32 代行者〜エリゴス〜
転移者、27歳、男
前世の死因、自殺
『ザザ…J型(狙撃兵)は砦内部を狙い撃て。先に召喚士を潰す』
「了解」
先の戦闘で俺達の同胞がアーティファクトサモンにより全滅させられたという。
カタキなんてだいそれた事は言わないが、此方にとっては存在が邪魔なだけだ…悪いが撃たせてもらう。
「照準、マニュアルモードへ…最大望遠、目標確認…」
探知されない距離から機械兵のスナイパーライフルを向け、報告された召喚士達が居る砦に引き金を引く。
どうやらアンチマジックも施されてない単なる石壁だ、一撃で後方の壁も貫いてしまった。
『ザ…古代兵器とウルツァイトドラゴンを喚び出される前に徹底して撃ち抜いてしまえ』
二発、三発と撃ち、瓦礫へと姿を変えて行く砦…五発撃った所で自動強制冷却が開始され、俺の番はココまでのようだ。
「リブートまで時間がかかる。後は任せた」
『ザザ…任されよう。L型(飛行型)は先行する。歩兵は後に続け!』
「武運を祈る」
『ザ…おう!』
飛行ユニットを装備したサージェント五機が崩れ落ちた砦に飛び立ち、その後を追うように歩兵達が前進する。
もう反撃も出来まいが、一応スコープを覗いて見てみると、残った塔から召喚魔法陣であろう光りが発せられ、巨大な大砲のような筒が顕れた。
「あれが例の…」「リブーティングカウント10…9…」
早く…早く…あれを撃たせる訳には行かない、あの古代兵器のせいで前回は全滅したんだ。
もうブラックアウトはチャージに入っている…此方は…「5…4…」
「早くしろーっ!!」「2…1…リブート」
「初弾、最大出力」
光りが収束し終え発射体制を整えたブラックアウト、既にロック済みで後はトリガーを引くだけのサージェント。
「間に合えよ…」カチッ…
ライフルの発砲音が周囲に響き、次いで聞こえたのは爆発音…間に合った、ブラックアウトは発射される事なく爆散して粒子と化して消えていった。
「はぁ…心臓に悪いな。後は頼んだぞ戦友」
『アイツやりやがったぜ!』
『この機を逃すな、さっさと制圧するぞ』
脅威の排除は完了し、後は砦の制圧を完了させるだけだったんだが…スコープの先に宙を飛ぶ馬に跨がる黒い翼を持つ人いや、悪魔がいる…こっちの世界では天使だったか。
俺の仲間達は天使の前で止まり、何やら会話をしているように見える。
「私の名はエリゴス。神の名の元、この戦に終止符を打たせて頂きます。」
『何故天使がこの戦争に介入するんだ!?』
「まだこの国には利用価値があります故、戦火に焼かれる訳には行かないとの事です」
『そっちの味方をすると言うのか』
「えぇ、その捉え方で間違っていません」
『ならば覚悟!』
「愚かな人間達よ、神のみもとへ誘いましょう」
サージェント五機が天使にライフルの一斉射撃を開始する。
的は人間と変わらないサイズだが、オートロックシステムによって動かない相手にはエネルギーが尽きるまで全弾命中しているはずなのに…そう、動かない…それに身の毛もよだつあの気配は消えないのだ。
全機弾切れを起こしてカードリッジ(マガジン)を交換しようと腰に手を回す。
「弾が尽きましたか、ではこちらから」
手にした槍を振るったエリゴス、前方の二機が腹部から真っ二つにされ爆発を起こし、何が起こったのか理解が追いつかない後方の三機もコクピットを貫かれ、左右に両断され、反応を示した残り一機は後退しようと背を向けた所に槍を投げられて機体は弾けとんでいった。
「まだ下にわんさかと居ますねぇ…貴方方に任せて私はあちらを」
エリゴスは配下の天使達を喚び出して歩兵の相手を指示し、俺の方へと空を駆け出した。
「何が天使だ…やはり悪魔じゃないか!」
撃っては弾かれ撃っては弾かれ、高出力の弾も効かず、あっという間に間合いに入られてしまう。
「旧世代の兵器で私を倒せると思わないでもらいたいですね」
振るわれる槍に対して左腕に付いているブレードを展開させて応戦してみせたが、左腕ごとブレードは折られた…コイツに、俺は勝てない。
「覚悟はよろしいですか?さぁ、神のみもとへ」
「悪魔が神の名を語るな」
「おや、元悪魔だと知っていたんですね。貴方、転生者ですね」
「だとしたらなんだ」
「実に惜しい…あの方に叱られて参ります」
「何の話…を」
機体ともども俺の胴体を斬り、悪魔は微笑んで空へ去っていく。
「空で待ってます」
歩兵達も天使の蹂躙に合い、一人残らず息絶えた。
召喚獣を喚んだ者もいたが、天使の前では無力同然の結果に終わってしまった。
『エリゴス』
討伐レベル?
ステータス?
空飛ぶ馬に跨がる黒き翼をもつ現天使。
手にする杖は状況に応じて姿形を変え、槍や剣に変わった杖は機械兵の装甲をいとも簡単に両断する。
エリゴスの下には50の天使が控える。




