恩人、宮田
この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。
最初の2回は、事故でもなかったし、運送会社のトラック、いわゆる緑ナンバーだったから、現場への影響は、荷物を持ってこられなかった、ということだったが、3回目は、少し事情が違った。新田組のトラック、つまり白ナンバーが、現場への材料の運搬中に起こした事故だった。下請けの事故となると、少し話が違う。
結局、元請けへのお咎めは特になかったが、その週の工事は休止して、再開を翌週以降にズラそうという話になった。土日が休めるのはありがたいが、週末平日に、何もすることがないというのは、暇を持て余してしまう。
川島は、会社のパソコンを使って、暇つぶしに地図サイトを開いて、隣県の温泉を検索した。
地図上の温泉を巡っては、口コミを読んだ。ぬるい。サウナの熱さは、全国トップクラスだ。ぬめっと感がある。ロッカーが100円玉を人質にとるタイプだ。露天がない。有名だから人が多いだけだ。温泉を探しては、口コミを読む。その繰り返しだ。
知る人ぞ知る名湯だ。泉質は、県内ナンバーワンだ。道が細くて分かりにくいかも。
ここだ。たぶん、ここだ。
目当ての温泉を見つけた。多分ここだ。恩人、宮田が語っていた話の断片と合致する。では、この温泉から山手に上って直ぐの家がそうだ。頼む、とストリートビューに切り替えた。田舎で、細い道だから、ストリートビューがないかもしれない。頼む、と。
いけた。
立派な平屋の日本家屋。生垣に囲まれていて、玄関は道に面していないが、かろうじて見える。表札、というより道場の看板のようなものが見えた。大和だとか平和だとか、神とか教という字が見えた。見えた文字の羅列で検索をかけると、神道系の新興宗教がヒットした。公式サイトに、お祓いという表現を見つけた。ビンゴ。
恩人、師と呼んでもいい。大先輩の宮田が、始発を待つホームのベンチで、一度だけ川島に話した体験談がある。




