9、半分
ゲリーは剣を構え、逃げ道はないか、周りを見渡す。
リーフセラーは地下にあったが爆風のせいで天井が吹き飛び、外へ続く大きな穴ができている。
ゲリーはその穴から、逃げ出そうとしたが、爆風の騒ぎを聞きつけた騎士らが、ゲリーを逃さないようにその穴の周りを取り囲んでいる。
「観念して、投降しろ。全てを洗いざらい話せば命までは奪わない」
第二王子がゲリーに、にじり寄る。
「そんなの、信じられるかっ」
ゲリーは私達とは反対側を振り向き、騎士目掛けて、突進した。
騎士は複数人でゲリーと剣を交えたが、ゲリーの剣さばきは凄まじく、押し倒される。
その隙に、ゲリーは逃げようとした。
しかし、瞬時にセイフィード様が呪文を唱える。
『ヴィアーガ・ヴィアーガ・レラージュ・矢を放て・敵を射よ』
呪文の詠唱と共に魔法陣が、セイフィード様の前方に浮かび上がり、その魔法陣から緑の矢が複数放たれたる。
その矢は、ゲリーの体に突き刺さり、ゲリーは倒れ込んだ。
「くそっ⋯⋯、俺はっ、まだ死なない」
ゲリーは矢を受けてなおも、立ち上がり、自分の手首を斬りつけ、血を大量に噴き出させた。
同時にゲリーは呪文を唱え、ゲリーの流した血で魔法陣が形成される。
『スルジェーレ・エビーレ・アイム・血を煮えたせ・業火を起せ』
ゲリーの血で形成された魔法陣から、蛇と猫と人の3つの頭を持ち巨蛇に乗った闇の精霊アイムが現れた。
その闇の精霊アイムは、松明を持ち、その松明を吹きかけ、周りを燃やし始める。
「まずいっ」
セイフィード様がそう言うと、素早く魔法を唱える。
『フロー・フロー・ミューゼ・地を満たせ・地を潔めよ』
巨大な魔方陣が部屋全体に広がり、その魔法陣から、まるで水のような光が噴き出し、地面を満たす。
その水のような光は、闇の精霊アイムが放った炎を消しさった。
しかし、闇の精霊アイムはその光を掻き分け、第2王子とセイフィード様に突進してきた。
「セイフィード、アイムは任せたっ」
第二王子はそう言うと、闇の精霊アイムを避け、逃げようとしているゲリーに切り掛かる。
ゲリーは第二王子の剣を受け止めたが、負傷しているせいで力負けし、片膝がついた。
「もう、終わりだ⋯⋯」
第二王子が冷たい声で、ゲリーに呟く。
「ふざけるなーーっ」
ゲリーは、第二王子の剣を受け流し、第二王子の脇腹に剣を振りかざす。
しかし、その瞬間、第二王子はゲリーを蹴飛ばし、ゲリーの足に剣を突き刺した。
剣は足を貫き、地面にまでめり込む。
「ぐぅっっっ」
ゲリーは、鈍い呻き声を発した。
もがき苦しんでいるゲリーを騎士達が取り押さえ、縄をかけられた。
闇の精霊アイムは、第二王子とゲリーが闘っている間に、セイフィード様の魔法で楔を打ち込まれ、動きを抑え込まれている。
しかし、闇の精霊アイムは奇声を発しながら暴れ、打ち込まれている楔を今にも外そうとしている。
セイフィード様は目を閉じ、銀色の杖を出現させ、静かに呪文を唱え始めた。
『イルミナータ・ルーシャ・フィオーラ・闇を切り裂け・闇を消し去れ』
銀色の杖から、光が溢れ出し、その溢れ出した光は一直線に闇の精霊アイムを貫く。
貫いたところから、光が溢れ出し、その光が闇の精霊アイムを侵食し始め、飲み込む。
闇の精霊アイムが光に全て覆われると、その光が弾け散り、闇の精霊アイムは消え去った。
「ふぅ」
セイフィード様は流石に疲れたようで、ため息をした。
私は居ても立っても居られず、セイフィード様に駆け寄る。
「セイフィード様、勝ちましたよね? もう終わりましたよね? もう⋯⋯、大丈夫ですよね?」
私、1人でテンパって騒いでしまっている。
