13、心配
セイフィード様との縁談話があったその日は、有頂天になってしまったけど、次の日になって、よくよく冷静になって考えてみると、私でいいのか不安になった。
セイフィード様の家、ネヴィリス伯爵家は代々、魔力がとても強い家系のはず。
そんな系譜の中に、全く魔力がない私が入ってしまっていいのだろうか。
セイフィード様のお父様、私を認めてくれたのだろうか⋯⋯。
セイフィード様が独断でこの縁談を進めてたりしないだろうか⋯⋯。
とても不安になってきた。
悩んでもしょうがないので、私は早速ケーキを作って、セイフィード様の屋敷に行くことにした。
ただ、今日は時間もないので、プリンを作ろうと思う。
私の大好物のプリン。
プリンが出来上がると、その匂いにつられて、シャーロットが台所にきた。
「アンナ、甘くていい匂いだわ。今日は何を作ったのかしら」
「プリンだよ。簡単な材料で、簡単にできるよ」
「これから、セイフィード様のところに行くのかしら」
シャーロットはなんだか、嬉しそう。
「うん。そうだよ⋯⋯、シャーロットもう知ってる? その⋯⋯、私とセイフィード様のこと⋯⋯」
「えぇ、アンナ、おめでとう」
「ありがとう、シャーロット。私、とても嬉しい」
「えぇ、わたくしも嬉しいですわ」
「それでね、シャーロット⋯⋯、前にオリヴィア様のことで何か言いかけたでしょ⋯⋯、あれはどんな話をしようとしてたの?」
「わたくし、あまり人の悪口は言いたくなかったのだけれど⋯⋯、オリヴィア様、実は良くない評判がありましたの。オリヴィア様が学生時代の時、オリヴィア様のライバルだった女性が酷い目にあってしまわれて⋯⋯。証拠はないけれど、その件にオリヴィア様が関わっていたんじゃないかと、噂になってらしたの」
「そっ、そうなんだ」
「えぇ、これからもオリヴィア様には気をつけた方がよろしいわ」
「う、うん。すっごく気をつける」
オリヴィア様⋯⋯、私とセイフィード様が婚約したと知ったら⋯⋯、怒るよね。
でも、オリヴィア様に、一言文句を言ってやりたい。
「そうそう、アンナ、第2王子様にお礼をしに行くのは、5日後になったわ」
「⋯⋯うん。わかった」
「セイフィード様も、ご一緒に登城するわ」
「ほんと、やったぁー!」
「うふふ。アンナを見ていると、わたくしまで幸せになるわ」
「今度は、シャーロットの番だね。私、第二王子様とのこと応援するね!」
「な、な、なんのことかしら」
シャーロットの顔が真っ赤っかだ。
なんか、シャーロットって可愛い。
「5日後、楽しみだね。じゃあ、セイフィード様のお屋敷に行ってきまーす」
私がセイフィード様のお屋敷に行くと、久しぶりに図書室に案内された。
「ご機嫌よう、セイフィード様」
私はセイフィード様を見た途端、心臓がバクバクと高鳴り、頬が熱くなる。
なんか、恥ずかしいというか、照れるというか⋯⋯、セイフィード様の顔をまともに見られない。
「あぁ」
逆にセイフィード様はまっすぐ私を見つめる
「あの、昨日⋯⋯、縁談の話、聞きました⋯⋯」
セイフィード様は読んでいた本を閉じ、私に近づく。
「もう、これで、正真正銘、アンナは俺のものだ」
セイフィード様は私の髪の一房をすくいとり、弄りだした。
「はい」
「この髪も、これも、そしてこれも⋯⋯、俺のものだ」
セイフィード様は私の髪の一房に口づけし、私の頬を撫で、私の唇を指でなぞる。
セ、セイフィード様⋯⋯⋯⋯、エロすぎませんか⋯⋯⋯⋯!?
世の男子はみんな、こうなの???
経験がなさすぎて、わからないけど⋯⋯⋯⋯、セイフィード様、この頃、特にスキンシップ多くありませんか⋯⋯⋯。
「⋯⋯⋯⋯あの、でも1つ心配事が⋯⋯」
「なんだ?」
「私、全く魔力ないんですけど、大丈夫なんでしょうか?」
「そんなこと、百も承知だ」
「ええっと、セイフィード様のご両親も、私が婚約者になることを認めてくれているんでしょうか」
「あぁ、もちろん大丈夫だ」
「よっ、よかった⋯⋯、私、とっても嬉しいです」
「じゃあ、食べるか」
「えぇ??? なっ、なにを?」
セイフィード様、いきなり何を言い出すの!
わっ、わたしを食べるの?
今、真昼間だし、それに、それに、私、心の準備が⋯⋯⋯⋯。
「もちろん、アンナが持ってきたケーキだよ」
あぁ、ケーキか。
ケーキじゃなく、プリンだけど。
私じゃなくて、プリンね。
あー、ビックリした。
「今日はケーキじゃなくて、プリンにしました。私の大好物です」
「柔らかそうだ」
セイフィード様はそう呟くと私の腰に手を回す。
えぇ!?
私の唇が?
私の唇が柔らかそうなの!?
もしかして、セイフィード様にキスされちゃう!?
私は思わず目をギュッと瞑った
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
しかし、一向にキスされない。
どうしたんだろうと、片目をうっすら開けると、図書室から庭園のガゼボにワープしていた。
あぁ、そっか⋯⋯。
ワープするために、セイフィード様は私の腰に手を回したのか⋯⋯。
なんだ⋯⋯。
そっか⋯⋯。
⋯⋯って、ヤバイ、私の脳がおかしくなってる。
いつから、私の脳はこんなにもエロくなっちゃったんだー!
セイフィード様が言う言葉が全部エロく聞こえる。
私はドキマギしながらお茶を入れ、セイフィード様と2人でプリンを食べた。
「ご馳走さま」
と言うセイフィード様は妙に色っぽい⋯⋯。
「どういたしまして⋯⋯。あの、セイフィード様、私、セイフィード様のお母様にもお会いして、ちゃんと挨拶したいです」
「そうだな⋯⋯、今度一緒に会いに行こう」
セイフィード様は目を伏せがちにし答えた。
「そうだ、アンナにこれをやるよ」
セイフィード様は、包装紙に包まれた四角い形の物を、私に手渡す。
「なんでしょうか⋯⋯?」
「開ければ、わかる」
私はドキドキしながら、包装紙を開け、中に包まれていた物を取り出す。
それは、一冊の本だった。
厚手の革表紙には藤の紋様が型押しされていて、とても高級感がある本だった。
私がその本を開けると、中は何も書かれていなく、全て白紙だった。
「これは、ノートですか?」
「そうだ。アンナの魔法陣用ノートだ。俺とアンナしか開くことができないノートだ」
嬉しすぎて、言葉が出ない。
胸がふるえ、嬉しさに、目が潤む。
「どうした、アンナ? 嬉しくないのか?」
「わ、わたし⋯⋯、また魔法陣を勉強してもいいんですか?」
「あぁ⋯⋯、アンナのノートを燃やしてしまったのは、さすがにやり過ぎた。すまなかった」
「⋯⋯グスっ、でも、セイフィード様が燃やしていなかったら、⋯⋯グスっ⋯⋯ジークさんに盗まれて大変なことになってました」
嬉しすぎて、胸がいっぱいになりすぎて、私の目から涙が溢れる。
「魔法陣書けたら、俺に見せろ。約束通り、実現してやる」
セイフィード様がそう言うと、涙を拭うように私の目元にキスをした。




