発射管二基となっている。

 殆どの艦も半永久の動力源である聖鉱石で動いている為、燃料や弾の補充は要らないが、破損した箇所の補修は今の技術的に不可能とされる。


『ホラント改級防護巡洋艦六番艦フライングダッチマン』

 全長380メーター、潜水能力を兼ね備えた超大型の巡洋艦。

 大昔に起こった大戦中、艦内に化学兵器(毒ガス)を散布されて搭乗員は全滅するも、自動防衛航行モードは継続され、守っている海域に入った他のバトルシップや航空機を海の藻屑に変えている。

 全体の装甲に特殊合金鋼が使われており、並大抵の銃火器やミサイルでは歯が立たない。

 武装面も豊富で、主砲の三連装高エネルギー砲を始め、電磁加速砲、数十基の機銃や単装砲、ミサイル発射管を搭載している。







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