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夢幻への再臨  作者: 柴光
11/55

11 奴隷〜カオスレギオン〜

転移者、21歳、女

前世の死因、事故死

 




 女神様によって別世界に転移されて四日目、街に着いた私は奴隷商に捕まって売りに出されていた。

 黒髪が珍しいという理由ですぐに買い手がつき、領主街にある主人の屋敷へと連れて行かれた。


 そこからは長い長い地獄を味わう事となる。

 毎日毎日来る日も来る日も私の身体を弄び、身籠ると、変な薬を飲まされたりお腹を蹴られたりして幾度となく堕胎させられた。

 屋敷で働く者なのか仲間なのか分からないけど十人程の男に囲まれたときもあった。

 奴隷紋の制約のせいで自害も出来ず、ただただ苦痛に耐える日々である。

 そのうち、新しいエルフの奴隷を連れてきたとかで、私への興味がなくなって安堵していたけど、明くる日 主人に家畜小屋へと連れだされて犬や豚と交配させられた。

 泣いたら頬を叩かれ、声を出したらお腹を殴られる。

 そんな日が続くと、次第に食事の回数が減り、量が減り、終いには私の部屋に誰も近付く者がいなくなった。


「あぁ、私…何かしたかな…何でこんな目に遭わなきゃイケないのかな…」


 涙ぐみながら思ってしまった…

 誰が悪いのか、主人?奴隷商?それとも私?いや、この世界へ送った女神だ。


「許せない…赦さない…」


 全てが嫌になった私は女神に復讐を誓い…唱えた。


「理を破る軍勢よ 我が嘆きと祈りを聞き、顕現せよ 漆黒が奏でるレクイエムを轟かせて『カオスレギオン』」




 屋敷どころか庭園全体を覆う程の魔法陣、現れたるは千は居るだろう漆黒の鎧を身に纏った不死の軍団。


「私を…導いて」




 命からがら屋敷から逃げ延びたメイドの報告を受けた衛兵達は、冒険者ギルドへ応援の要請を行って屋敷へと向かった。

 魔物達によって領主達の悲惨に遂げた最後と現状について詳しく聞く程に信じられない。


「千近い魔物の大群とは、にわかに信じ難いが…コイツ等を連れて行こう」


 衛兵長は虎の子である二機の自律行動型戦車『スピューラ』を起動させて同行させる。

 衛兵二百五十、冒険者百、戦車二機は屋敷の正門へと集まり、その光景を目の当たりにして言葉を失っていた。


「兵長…こんなの我々ではどーしようもないかと…」

「やる前から諦めるな!」


 庭園を埋め尽くす数の人型の魔物に後退る者も現れ、対峙した瞬間からやり方が間違っていたのではないかと思いはじめた。

 それでもと、まだ動きを見せない魔物の軍団に、スピューラの砲撃と魔法使いによる飽和攻撃を命じて先手を打つ。

 次々と放たれるエネルギー弾と様々な魔法攻撃によって、庭園は爆煙に包まれる。


「攻撃止めっ!!」


 号令で止まった攻撃、徐々に晴れる爆煙の中、再びどよめきが生じた。


「どーなってんだ!」

「何で無傷なんだよ!!」

「あり得ないあり得ないあり得ない」

「全力出した俺達の魔法だぞ!」


「こんな事があってたまるか!砲撃再開だ!」


 ざわめきの中でもう一度攻撃を開始しようとする兵長、砲身を向けるスピューラはエネルギー砲を発射するその時、魔物兵達から魔法が放たれた。

 盾から放出される魔法は光り魔法のような眩さを持ち、炎魔法のような熱量を帯びている。

 スピューラは砲撃前に砲塔を溶かされて大破され、殆どの衛兵と冒険者もその魔法攻撃で叫び声と共に蒸発しいく。


「私の前に立ちはだかる全てを消して。もうこの世界も…神も」


 兵長が耳にした最後の言葉は冷たく、それでいて内なる熱さを感じた。


 兵達と街を薙ぎ払ったカオスレギオンは、次なる街へと向かった。

 だが、その最中に現れた一人の冒険者と召喚獣に侵攻を阻止され、その胸に一突きの剣が立てられた。


「次は…生まれてきたく…ない」

「自分を悪だと思うな…君も世界の犠牲者だ。その事だけは忘れないでくれ」


 軍勢を産み出した召喚主の死でこの騒動の幕が閉じられる。


 後に、領主の屋敷を調査した隊員は語った。

あんな惨たらしい死に方見たことがないと、畏怖の念を感じて。





『カオスレギオン』

召喚獣

体力S以上 攻撃力S 速力B

 倒れる事も死ぬ事も赦されず、敵を駆逐するまで動き続ける混沌の軍勢。

 人型で、アンデッドの兵士のような出で立ちをしており、斬撃を通さない漆黒の鎧と魔法を吸収させて跳ね返せる盾に鋼鉄をも両断する剣を持つ。


『AT-900E スピューラ』

 アーティファクトの一種、全高2.3メーター、全長9.4メーターの完全自律行動型の無限軌道式戦車。

 主砲は120mm滑空砲であり、型式にEが付いてる車両はエネルギー発射機構砲に置き換えられている(エネルギー砲は放物線を描けない為、現場では嫌われていた)。

 装甲前面には、アンチマジックコーティングが施されているが、許容範囲を超えると弾ききれない。





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