トンネルを抜けた向こうのふしぎな町
この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。
振り返ると、舗装されていない道が、森の向こうまで続いている。森の中でも、その道は続いているのだろう。
トンネルは、もうなかった。
トンネルを抜けた向こうのふしぎな町、か。昔、そんな児童文学があったな。よく妹と読んだ。
町に向かって、また歩き始めた。道は、よく踏み固められているが、均されていない。少し、歩きにくい。スニーカーにしてよかった。
オシャレすることから解放されて以来、年がら年中サンダルで過ごしている。今回は、流石にサンダルでは不味いだろう、と、秘蔵のスニーカーを引っ張り出した。大事なスニーカーは、加水分解でボロボロになっていた。絶句した。川島は、スニーカーブームの真っただ中にいた世代だ。狩られることはなかったが、同級生の大事なスニーカーが盗まれたりした。お年玉で買った思い出のバッシュが、経年劣化、加水分解でボロボロになっていた。
ボロボロになったものは仕方がない。動きやすい服もいるだろうしな、とスポーツ用品店で、あれこれと見繕った。最近のジャージは、機能性が上がって動きやすい。海外のスニーカーは、足が痛くなる。自身の幅広甲高に合わせたスニーカーとなると、国産だろう。スニーカーは、国産メーカーのものを選んだ。ジャージは、海外の方がデザインもよく、かっこよかったが、統一したい気持ちが強かったので、スニーカーと同じメーカーのものを選んだ。
ある映画の主人公が、買い物をするシーンでの、店主とのやり取りを、川島は気に入っている。
「他に買うものは?」
「ソックスは、あるか?」
「そこにある。白しか置いていないが、かまわないか?」
「かまなわない。俺は、白しか履かない。」
川島も、ソックスは、白を選ぶようになった。しかし、職業柄、すぐに汚れが目立つことに気づいて、黒に戻した。
汚れが目立たないから、ジャージは黒にした。しかし。履くものは、やっぱり白がいい。スニーカーは、白を選んだ。
新しい真っ白なスニーカーで、はじめて歩く道を進む。
しばらく歩くと、小さな川を渡る為の小さな橋が架けられていた。橋の向こうから、道は、石畳で舗装されている。町が近くなってきているのだろうか。風に乗って潮の香りもする。海も近い。
やがて、道の向こうに、城壁が見えてきた。




