勝って兜の緒を締めよ
この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。
妹から、メッセージが送られてきた。
『お化けの出そうな家が出ている。』
一緒に、アドレスのリンクが貼り付けられている。
妹夫婦は、子供が少し大きくなってきて、今の賃貸アパートが手狭になった。そこで、マンションを買うか、一軒家を建てるか、中古のいい物件はないか、と不動産情報を調べては、建築畑である兄の川島に、助言を仰いでくる。建設と不動産は、似てはいるが、違う業界だ。しかし、遠く離れてもいない。知っている範囲で、川島は助言に応じている。
兄の怪談好きを知ってか、検索中、兄が興味を持ちそうな物件を見つけて、メッセージを送ってきたのだ。
リンク先を開くと、よく見聞きする、有名な不動産賃貸仲介の大手サイトに繋がった。しかし、サイトを開いた直後、
『このサイトは安全ではないため閉じてください。』
と画面に表示され、それ以上どうにもできなかったので、閉じた。
その旨、妹に伝えると、
『スクショして送ってあげる!』
と返ってきたので、
『待て!』
『待つ!』
手を止めさせた。
何かが始まりそうだ。まるで、ホラー映画のオープニングのような流れだ。これ以上の深追いは良くない気がする。好奇心は猫をも殺す。ここでストップだ。
『これ以上、この物件を追及するな。やめとけ。かかわるな。』
兄が、こういうことを言い出した時は、言うことを聞いておいた方がいい。生まれた時からの長い付き合いで、経験上、兄の言葉で、聞いておいてよかった、聞いておけばよかった、という言葉がある。そういう言葉には、他人には気づけないくらいの、何か独特な伝わりがある。妹は、言うことを聞くことにした。
『わかった!』
妹にはそう言っておきながら、後日、川島は、興味本位で、もう一度そのサイトを開いた。
『お探しのページが見つかりませんでした。』
と表示された。
やはり、と直感的に確信した。あれは、何かのはじまりだったんだ。たぶん、きっと、他の誰かが、はじめてしまったのだろう。
自分は、はじめなかった。
川島は、新しい展開が始まることを阻止できたことに、平穏な日々の確保に、満足して、ホッとした。
いや、油断した。




