第一森人発見!?
この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。
森が近づくにつれ、ハリスがそわそわし始めた。
川島が自信たっぷりに、いくら大丈夫と言っても、実際、ハリスにとっては、大丈夫な根拠も保証もない。サイモンも同じ条件だが、サイモンの方は、得体が知れない、という不安からの恐れはあるが、幽鬼をみたことがないので、そのものに対しては、恐がりようがない。しかしハリスは気弱だから、得体か知れない、という不安への恐れは大きい。
ゆえに、自然と隊列の順番が決まる。職務を全うしようとする生真面目なサイモンが先頭。幽鬼をみてやろう、うまくいけば捕まえてやろう、くらいのつもりでいる川島が二番手。怖がりのハリスが最後尾、となる。それはつまり、発見する順番でもある。
「ん?」
森に入って、少し歩いたところで、サイモンが、何かの気配を察知した。
夜の森は、月明かりが全く届かないわけではないが、頼れないほどに暗い。頼りない角灯に頼るしかない。だから、足元が暗く、歩みが少し遅くなっていた。
何の気配だろうか。野盗か、鳥か、動物か、幽鬼か。夜の森で走るのは、危険だ。慎重に動かなければならない。
「幽鬼ではない。」
川島が断定した。もしそうならわかる、とこれまた自信たっぷりに言い放った。
暗い夜の森の道を歩く旅人は、ほぼいないと言っていい。数が少ないということは、稼ぎも少ないということ。野盗の線も捨てていい。ならば、鳥か、動物か。サイモンは、ハリスへ警戒を促した。
動物は不味いな、と川島は思った。川島は、サラリーマンであって、猟師ではないから、そっちの知識は、薄い。動物番組を、ながら見していたから、冬眠とか、繁殖期とか、子連れのクマはヤバイとか、そういううっすらとした知識だけはある。しかし、それが何の役に立つものか。
とにかく、森や山に、馴染みがない。登山が好きな先輩や、狩猟免許を持っている大工さん、そういう知り合いはいるが、興味がないから、そういう話を聞きもしない。そもそも興味があれば、自分で山に入っている。一度、躯体三役を任せている工務店の社長が、現場見舞いにやってきて、
「カントクさん、さっき捌いたやつだ。」
とイノシシのブロック肉をくれたことがあった。
困った。
1ケ月だけ、ヘルプで入った現場だ。ホテル暮らしだったから、この肉をどうすればいいのか。実家に持ち帰るにしても、帰る間がない。冷凍しようにも、ホテルの部屋に、ブロック肉の入る冷凍庫なんてない。しかし、いらない、と言うわけにはいかない。もらうのも付き合いだ。
おそるおそる、ホテルのフロントに、もらってくれないか、と相談すると、いいんですか?と喜ばれた。なるほど、こっちでは、喜ばれるものなんだな、と事なきを得た。
さて、クマなのか、オオカミなのか。クマは、シロクマなら動物園でみたことがあるが、オオカミなんて、実物を見たことがない。
すらり、とサイモンが、剣を抜いた。
なるほど、都の訓練所で一番か。斎藤さんほどではないが、身のこなしが、堂に入っている。
斎藤さんとは、居合の先生のことである。念の為。
サイモンの威風に比べてハンスは、緊張しているのか、角灯を持つ手に力が入っている。少し震えているようにも見えた。
「リラックスしろよ、ハンス。」
「ハリスです!」
「あ、悪い、ハンス。」
「ハリスです。」
「ハリス。」
「はい。」
期せずして、場が少し和んだ。




