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ファンタジーな世界に転生したのに魔法が使えません  作者: 花が咲く
第5章<恋敵オリヴィア様>
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2、木陰

 今日は、第2王子から招待を受けた孤児院のチャリティーイベント当日。


 私は子供達のためにクッキーを焼き、シャーロットは使わなくなったリボンを再利用して髪飾りを作った。

セイフィード様はおそらく⋯⋯⋯、現金を寄付したのだろう。


 私は以前、セイフィード様から頂いた青色のドレスをまた着て、チャリティーイベント会場に向かうことにした。

シャーロットも、第2王子と会えるからか、とても嬉しそう。


 チャリティーイベント会場に行くと、第2王子が私達をお出迎えした。

王子がお出迎えって⋯⋯⋯、全く王子らしくない。

そんな第2王子に私が呆気にとられていたら、第2王子がシャーロットを抱きかかえどこかに行ってしまった⋯⋯⋯⋯。

第2王子は、私達をお出迎えしたのではなく、シャーロットだけをお出迎えしたらしい。

それにしても、抱きかかえるなんて、第2王子って意外に大胆なんだな。

その後すぐに、セイフィード様の馬車がやってきた。


「ご機嫌よう、セイフィード様」


「あぁ」


 私はいつものように挨拶し、セイフィード様もいつものように一言返事する。


「シャーロットは第2王子様と一緒に会場の中に行ってしまいました。私達も早く行きましょう」


 私はセイフィード様の手を取り、歩き出そうとしたがセイフィード様は動かず、イベント会場をじっと見回す。


「俺は、あの木陰にいる。アンナは楽しんでこい」


 セイフィード様は、会場内の人気のない木陰を指差した。


「どうしてですか?」


「俺がいると、子供達が怖がるからな」


「じゃあ、私も一緒にいます」


「勝手にしろ」


「はい! 勝手にします」


 私はセイフィード様の腕に手を絡ませ、2人で木陰に行き、腰を下ろした。

私は身体を密着させるように、セイフィード様の横に座る。

自分から密着させておいてなんだが⋯⋯、心臓が爆発しそうなぐらいドキドキしている。

さらに、セイフィード様の肩に、私の頭も乗せちゃおうかと⋯⋯、(よこしま)な考えをしてた時、突如セイフィード様の手が私の首筋に伸びてきて、私の鎖骨あたりを指で触れた。


「やっぱり、少し寂しいな⋯⋯⋯」


とセイフィード様が言うと、突如呪文を唱えた。


『ヴィ・デート』


すると、私の首元にキラキラ光るネックレスが付けられた。

ネックレスのチェーンはシルバー色で、ペンダントトップはブルー色の小さな丸い宝石が5つくっつき花の形をしている。


「わぁ~、きれい」


「気に入ったか?」


「はい。頂いちゃっていいんでしょうか⋯⋯」


「あぁ、もちろんだ」


「⋯⋯⋯セイフィード様、この頃、私を甘やかしすぎです」


「そうか、俺はアンナと出逢った頃から、甘やかしてきたと思うが」


 セイフィード様はそう言いながら、指で私の鎖骨から首筋をなぞり、口元に触れる。

もしかして、もしかして⋯⋯、とうとう、私とセイフィード様⋯⋯、キ⋯⋯キスしちゃう⋯⋯⋯。

と思い、私は目をギュッと閉じた。

セイフィード様の顔がゆっくり近づいてくるのを感じる⋯⋯⋯。

その時、あろうことか⋯⋯、私のお腹が盛大に鳴った。


「ギューーーーーギュルギュルルっ」


「クククッ」


 セイフィード様は笑いだしてしまった。


「ご、ごめんなさい」


 私は恥ずかしくて、頬が熱くなるのを感じる。


「アンナ、何か食べてこいよ」


「じゃあ、何か食べ物を取ってきます。それで一緒に食べましょう」


 私はイベント会場に設置してある食べ物コーナーに、一目散に駆け出した。

そして私は、セイフィード様と私の2人分の食べ物を両手いっぱいに持ち、イベント会場を歩いていると、前方からオリヴィア様がこちらに歩いてくるのが見えた。


 一瞬、逃げ出そうと考えたが、私が逃げる必要はないと思いとどまる。

でも、関わらないほうが無難だよね⋯⋯⋯。

私はオリヴィア様と目を合わせないように顔を伏せる。

それなのに、オリヴィア様は、私に話しかけてきた。


「相変わらず、浅ましいですこと⋯⋯」


オリヴィア様は私の行く手を(さえぎ)り、冷ややかな視線を私に浴びせる。


「あっ、浅ましいって何がですか?」


「いくら家が貧しいからって、そんなに食べ物を抱えていらっしゃって、意地汚くて、浅ましいってことですわ」


「こっ、これは2人分で⋯⋯」


 確かに⋯⋯、ちょっと恥ずかしいくらいの食べ物を持っている。

意地汚いって思われても当然かもしれない⋯⋯。


「それに、そのドレスも、そのネックレスもセイフィード様からの頂き物ですわよね」


「⋯⋯⋯そうですけど」


「アンナ様はそれに対して、何かお返しを差し上げたのかしら」


「そ、それは⋯⋯、それより嘘をつくほうが、浅ましいと思います。オリヴィア様、私に嘘つきましたよね」


「嘘⋯⋯⋯って何のことかしら」


「オリヴィア様がセイフィード様と婚約するって私に言ったじゃないですか、それって嘘でしたよね」


 私はオリヴィア様を精一杯、睨みつける。


「わたくし⋯⋯、そんなこと言っていませんけど」


 オリヴィア様は素知らぬ顔で平然と答えた。


「えっ、言いました。絶対に私に言いました。ラウル先生のお茶会の時に」


「⋯⋯と言われましても、全く覚えがございませんわ」


 そんなっ、オリヴィア様の嘘で私がどれだけ傷ついたと思ってるんだ⋯⋯。

怒りがフツフツとこみ上げるが、反論する言葉が出てこない。


「そうそう、アンナ様。セイフィード様とご婚約されたそうですわね。おめでとうございます」


「あっ、ありがとうございます」


 オリヴィア様からお祝いの言葉を頂けるなんて予想外だ⋯⋯⋯。

反対に恐ろしい。


「それで、持参金は用意されたのかしら」


 オリヴィア様は意地の悪い微笑みを口元に浮かべている。


「えっ、持参金は⋯⋯」


 持参金⋯⋯、必要だったんだ。

知らなかった。

どうしよう⋯⋯、帰ったらすぐにゾフィー兄様に確認しないと。


「アンナ様、まさかとは思いますが、持参金をお持ちにならないことなんて、ありませんわよね。持参金をご用意できないと、婚約解消になるお話を多々、お聞きしますわ。くれぐれもお気をつけあそばせませ」


 とオリヴィア様が言うと、私から去って行った。

婚約解消なんて、絶対に嫌だ。

でも、セイフィード様と結婚するのに、どれくらい持参金が必要なんだろう。

全く想像がつかない。

私自身のお金なんて全然ないし、これから先、稼ぐこともできない。

不安で胸が苦しい。


 オリヴィア様の言うことなんて気にしたくないのに、今回も私に胸に深く突き刺さる。

私はセイフィード様から色々頂いているのに、確かに何もお返しができていない。

私だってセイフィード様に、何かお返ししたい。

何をあげられるだろうか⋯⋯。


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