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川島式直接排除型除霊工法  作者: いけたらいく
§1.工法成立
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安全第一

この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。


「サークルエンドには、絵島をよこせと言ってある。」


お前もその方がいいだろうと、コーヒーに砂糖を入れた。


移転したばかりの新社屋。本社2階、建築部のミーティングルームは、まだ新築の匂いがしている。これまで起こったこと。処理中のこと。再開時期について。詳しく説明を受けたが、自分の仕事はただ一つ。安全に、無事故無災害で工事を終わらせることだけだ。


「現場を見に行っても?」


部長は、首を横に振る。まだダメだ、と言って、


「さっきも言ったように、後処理に思ったより時間がかかっている。少し待ってほしい。しばらくは、金井の手伝いをしていてくれ。」


後は、他愛のない雑談をして、解散した。金井を喫煙所に誘い、そこでも雑談をした。


「また新見さんの尻拭いだな。」


と笑う金井を軽く小突いて、


「あと何回ケツを拭きゃあいいのかね。」


ペットボトルを半分に切って作ったミニ消火バケツで火を消して、事務所に戻った。


安全は、意識が第一である。それが川島の信条である。どんなに設備を整えても、意識が伴わなければ、安全設備は意味をなさない。また、設備が整っていなければ、意識が高くても、不安全である。ただし、その優位性でいえば、意識が上だ。安全に作業するという意識を持つことが、安全への第一歩である。


川島は言う。大真面目で言う。何の為に安全帯をするのかを知らなければ、低い所でも危ない。言われたからするような安全帯では、自分の命は守れない。工事において、お金と時間があれば、大体のことは取り戻せる。解決できる。しかし取り戻せないものがある。命だ。命を守る行為こそが、安全の本質である。


最も安全な状態とは、工事をしていない状態だ。将棋の盤面で負けない状態が、1手も指してない状態であるように。工事は、その行為そのもの、作業そのものが不安全なのだから、完璧な安全を求めることはできない。だから、完璧な安全設備は存在しない。だからこそ、意識が大切なんだ。


今日一日、無事に過ごし、家に帰る。これが安全意識だ。


「わかったわかった、わかっているよ。」


と馴染みの職人は、何度も聞いたその口上に笑って、


「ちゃんと今日も、五体満足で家に帰って、かーちゃんをヒーヒー言わせてやるよ。」


と卑猥なジェスチャーを披露した。


「セクハラで訴えるぞ。」


作業員たちが笑う。ここまでが、ワンセット。月初めの安全大会を兼ねた朝礼のルーティーンだった。


数週間後に控えた社宅解体。もう事故は起こせない。安全第一。いつもどおり、安全第一でいこう。


今度の休み、年初の安全祈願で本社が行っている神社に行こう。


川島は、わりかし、()()()()()()を大事にする。


怖い話とは別に、剣豪小説も好んで読む。好きな剣豪は、東郷重位、柳生連也、男谷精一郎。嫌いな剣豪に、宮本武蔵がいる。五輪の書が、どうやら合わなかったらしい。


ただ、宮本武蔵の残した言葉で気に入っているものがある。


神仏は尊し、されど恃まず。


神さまに安全祈願をしたからといって、神さまが守ってくれるということはない。安全を怠れば、祈願関係なく、危険だ。人事を尽くして天命を待つ。安全に工事を進めることの神さまへの宣言。人の手ではどうしようもできないその先は、神さまにゆだねる他ない。


今度の工事も、やるしかない。


川島は、腹を括った。

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