13、結婚
「アンナ、随分いるな」
「本当ですね。大勢います」
私達は、2人だけで結婚式を執り行おうと思っていたのに、会場には、大勢のゴブリンがいた。
ゴブリンだけではなく、ダークエルフのガルミエさん、それにテリア様も参列している。
この会場は、城内の一画にあり、祈りを捧げられる祭壇がある。
もちろん、祀られているのはウー様を含めた12神。
この祭壇の凄いところは、12神の像がそれぞれ貴重な鉱石で出来ていて、光輝いている。
「仕方がない。皆の前で結婚式をしよう」
「はい」
今日の結婚式のために、セイフィード様も私も、礼服を新調している。
セイフィード様の礼服はズバリ魔王ぽい。
全体的に黒なのだが所々、金色が配色されいて、高尚な雰囲気を醸し出している。
そんな魔王ぽい礼服を着たセイフィード様は、カッコ良すぎて失神してしまいそうだ。
私の礼服は白のドレス。
この白のドレスは、真珠のように光沢があり、所々に本物の宝石が散りばめられている。
宝石が使われているが決して過美ではなく、上品で洗練されている。
人間界では、王族でさえこのようなドレスを調達するのは難しいだろう。
それぐらい高価で貴重なドレスだ。
もちろん、この礼服を仕立てたのはゴブリンさんだ。
だからゴブリンさん達に今日の結婚式がバレているのは仕方がない事だった。
私とセイフィード様は、参列者の横を通り過ぎ、ウー様の像の前に立つ。
ウー様の像にお辞儀をし、私達はお互い向き合い、手を取り合い、視線を交わす。
通常、人間界の結婚式は光のエルフが主祭するのだか、魔界にはいないため、私達2人で誓いの言葉を考え、宣誓することにしている。
最初の1つだけはお互いで考え、残りの3つは各自で考え今日まで内緒にしている。
だから、大勢の参列者がいる前で、宣誓するのは少し恥ずかしいし緊張する。
まず最初にセイフィード様が言葉を発し、後に私が言葉を発する。
「アンナに誓う。俺の全てをアンナに捧げる事を誓う」
「セイフィード様に誓います。私の全てをセイフィード様に捧げることを誓います」
「アンナに誓う。俺の持てる力の全てをかけてアンナを守ると誓う」
「セイフィード様に誓います。嘘偽りなく正直に話す事を誓います」
「アンナに誓う。アンナの苦しみ、悲しみ、不安、全てを分かち合う事を誓う」
「セイフィード様に誓います。毎日セイフィード様が楽しく過ごせるよう、笑顔でいることを誓います」
「アンナに誓う。俺は永遠にアンナと共に生きる事を誓う」
「セイフィード様に誓います。一生セイフィード様のそばにいて離れないことを誓います」
私とセイフィード様は結婚指輪をお互い付け合い、誓いのキスをしようとした時、笑い声が響いた。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ」
笑い声の主は、ウー様だ。
ウー様が魔界の祭壇に現れた。
会場の皆んな、ウー様に釘づけで、ポカンと口を開けている。
「ウー様!」
「誠にもって、良い宣誓じゃったぞ。アンナ、セイフィード」
「もしかして、ウー様。私達の結婚を祝福するために来てくれたんですか?」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。もちろんそうじゃ。結婚式には神の祝福が無いと始まらんじゃろ」
「ありがとうございます。ウー様」
「それでは始めようかのぉ。コホンっ。今、セイフィードとアンナは、ウーの名によって夫婦となった。わしゃ、その夫婦の愛を祝福しようぞ。愛溢れる二人に、満ちあふれる祝福を注ごうぞ」
ウー様がそう言うと、ウー様は光り輝き、会場内を光りで覆い尽くす。
あまりの光に目をギュッと閉じてしまう。
しばらくしてそっと目を開けると、辺り一面、天界の花々が咲き乱れていた。
「わぁー。きれい。とてもきれいです。ウー様、ありがとうございます。とても嬉しいです」
「そうじゃろ、そうじゃろう。この花々はおそらくアンナが生きている間は咲き続けてくれるぞ」
「本当にありがとうございます」
「それじゃあ、早速、美味いもんでも食うかのぉ。もちろんお酒はあるかいのぉ?」
