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夢幻への再臨  作者: 柴光
38/55

37 召喚獣〜バハムート2〜

転移者、25歳、女

前世の死因、他殺

 




 私は指示を受けて隣国で戦争に参加している。

怪しまれないようにする為とはいえ、お世話になった国に刃を向ける私はきっと碌な死に方をしないと思う。

 でもこっちの世界に来てから人の死には慣れてしまった、あまりにも軽すぎて。

 ただただ早く任務も戦争も終わらせたいと願うだけだったけど、私が本来やるべき召喚獣撃破のチャンスが訪れた。

 契約が結ばれた召喚獣は、倒しても時間が経てばまた喚び出せ、召喚士を殺しても召喚獣は精霊界に還るだけで、別の召喚士と契約し直されたら召喚されてしまう。

 じゃあ召喚獣を倒すにはどうすればという疑問が浮かぶが、契約を阻止するか…契約時に喚び出された召喚獣を結ばれる前にやっつけるの二択となる。

 私もとい私達の目標は全種族でも最強格の一体である『バハムート』、コレを喚んだ瞬間に召喚士ごと息の根を止める。

 バハムートは強大な力を行使するのと引換えに喚び出した者の命を奪っていく為、毎回召喚士が代わり、この間の使役で前回契約していた…いや、させられていた人が死に、新たに契約の儀を執り行う必要があるんだけど、それが今日に決まった。

 今は十人の仲間と共に計画の最終確認に入っている。


「ようやく帰れるかもね」

「ホントうちのリーダーは人使い荒すぎますよ」


 私じゃなくて私達をこの国に派遣したリーダーのことね。


「任務が終わったら皆で休暇を申請しよ。しばらくは羽を伸ばしてもバチは当たらないでしょ」

「そうしましょう!」「帰ったら絶対海行ってやる」

「じゃあ最後だと思って気合い入れていこう!」

「「おぉーッ!!」」


 バハムートは大き過ぎるが故に契約は平原で行われ、私達も他の兵と一緒に取り巻きとして参加する。

 国が囲っている複数人の召喚士が喚び、そのうちの一人と契約する流れとなる。

 こんなの、召喚士の誰一人としてやりたいと言う者はいないと思う…上から命令されれば命を投げ打って召喚しなきゃいけないんだから。


「有能な召喚士達を無駄使いするなんて」

「何か言いました?」

「なんでもないよ」


 それ相応の召喚獣と契約するには召喚士もまた優秀な人材でなければならない。

 強大な召喚獣ほど強固な魂に惹かれるからと聞かされた。命を奪うパートナーになんて惚れられても嫌だけど。


「始まりますよ」

「対象が現れたと同時に周りの制圧をお願いね」

「了解です」


 既に描かれている召喚魔法陣に光りが走る。全ての紋様に行き渡ると、中央からその姿を顕れはじめた。

 バハムートの大きさに対して陣が小さく、周りの地面を破壊しながら顕現し、上空へ舞いヒレを広げた。


「今っ」


 小声で口上を唱えてた仲間達に合図を送り、各々の召喚獣達が陣を抜けて兵達に襲いかかった。

 バハムートを相手するのは私を含めた三人、二人の召喚獣『ピースエンドドラゴン』と『ディソーダドラゴン』は召喚士達にブレスを吐きつけ、私は空を見上げながら口上を唱えた。


「悠久の時告げる光と闇を交わりて顕現せよ。ガイーヌの終演を飾る幻音を!奏でよ『ラグナロク』!」


 最強名高い戦神ラグナロクはドコかのエセ女神とは違って、威風堂々たる姿は神そのもの。借りモノなんだけどね…


「お願い。また力を貸して」

「今回は手応え有りそうな獲物ですね。お任せを」


 サイズ差、約百倍の戦いが始まる。

ラグナロクは白い翼を広げ、数多の剣を顕現させて腕を突き出し、数えきれない程の剣はバハムート目掛けて飛んでいく。

 バハムートもまた光線みたいなブレスを放って射線上の剣を打ち落としてそのままラグナロクを焼こうとするけど、放射状に展開された剣がソレを阻止した。

 残りの剣は鱗に深々と刺さっていき、バハムートは耳をつんざくような叫びを上げる。


「隊長、制圧完了したみたいですぜ」

「なら援護をお願い」

「了解!行くぞ野郎共!」

「「おぉっ!!」」


 周りにいた元同僚達の兵士は皆召喚獣に殺られて転がっている…この作戦を計画の一手とするにはこうする他なかった、仕方なかったと言い聞かせた。

 ラグナロクは再び剣を出現させて飛ばして行き、ピースエンドとディソーダドラゴンは黒と白のブレスを、他の召喚獣達も各魔法を放ってバハムートに浴びせる。

 もう一押しかと思われたけど、バハムートは下にいる召喚獣達を光魔法の無数の弾丸で薙ぎ払っていき、私達に向かってブレスを放った。

 ブレスはラグナロクが防いでくれたけど、巨体が彼女へ突進していく。

 次から次へと剣を雨の如く突き刺していってもバハムートの突進は止まらず、大きく開いた口がラグナロクをパクりと飲み込んでしまった。


「えっ?ウソっ!!食べられちゃったんだけど!?」

「ど、どうするんすか!?」

「どうするって言われても」


 と混乱していた時、バハムートが苦しみ悶えだしたと思ったら血塗れのラグナロクがお腹を掻っ捌いて這い出てきた。

 腹から、全身から血を流すバハムートのゼロ距離でのブレスに、ラグナロクは両手に剣を握ってブレスごと頭を斬り裂いてみせた。


「相討ち覚悟…見事です。彼岸の竜よ」


 頭部を失ったバハムートは地に叩きつけられて戦いは幕を降ろした…けど、ラグナロクもブレスが掠って下半身を失っていた。


「ラグナロク、大丈夫なの!?」

「不覚を取りました。時間なので還らせてもらいます」

「うん…本当にありがとう」

「次は貴女ではなくマスターに喚んでもらいたいですね」

「わかった。伝えておくね」


 微笑みを浮かべて粒子と化すラグナロク。

終わった…これでやっと帰れるんだと、仲間達皆で喜びを分かち合った。


 光りの弾丸を浴びて倒れていた二体の竜がしれっと起き上がり、残されたバハムートの遺体を焼いて私達を乗せアジトへ飛び立ってくれた。


「お前等、アイツと戦うの嫌だから死んだフリしてただろ?」

「当たり前だ!あんな化け物は化け物に相手させりゃいいんだ」

「そうよそうよ!」

「全くなぁ…スミマセン隊長」

「良いの。怖いのは私も同じだったんだから」


 軽口を叩きながらもようやく帰れるんだと安堵した。





『ピースエンドドラゴン』

召喚獣

体力A 攻撃力S 速力A

 全長20メーター、黒い西竜型の上級種。

終幕竜とも呼ばれ、闇魔法を得意とする為に畏怖の象徴と見なす国もある。


『ディソーダドラゴン』

召喚獣

体力S 攻撃力A 速力A

 全長20メーター、光魔法を得意とする白い鱗をもつ上級種の西竜。

 安寧竜とも呼ばれており、平和の象徴と祀る国が存在する。






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