サイモンの苦悩
この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。
話が違う!
サイモンは、強く川島を非難したい気持ちで闘志を燃やしながら、戦っていた。暗黒騎士の剣技は、けして子どもの遊びレベルでは、ない。
しかし、動きに無駄が多い。オーバーアクションで、いちいちポーズを決める。そして、決まって、大声で何かをまくしたててから、技を繰り出してくる。きっと、技の名前を叫んでいるんだろう。要所要所で、溜めや見栄で作られる、無駄な時間から生まれる隙があるから、何とか対処できている。
隙を見て、ちらり、と川島の表情を窺った。
堂々としている。あの顔は、何も悪いと思っていない。少しくらい、しまったな、とか、悪いな、という思いはないのか!と暗黒騎士の地獄の釜の蓋があくを弾き返した。
いや、待て。それにしては、あまりにも堂々とし過ぎている。
もしかして、川島の基準では、このレベルで、子どもの遊び程度なのか!?
都の訓練所で一番、と言われて、悪い気はしていなかった。事実、その通りだったし、誰よりも努力して勝ち取った一番だったからだ。自分には、才能がある。しかし、それに驕らず怠けず、訓練して、一番になったという自負がある。自分が一番だ、という自信がある。だが、自慢するのは、かっこう悪い。だから、謙遜する。しかし否定はしない。ハリスに、言うなと言っているが、言ってほしい。言われて、嬉しいのだ。
恥ずかしい。
都の訓練所で一番、と言われて逆上せて、かっこうを付けて引き受けて、任せられたこの仕事が、思ったよりも難しいなんて。
世界は広い。
自分は、まだまだだ。
こんな田舎では、競い合う相手もいなかった。日課の素振りも、サボりがちになっていた。怠慢だ。帰ったら、ちゃんと訓練を再開しよう。
今は、与えられた任務を全うしよう。
「うぉおおお!」
何かに火が付いた。サイモンの何かに火が付いた。
呼応するように、暗黒騎士も尻上がりに盛り上がる。
「楽しそうだな。」
みんな、根っこは男の子だからか、うずうずしているのがわかる。しかし、川島はそうではない。
自分が、職人ではなく、現場監督であると、承知しているからだ。




