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川島式直接排除型除霊工法  作者: いけたらいく
§2.異世界出張
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渋滞

この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。


川島は、町へ入る検問の列に加わった。隊商の一団の後ろ、最後尾につけた。


手持ち無沙汰だったので、ポケットに手を突っ込んで、自分の順番が来るのを待った。ちらちら、と物珍しいものを見るように、商人らしき男が何度か振り返ってきたが、視線が合うたびに顔を背ける。失礼な男だ。あと3回目が合ったら、何の用か聞いてやろう。じっと見ていると、もう振り返らなくなった。


少しずつ、ゆっくりと列は進む。城壁の門がよく見えるところまできた。約束があるのだから、もしかしたら行列に並ぶ必要は、なかったんじゃないのか、と考えたが、もうここまで並んでしまったのだ。待っていよう、と思っていると、ある男が門番と揉め出した。


ETCレーンをくぐろうと思ったら、前の車がカードを挿入していなくて、止められる。それに巻き込まれたようなもんだろうか。まあいいさ、待つのは慣れている。


やんややんやと騒いでいる。一向に収まる気配がない。


思っていたより時間がかかっている。これくらいで終わるだろうという、根拠のない想定だが、想定よりも時間がかかっている。後ろにも、何組か並んでいて、日が傾き始めたこともあり、今日中に入れるのか、などと言い合って、少し焦っているようだ。


少し、列を離れて、どんな按配なんだろうと、騒ぎが見やすい位置に移動した。


そこを、門の近くにいた老人に発見された。川島も、老人を視界に捉えた。


小人じゃないのか。


老人は、隣にいる背の高い若者に何か言いつけた。言いつけられた若者は、老人に指差された川島を見付け、小走りで川島のところまでやってきた。


意外に、意外というのもおかしな話だが、美形(イケメン)だった。背が高く、シュッとした美形。小癪だ。


「お待ちしておりましたカワシマ殿。どうぞこちらへ。」


美形(ファストパス)を使って、川島は、行列をごぼう抜きして行った。


途中、揉めていた男が、川島を見て、なんであいつが入れるんだ、と喚いた。大人なので、いい年齢の大人なので、捨て置いてもよかったが、川島は、まだ丸くなっていなかった。いや、流石に、年齢的にも、もう丸くなりかけてはいたのだが、言い方に、少し引っ掛かった。ハッキリ言えば、カチンときた。文句を言われたままでは、気持ちが悪い。言い返しておこう。


男の元へ引き返し、


「なんでお前は入れないんだ?」


と詰め寄った。そして、


「なんでこいつは、入れないんだ?」


と門番に尋ねた。


「カワシマ殿…」


いいから、と美形(イケメン)の二の句を遮って、門番に答えるよう、促した。


門番は、後ろの美形(イケメン)を一瞥した後、


「この者は、通行手形を持っておりませんでしたので。」


外見なんかで判断するのは如何なものか、とはいうものの、ここに来たのはついさっきのことだが、()()()()()()()で、()()()()()の門番が、見ず知らずの、おそらくこの辺ではよくわからない格好(ジャージ上下)をした男に、敬語を使うとは思えない。背後の美形(イケメン)は、この町では、それなりの立場の男なのだろう。


「だから、落としたんだって!」


男は、悲痛な叫びを上げている。当人としては、そうなんだろう。だが、入場許可証をなくした奴を簡単に受け入れると、管理に綻びが生まれる。


川島は、新見の尻拭いをした、ある現場を思い出していた。

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