会議
この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。
机の上に、ごとり、と赤い石を置いた。
「返すぞ。」
それだけ言うと、川島は椅子に座って、足を組んだ。
「何も聞かないのかね。」
と老人は、赤い石を手に取って、川島に問いかけた。
「来週には、休みが明ける。時間がない。さっさとその幽鬼王とやらをどうにかして、領主様が言ったように、元の世界に帰らせてもらう。次の現場が待っている。」
それで終わりだ、と手を広げて見せた。そして、若者を見て、
「あんたは、あの領主様の?」
その先を促す。
「領主は、父です。私は、四人兄弟の末っ子で、」
そこで遮って、
「身の上まではいい。」
と手を振り、机をノックした。
「さあ、会議を始めよう。」
まず、幽鬼王とは何か、と川島は尋ねた。
幽鬼王は、幽鬼たちの親分で、霧の中に幽霊船に乗って現れる、という。幽霊船は、近海を彷徨い、船乗りたちを恐怖のどん底に叩き落している、という。幽霊船を怖がって、船乗りたちが海に出なくなり、海運業や漁業が滞り、港町が死んでしまっている、という。その港町は、領地内有数の、というよりは財源の半分を賄っている、という。
「実害は?」
川島の問いには、ふたりとも答えない。
「実害は、ないのか。」
指で机をリズミカルに叩きながら、
「海に王様がいるのに、幽鬼が森に居るのはどういうことだ?」
「おそらく、もともと森にいて大人しくしていたのが、幽鬼王の出現で何らかの影響を受けて、活発になったと、考えている。」
「そうか。」
「俺なりに、考えてみたんだ。なぜ、年端もいかない頃の俺に、助けを求めてきたのか。」
指を止め、
「幽鬼王は、俺の兄か、叔父なんだろう?」
「兄だ。」
老人が答えた。
川島は、頷いて、
「じゃあ、兄貴を連れて、家に帰ろう。」
成仏はしていないだろうと思っていたが、こんなところで遊んでいるとは、川島は、頭をがしがし掻いて、
「じゃあ港へ行こう。足は、用意してあるんだろう?」
この町は、どうもきな臭い。関わり過ぎると、何かがはじまってしまう。手っ取り早く済ませて、母親の所へ兄を連れて帰ってやろう。
川島は立上り、出発を急かした。




