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川島式直接排除型除霊工法  作者: いけたらいく
§3.施工事例その1 石田邸
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青いサンダル

この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。


やはり、ムカデの話をしよう。


川島には、専用の部屋履きがある。青いサンダルだ。有名なワニのマークのメーカーのものだ。コンフォートサンダルではあるが、定番のサンダルではない。いうなれば、便所サンダルに近い。5年以上、愛用している。


川島は、風呂に入る前の、ちょっとしたルーティーンがある。


脱衣所で、一旦、部屋履きを脱いで、素足でトイレに行ってから、脱衣所に戻って、服を脱いで風呂に入る。


という、本当にちょっとしたルーティーンがある。いつからそうするようになったのか、日常の中で生まれた、ささやかなルーティーンだ。階段は左足から、とか。ロープワークは右足から、とか。そんな、ささやかなルーティーンだ。


その日も、脱衣所で部屋履きを脱いで、揃えてから便所に行こうとすると、サンダルが川島を呼び止めた、ような気がした。


「俺を一緒に連れて行け。」


そう言った。サンダルがそう言ったのだ。


川島の脳内に直接、そう言った。


川島は、固まった。


何が起きたのか、全くわからない。突拍子もない話。素っ頓狂な話。作り話にしては、余りにもバカバカしい。ゆえに、作り話ではない真実味を帯びているといってもいい。どんなに添削しても、どんなに脚色しても、他人に披露できるネタにはならない。


連れて行け、とサンダルが言っている。


こんなことは今までなかった。想定もしていない。こんなバカげた話はない。


あり得ない。だから、説得力がある。


例えバカと笑われようが、サンダルは、連れて行け、と言っているのだ。


サンダルを履き直して、トイレに向かった。


()()


これまでの川島の人生で見た中で、最も大きく、最も太く、最も禍々しい。全長は、20センチメートルを超えているだろうか。


オオムカデだ。


動物界、節足動物門、ムカデ綱、オオムカデ目、オオムカデ科、オオムカデ属、トビズムカデ。


体長は、およそ8センチメートルから15センチメートル。まれに、20センチメートル近くになる個体もいる。日本最大級のムカデ。


()()()か。


素足では殺せない、とまでは言わないが、一撃で仕留めなければ、抵抗にあい、こちらも、ただではすまないだろう。


にらみ合いが続く。


こんな大物を見逃すわけにはいかない。何か得物はないか、と武器を探しに行くと、見失ってしまうだろう。ムカデも命は惜しい。身を隠すに違いない。そうなると、どうなる。家の中のどこかに、()()()がいる、とわかっていて、安眠はできない。


武器はある。


()()()()を言っていたのか。


だから、連れて行け、と。


青いサンダルで、一撃。肉厚の感触が足の裏を伝わってくる。


まだ動いている。追撃、追撃。


「おーい!」


川島は、仲間を呼んだ。


「なになに?どうした?」


「ムカデー!」


「やっつけた?」


母親が、火箸を持って現れた。


「大きいなー!これ!」


火箸で、ひょいと掴み上げると、キッチンに行って、ガスコンロで、ムカデを炙り出した。


()()()だ。もう生き返ることもない。


ゴキブリの時もそうだが、バーベキューで、エビを焼いた時のようなにおいがする。


この経験によって、エビやカニが食べられなくなる、ということはない。


むしろ、エビが食べたくなって、次の日のランチは、天ぷらうどんにしたくらいだ。


何度も確認するが、()()()は、川島にとって、虫と変わらない。

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