何か出た
この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。
裏に広いスペースがあるから、まずそこから片付けようという話になった。
恐らく、駐車場に使われていたのだろう。社宅の裏には広いスペースがあった。そこに、浄化槽もあるはずだ。…はずだ、というのは、裏のスペースは、草木が生い茂ってしまって、地面が見えない。表の通路部分は舗装もされているから、そこまでひどくはないが、裏は未舗装で、おそらく砕石敷程度だったと思われる。
もう何年も放置されていたに違いない。ちょっとした雑木林のようだ。
プレハブの休憩所や仮設トイレ、工事車両の駐車場として申し分ないスペースだ。とびの新田組の番頭、山下なんかは、ここまで広いなら、裏側の足場は大組にしませんか、と提案してきた。小椋は、レッカーを頼む予算はあるのだろうか、と頭をかいた。
監督の新見は、いいじゃないか、大組にしよう!と乗り気になった。
「草刈りは、工事に必要な為の、丸末さんところの都合だから、サービスでやってよ。もう先にやっておいてよ。担当には俺から言っておくから。かまわないから。」
営業の加藤が酷く渋い顔をしたが、付き合いの長い、大のお得意様の言うことだから、と小椋は承知した。
資料は、配置図と簡単な平面図、落書きのような給排水図しかない。新見には、杭があるかないかを聞きたかったのに、他の図面がないかの確認もとっていないようだった。伐採、草刈りの手配をして、その日の顔合わせの現調は終わった。
後日、草刈りの日、小椋は営業の加藤とやってきて、見積の為の測量を行った。
表で測量をしていると、裏で作業をしていたインドネシア人が小椋を呼びに来た。
「グマさん!なんか出た。」
仕事をもらえることは分かっているが、まだ契約もしていないのに、何かやってしまったのでは、ちょっと困ったことになる、と眉間に皺を寄せた。もし何かあったとしたら、新見は、逃げるだろう。ため息が出た。しかし、やってしまったものは仕方がない。小椋は開き直って、インドネシア人についていった。