木村昭寛、川島の話を知る
この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。
株式会社木村建設は、木村昭尊が一代で築き上げた建設会社である。株式会社木村建設は、地元に根差した建設会社である。株式会社木村建設は、同族経営である。
木村昭尊が社長を退き、息子の昭寛へ譲った際に、有限会社から株式会社へ変えた。昭寛は、二代目で傾き、という例文通りの男であったが、昭尊が目の黒いうちということもあり、常務から専務になった弟の昭仁がしっかりしていたので、株式会社木村建設は、安泰だった。
昭尊は、五十をこえてから、アメリカンバイクに嵌った。趣味を存分に楽しみたい、という理由で、現場を退いたが、ぎょろ目はちゃんと光らせてある。昭寛は、親父と昭仁がいるから、という安心感で、妙なプライドを出さず、うまくやっていた。営業だと言って、あちらこちらにコーヒーを飲みに立ち寄っては、仕事の話ではなく、軽薄な雑談を広げて、暇をつぶしていた。
その立ち寄る先のひとつに、たまたま絵島が居た。
「川島君って、うちの弟と仲のいい、あの川島さんか?」
「弟と仲がいいかどうかは、知らないけどな。」
川島の話を聞いた木村昭寛は、話のネタがひとつ増えたと喜び、
「昭仁のやつ、まだ知らないといいな。」
新型の高級車に乗り込むと、水たまりの穴ででこぼこした砕石敷の駐車場を、ラリー選手権のように、土ぼこりを上げながら走り去った。