「はい。大広間にてご用意しております。ご案内します」
執事ゴブリンが応える。
どうやら結婚の祝賀パーティを準備していたらしい。
私とセイフィード様はそんな話聞いてなかったので、びっくりしている。
もしかして私達を驚かせたかったのかな。
私達は大広間に行き、大いに楽しんだ。
ウー様とテリア様は酒をガボガボ飲み、愉快そうに歌を歌っている。
その歌に合わせ、ダークエルフのガルミエさんは楽器を奏でている。
私とセイフィード様も一緒に踊ったりして楽しんだ。
もう、皆んな無礼講で大はしゃぎ。
長い間楽しんだけど、一息つくため、私とセイフィード様は大広間を抜け出しベランダへと出た。
「アンナ、寒くないか? 上着を羽織るといい」
セイフィード様は私に上着を掛け、その上からギュッと私を後ろから抱きしめる。
「ありがとうございます」
「意外にも盛大な結婚式になったな」
「はい。とても素敵な結婚式になりました。嬉しいです」
「そうだな」
「それと、セイフィード様、私の体に掛けている魔法を解いて下さい」
「何の事だ?」
「私の腿に印がある魔法です。私、セイフィード様のお父様にこの魔法のこと聞いたんです。私の体に掛けられている魔法は身代わりの魔法だって」
「⋯⋯解くのは無理だ」
「どうして無理なんですか?」
「無理なものは無理だ」
「どうして無理か、理由を教えて下さい」
「俺はアンナがいなければ生きていけない。だから魔法は解かない。絶対に」
「でも、私、セイフィード様の命を奪ってまで生きたくないです。私の代わりにセイフィード様が死ぬなんて嫌です」
「それでも、魔法は解かない。俺には無理だ。だからアンナ。俺より長生きして欲しい」
セイフィード様って頭も良くて、魔力も強いのに⋯⋯、心は私より弱いかもしれない。
私がセイフィード様の心を支えられるかな⋯⋯、支えたいな。
「セイフィード様⋯⋯。もう、わかりました。セイフィード様より私、頑張って長生きします。その代わりセイフィード様には、私が長生きするよう私を快適に過ごさせる義務がありますからね」
「ああ、わかっている」
「じゃあ、もう一度、私の事好きって言ってください」
「ああ、これからベッドの中で、何百回も言ってやる」
セイフィード様は私をお姫様抱っこすると、すぐに転移し、私をベッドに押し倒す。
って、ええーー!急展開過ぎる。
「あっ、あの。セイフィード様⋯⋯。まだ、パーティ終わっていませんし⋯⋯」
「アンナ、愛している」
セイフィード様はそう言うと、私にキスをした。
そして私はそのまま、セイフィード様の温もりに包まれた。
知らない内に私は寝ていて、何故か夜中に目が醒めた。
隣にはセイフィード様が深く寝ている。
寝顔も、カッコイイ。
こんなカッコいいセイフィード様が私の旦那様なんて、夢のよう。
私はベッドをこっそり抜け出し、先程結婚式をした祭壇がある会場へと、一人で行くことにした。
天界の花々を少しだけ摘み、ベッド脇の花瓶に飾ろうと思う。
そうすれば、セイフィード様が起きた時に、花を見て和んでくれるかもしれない。
何となく体が痛くて歩くのが辛いけど、それが何とも嬉しい。
今まで無いほど心が満たされている。
祭壇がある部屋へと入ると、天界の花々は元気に咲き乱れている。
この部屋だけは魔界ではなく、天界にいる気分になる。
花々の上に寝転んで上を見れば、青々とした空が私の瞳に蘇る。
その時、突如、私を覗き込む影ができる。
誰かと思えばウー様がほろ酔い加減でプカプカと浮いている。
「ウー様。随分お酒を飲まれたようですね」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、お酒が格別に美味しくてのぉ。また飲みこようかのぉ」
「ええ、是非いらして下さい。その時には私もケーキを焼いて待っています」
「楽しみじゃのぉ。さて、そろそろ、わしゃも帰るかとするかのぉ」
「はい。ウー様。本当に、色々ありがとうございました」
ウー様は光り輝き、光に包まれて消えそうになる瞬間、何かを思い出したように私の方に振り返り、声を掛けた。
「そうじゃ、アンナ。幸せか?」
「はい。とっても幸せです」




