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川島式直接排除型除霊工法  作者: いけたらいく
§6.施工事例その4 山の上の洋館
229/231

評価基準

この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。


「そういや観たよ。すすめてくれたアニメ。」


「なんですか急に。」


「いや、思い出したから。」


「話を戻す気ゼロじゃないですか。」


「そんなこと言ったって、しょうがないじゃないか。」


諦めた。これ以上の抵抗は無駄だ。


サブスクリプションの動画配信サービス(有料)に入会し、気になるものを観れるだけみた後、観るものが見当たらなくなって、そのまま放置していたのだが、これではもったいないと退会を決意。しかし、退会する前に、最後のお浚いというか、そういうニュアンスで再び観始めていて、さあ、何かないものか、とオススメを聞いて回っていたのだ。


「どうでしたか?」


「観れなくもなかった。」


ダメだったみたいだ。


()()、面白いと思ってすすめたのか?」


「話題の新作でしたし、評価も高かったので、」


ん?


「まさか、観てないものをすすめたのか?」


「そうですね。そのサブスク、僕は入っていないので、」


「えー!」


「言いましたよね。僕は入っていないからわからないって!」


「そうだっけ。」


「そうですよ。」


ふたりとも複雑な表情を浮かべて、それぞれが別々の甘そうなコーヒーを啜った。


「どこがダメだったんですか?」


「ダメというか…」


強く批判するほどではない、という。


だが、案の定、始まった。


まず、そのアニメは、『冒険者パーティーを追い出された』というよくある設定だった。


「追い出された経緯と理由に対し、()()納得がいかない。」


おそらく、いや、確実に、()()ではない。


「俺の経験則によるものだから、異論は認めるのだがな、」


認めるものの、受け容れはしない。そういう男だ。


「実力不足だからクビだ!とおっしゃるわけだ。」


「ああ、そういうパターンなんですね。」


「で、しばらく観ててな、」


「はい。」


「パーティーがメンバーである主人公を実力不足だと判断した経緯と、主人公離脱後のパーティーの()()がな、()()()()()()なんだ。」


()()()()()()ですか。」


「隣の芝生は青く見えるって奴なのかな。他者と比較して明らかに実力が劣っているから、これから先、自分たちが上に行く為には、切り捨てるしかない、と言っているんだ。」


「はい。」


「でも、その主人公、めちゃめちゃすげーんだわ。」


「そうでしょうね。大体、追い出され系は、古巣に対して、ざまぁみろパターンなので。」


「それはいいんだが、」


それはいいんだ。


「主人公を追い出した後のパーティー側が総崩れを起こすんだ。」


「胸がスカッとする展開じゃないですか。」


「まあそれはいいんだが、」


よくないのだろうけど、


「追い出す側の連中が、定量化による評価をしているんだ。」


「はい?」


「わが社の人事考課ではな、社員を査定する場合、資格をいくつ持っているとか、売り上げがいくらだったとか、数値としてわかりやすくしないと、上の人間は評価の判断材料として見てくれないんだよ。」


「あ、はい。」


「あの子はすげー頑張っているとか、あの人じゃないとあの現場はおさまらないとか、そういう数値化できない、定量化が難しい評価基準は、上に上がっていけばいくほど、なかなか認められないんだ。」


「なんとなくわかります。」


「だから、若手には、資格を取れ、と言っている。仕事がいくらできても、それは定量化が難しい。資格を取った方が分かりやすいから、評価されるぞ、と助言している。」


「そうなんですね。」


「上層部や第三者には、定量化して評価の基準をわかりやすくしてあげないと、()()ではない。」


何の話だ?


「だがな、現場レベルではな、肌で感じ取れるんだよ。」


「何をですか?」


「その人ができるかできないかを、だ。」


「あー、そういうことですか。」


「前線である現場で、それも長年同じ作業班で従事していたメンバーの貢献度を、感覚的にも掴めていないってのは、致命的すぎる。いるよ、そういう奴。でもチームのほぼ全員がそうってのは、少しおかしい。」


「は、はあ。」


「排除が、上層部や第三者による誤った判断ならわかる。だがそうじゃない。」


あ、ヒートアップしてきた。


「人間関係によるものならわかるよ。虐めだとか嫉妬だとか差別だとか、そういう人間関係によって排除するというのは、わかる。でもそうじゃない。」


「そうですね。」


「同じチーム内で、定量化による評価の排除だった場合、その評価は絶対的に正しい判断でなければならない。なんで追い出した側がめちゃめちゃ崩れるんだよ!」


「はい、はい。」


「相性というものがあるし、適材適所というものがある。追い出された後の主人公が大活躍する理由がそこならわかる。でも主人公はちゃんと機能していたんだ!なんで追い出したんだ!バカなのか?バカなんだろうな!追い出した理由が理由になってないんだからな!」


()()も納得していないじゃないですか!」


「うん。そうだな。熱くなった。パフェでも食べて少し冷やそう。」


メニュー表を手に取る。


「川島さん。」


「何かね中務君。」


「会社の人事で、何か腹の立つことでもあったんですか?」


「うん。」


社外秘なので言えないけど、とデザートのページを探してメニュー表を捲った。

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