冷静でなんかいられない。
私の中で、恐怖、怒り、驚き⋯⋯、もう色んな感情がぐちゃぐちゃにに入り混じっている。
足なんか震えてガクガクしている。
しかし、シャーロットは、全く動じていない。
凄すぎる、尊敬してしまう⋯⋯。
「あぁ、半分終わったな」
セイフィード様は私を抱きしめ、落ち着かせるように、頭を撫でてくれた。
「半分? 半分しか、終わってないんですかっ? どうして⋯⋯?」
「まだ、黒幕を捕まえてないだろう?」
第二王子が私達の会話に割って入った。
「あっ、そうでした⋯⋯。捕まえることができるでしょうか?」
「ゲリーと、その男が口を割れば容易く捕まえられるんだがな⋯⋯」
第二王子はゲリーと伊達男を見つめている。
ゲリーと伊達男は騎士達にガッチリ拘束され、連れて行かれようとしていた。
「おそらく、口を割らなくても捕まえることができると思いますわ」
シャーロットがたおやかに言葉を発した。
そしてシャーロットはつけていたネックレスを外し、セイフィード様に渡す。
セイフィード様、シャーロットにネックレスあげたの?
でも、シャーロットはネックレスをセイフィード様に返しているし⋯⋯⋯。
一体全体どういう事なんだろう。
私が、全くわけがわからない、という表情をしていたら、その表情を見てセイフィード様がクスッと笑い、説明をし出した。
「このネックレスは、アンナが考えた魔法陣を施してある。アンナ、昨日見せてくれただろう。音や人の声を保存できる魔法陣を。その魔法陣を俺が少し改良して、このネックレスに施した。ただ、この魔法陣を発動するためには魔力が必要だから、アンナではなくシャーロットに託しておいたんだ」
音や人の声を保存できる魔法陣⋯⋯⋯。
あっ!
前世の録音機器を参考にして作った魔法陣だ!
オリヴィア様が、嘘の婚約話を私に言ったのに、それを言っていないと言ったから、今後同じことが起きた時に、証拠が取れるようにと思って作った魔法陣だ。
そう、怒りに任せて作った魔法陣。
でも⋯⋯、その魔法陣が、今回の件とどう関わっているんだろう。
セイフィード様は、まだ理解ができていない私のために、さらに説明を続けた。
「シャーロットに、もしゲリー達と遭遇したら、この魔法陣を発動するように言っていたんだ。黒幕と繋がる発言をもしかするとするかもしれなかったからね。とりあえず、何が保存されているか聴いてみよう」
セイフィード様はネックレスを手のひらに乗せ、魔法を唱えた。
ネックレスが、ほのかに光ると、そこから会話が聞こえてくる。
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《「っ、どうして、どうして、オリヴィア様が邪魔なのはシャーロットじゃなく、私でしょ。それなのに、なんで⋯⋯⋯」》
《「うん? なんで俺達がオリヴィア様の差し金だと知っているんだ?」》
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⋯⋯⋯さっき、私と伊達男が会話した内容だ。
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私が考え込んでいたら、第二王子はポンっと手のひらを拳で叩いた。
「これは、凄い! ゲリー達がオリヴィアと繋がっていると証言している。オリヴィアを糸口にし、オズロー男爵を捕らえることができそうだ」
あっ、なるほど!
私にもわかった。
これで、本当にオリヴィア様を捕まえることができたら、凄い。
もしかして、私の魔法陣、役に立つのかな⋯⋯⋯。
そしたら、凄く嬉しい。




