骨休め
この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。
工事が無事に終わり、近隣へ、終了のご挨拶に回った。
メモに書いてあった石井という家はなく、石田と石川という家があった。どっちだ。石田の家は、比較的新しいが、建て直したのかも知れない。
両方に聞いても問題ないのだろうが、やめておいた。これが、どちらかの家しかなかったのなら、メモを間違えたのだろうな、とその家に聞いただろう。しかし、似た名前の家が2軒ある。何か、仰々しい表現になるが、運命に拒まれたように感じた。
今回は、やめておこう。
井戸について、追及するのは、やめておこう。会うべき時機に会うべきものと出会う。今回は、井戸を追求するタイミングではない、と川島は判断した。
しばらく骨を休めろ。
部長のお達しがあったので、休日出勤を振り替えて、大型連休を手に入れた…のはいいものの、何をしたものか。観たくても時間が取れなくて観れなかった映画を観ようか。それとも、久しぶりに映画館のスクリーンで、と地元にいくつかあるシネコンの上映スケジュールを調べるも、こんな時に限って、観たい作品がない。
少し遠出して、普段は行けない有名店、その土地の名物。グルメ旅行もいい。しかし、今、無性に食べたい何かがない。欲求が生まれていない。
これはおそらく、特に何をするでもない、ただ時間だけが過ぎていく、毎日同じことを繰り返すだけの連休になる、という確信にも似た予感が生まれた。
実際、その通りになって、川島は、文字通り、ゆっくり休んだのだった。




