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夢幻への再臨  作者: 柴光
32/55

31 瘴気〜カタチナキモノ〜

転移者、18歳、男

前世の死因、他殺

 




 また一人、自らの手で頭を割って逝ってしまった…もう僕も長くはないだろう…何でこんな所に来てしまったのか、何で僕は…あぁダメだ、来る、狂う…狂う。




 僕達五人のパーティは拠点としていた街を離れてもっと大きな街を目指して旅立った。

 隣街は元々居た街と似ていて静かで良いところだったし、その次は賑やかで楽しく過ごせ滞在している時間が短く感じて去るのが惜しいくらい。

 それでも目指すは王都並の街、そこで名と実力を上げて行こうと決まっている。


「この湿地帯を抜ければ山が見えるはずだ。にしてもジメジメして気持ち悪い」


 先頭を歩く剣士は参った顔をしながら言った。

今僕達がいる湿地帯は森の中に広がり、霧がかり昼間でも薄暗くジメッとしている。


「近道しようなんて言ったの誰だよ」


 中央で辺りを警戒しながら補助魔法使いが剣士に尋ねる。


「悪かったな、絶対こっちの方が早いはずなんだよ…多分…」


 ちゃんと道が続いていたにも関わらず、わざわざ逸れて道なき道を進んでいる。


「まぁ、たまには良いんじゃない?ねぇ」


 4番目を歩く拳闘士が最後尾のタンクに言葉を交わそうと振り向いて気が付いた。

 タンクが居ない…はぐれたんじゃないかと引き返してみると。


「な、何だこれ…」


 そこの木に頭を打ち付けたんだろうか、タンクは前頭部が潰れて既に亡骸と成り果て、見つけた剣士は途方にくれて横たわる死体を見下ろしていた。

 ソレを見た補助魔法使いは笑いながら走りだし、立ち止まったかと思った次の瞬間には口から血飛沫を上げて倒れ込んでしまう。


「ちょっ!大丈夫なの!?」

「早く行こう!」


 僕と拳闘士は補助魔法使いに駆け寄り抱き寄せるも、息が無いことが分かるくらい悲惨な表情を浮かべている。


「しっかりして!ねぇ!」

「もう死んでるよ…」

「なんで…何が起こったの!?」

「多分、魔力暴発だと思う」

「魔力暴発?」

「体内の魔力を練り上げて暴走状態にするんだ。一種の自殺だよ…」

「そんな…なんで…」

「わからない…」


 鼻からも耳からも血を流してこんなにも苦しそうな表情なのに、本当になんでこんな事を…タンクもそうだ、どう見たって自分から命を絶っている…そうだ、剣士は?


「あれ、剣士?誰の事だろう…」

「どうしたの?って剣士は?」

「あ~そうだ、剣士は何処に…いない?」


 記憶が曖昧になって来ている、拳闘士が居なかったら剣士の存在を忘れる所だった…けど剣士の姿が見当たらない。


「あそこ、あれ」


 拳闘士は倒れて半身が沈んでいる剣士を見つけ走りだして引き上げた。


「ひっ!」


 剣を握っている胴体に頭が付いていない…頭は……すぐ近くに落ちていた。


「なんで、皆何やってんの!!?」


 半狂乱になる拳闘士を落ち着かせようとするも振り払われ、アイアンナックルを装備した拳で自らの頭を殴り続け、膝から崩れ落ちていく。

 僕は脳みそが飛び出ているこの人に近寄る事が出来なかった。


「ダメだ…僕も…来る、狂う…狂ってしまう!」


 魔力を練ろう…もっと…もっと…もっと!あぁ、この感覚…初めて、だ。




「あの湿地帯?入ったら駄目ですよ、あそこにはスラッジシャバハが居るんですから。入ったら瘴気に当てられて二度と出てこられなくなるって話ですよ。ほら、あそこの張り紙、ギルドでも注意喚起出してますんで読んで下さいね。討伐依頼?出てないです。近くに人里もありませんし、湿地帯から魔物が出て来る事もありませんからね」





『スラッジシャバハ』

討伐レベルS

体力B 攻撃力B 速力B

 カタチを持たない泥の亡霊。

ステータス自体は低いものの、姿を現さずに瘴気だけをばら撒き、人を狂わせてしまう事から討伐レベルだけは高い。

 地縛霊と呼ばれる一種なので、自分のテリトリーからは移動しない。






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― 新着の感想 ―
こういう気づいたらどんどん死んでる、みたいな話好き。 そして誰もいなくなったとかに似た面白さを感じる
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